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米Datriumが日本法人設立、次世代コンバージドシステム「Datrium DVX」を本格展開

最大1800万IOPSの性能を発揮できる“超高速コンバージドシステム”

Datrium DVX

 米Datriumは14日、日本法人デイトリウムジャパン合同会社(以下、デイトリウム)を設立し、日本市場向けの事業展開を開始すると発表した。これに伴い、同社のコンバージドシステム「Datrium DVX」を本格的に市場投入し、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)などに対抗するという。

 今回日本市場に投入されるDatrium DVXは、同社の技術の粋が詰まったというソフトウェア「DVX Software」を搭載したサーバーノード「DVX Compute Node」と、データ保護機能を備えた10GbE接続のストレージノード「DVX Data Node」から構成される、仮想環境向けのまったく新しいコンバージドシステム。

 現在提供されている一般的なコンバージドインフラや、次世代型といわれる一部のHCIでは、サーバーノードとストレージノードが独立している製品も存在するが、Datrium DVXの一次ストレージは、仮想マシンが稼働しているDVX Compute Nodeのローカルストレージ(SSD)を全面的に利用し、DVX Data Nodeはデータ保護の役割を担っている。こうした“分業”により、VMwareやKVMといった仮想環境を、最大1800万IOPSまで高速化できるというのが最大の特徴だ。

 フラッシュメモリの低価格化と普及により、ストレージのI/O性能は以前と比べて格段に向上したものの、HCIや、サーバー/ネットワーク/ストレージで形成される一般的な3Tierインフラシステムでは、データの可用性を向上させるために、パリティやミラーなど保護のための処理を加えてから保存するため、データの読み書きに保護のためのオーバーヘッドが加わり、その分性能が劣化してしまう。

 また、これらのシステムの場合はデータの読み書きがネットワークを経由して行われることから、データ量が増えるとネットワーク帯域がボトルネックになってしまう。特にHCIの場合は、システムの規模が拡大すればするほどノード数が増え、結果としてネットワーク上のトラフィックが膨大になるため、データ保護のための処理と合わさって、I/O速度がリニアに伸びなくなるとのこと。

 これに対してるDatrium DVXでは、サーバーであるDVX Compute Nodeに搭載されたSSDを一次ストレージ(同社ではキャッシュと呼ぶ)として利用し、保護の処理を一切加えないため、オーバーヘッドをなくしたフラッシュメモリ本来のスピードを引き出せるとする。このキャッシュには圧縮と重複排除をかけているので、サーバー内のフラッシュからの読み込み速度をさらに向上させているほか、限られた容量を効率よく利用する上でも役に立っているとのこと。

 そして、キャッシュに書き込まれるデータとまったく同じデータを、後工程としてデータ保護処理を行ったのち、DVX Data Nodeに保存することで、データの可用性・信頼性を確保している。DVX Compute NodeのSSDに障害が発生したとしても、DVX Data Nodeにはまったく同じデータが存在するためデータは失われず、またDVX Data Nodeが代わりのストレージとしてI/Oを担うので、ダウンタイムは発生しない。

 もちろん、仮想マシンが別のサーバー(DVX Compute Node)へ移動したり、SSDが交換されたりして復旧したりした場合には、迅速にデータがキャッシュ(SSD)へ書き戻され、運用を継続することが可能だ。

 DVX Data Nodeには、イレイジャーコーディングによるデータ保護機能を備えているほか、最大3000個まで取得可能なスナップショット機能を搭載。さらに、遠隔地へのレプリケーション機能も備えているので、オフサイトへ保存することにより、さらにデータの可用性を高められるとした。1台あたり、DVX Compute Nodeを128台までカバーできる。

 と、こう説明すると、バラバラのサーバーが乱立するようなイメージにとらえられがちだ。しかし、「個々のサーバー(DVX Compute Node)がデータを保持しており、コンピュートリソースの近くにデータが存在するものの、すべてのサーバーが1つのネームスペース、ファイルシステムで動作する分散システムがDatrium DVXだ」(Datrium プロダクトマネジメント担当副社長のレックス・ウォルターズ氏)と説明するように、しっかりと1つのシステムとして管理されている。

米Datrium プロダクトマネジメント担当副社長のレックス・ウォルターズ氏

 例えば、コンピュートリソースが足りなくなり、増設されたDVX Compute Nodeへ特定の仮想マシンが移動する場合は、そこにひも付いたデータも一緒についていくことになる。また、ほかのサーバー内に存在するデータにアクセスできないわけではない。こうした管理の肝となるのが、DVX Compute NodeのソフトウェアであるDVX Softwareだという。

 VMware vCenterプラグインとして表示されるこのソフトウェアでは、Datrium DVXシステム全体が管理されるのみならず、仮想マシン単位でIOPS、スループット、レイテンシ、キャッシュヒット率などを記録しており、管理者が状況をしっかりと把握できるように支援するとのこと。

DVX Software管理画面

 なお、DVX Compute Node、DVX Data Nodeともに専用のストレージアプライアンスとして提供されるが、DVX Compute Nodeについては、DVX Softwareと市販のx86サーバーやSSDを組み合わせて構成することもできる。

 ウォルターズ氏は、「当社の肝はソフトウェアなので、サーバーはお客さまに選んでいただいて問題ない。サーバーから一式そろえてくれ、といった場合にはアプライアンスとして提供できるものの、それでなくとも構わない」と述べ、自由度の高さをアピールした。

 参考価格(税別)は、DVX Softwareが1ノードあたり180万円。DVX Data Nodeが1072万5000円から、DVX Compute Node(本体のみ)が186万7500円から。販売代理店はノックスが務める。

 VMware vSphere 5.5 u2以上、6.0以上と、KVM(RHEL 7.3/CentOS 7.3)、Dockerコンテナエンジン 1.2(RHEL/CentOS)に対応する。

全方位の企業に向けて販売を推進

 なおDatriumは、米VMwareのエンジニアや米Data Domain出身の5人によって、2012年に米国で設立されたベンチャー企業。サーバー仮想化の利用が広がる中で、ストレージのI/O性能がボトルネックになり、システム全体が十分な性能を発揮できていない、といった問題に対処するために創業された。

 日本国内ではノックスが約1年前から先行して取り扱ってきたが、今回、日本法人のデイトリウムが立ち上がったことにより、国内での展開を本格化する。代表執行役員社長の河野通明氏は、「ノックスがアーリーアダプタのお客さまへ訴求していただいていたが、実際に(本番環境で)使うためには保守体制の整備などを進める必要があり、それを待っていただいていたようだ。今回、本格的な展開を開始する」と話す。

 対象となる企業としては、「仮想化環境を取り入れていない業界はなく、どの業界もお客さまになりうる。IT系はもちろん、ゲーム系、金融系からもお声がけいただいている。規模も問わないだろう」と述べ、全方位で進めて行く考えを示した。

デイトリウム 代表執行役員社長の河野通明氏