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リコー、MFP以外の事業充実目指す新成長戦略、2022年に過去最高益超えの営業利益1850億円目指す
2018年2月7日 11:20
株式会社リコーは6日、事業戦略説明会を開催した。
昨年(2017年)は4月1日付で山下良則氏が代表取締役 社長執行役員 CEOに就任。「5大原則を見直し、自前主義から脱却する」と、大きな方針転換を発表した。それから約1年が経過したことで、新しい成長戦略発表となった。
3領域で成長戦略を展開
新成長戦略では、既存の複合機(MFP=マルチファンクションプリンタ)関連事業を「成長戦略0」、新たな領域へインクジェットプリンタの用途展開を行う「成長戦略1」、顧客基盤に新たな付加価値を載せて提供する「成長戦略2」の3領域で展開する。2016年時点では戦略0の割合が53%、戦略1が12%、戦略2が24%の割合だが、2022年には戦略0が39%、戦略1が20%、戦略2が31%の割合とすることを目指す。
リコーでは昨年度発表した構造改革施策の成果として、「コスト構造改革・スリム化については、2017年度で一定のメドがついた。ただし、北米の販売体制最適化は2018年も活動継続の必要がある。業務プロセス改革は、国内外で対応を進めているが、1年で終わりではなく継続して取り組んでいくべきもの。2018年度以降も継続して取り組む。事業の選別の徹底についても継続的に進めていく」と説明する。
経営環境に影響を与えるメガトレンドとして、「SDGs(サスティナブル・デベロップメント・ゴールズ)に貢献しない企業は淘汰(とうた)される」、「個人の生き方(嗜好や働き方)の多様化が進む」、「プリンティング技術の役割が拡大する」の3点を挙げた。中でも、リコーのビジネスに大きな影響があるプリンティング技術の役割拡大としては、衣料向けで多品種少量生産の進展、欧米の住環境分野で壁紙が大量廃棄されているといった現実の課題に取り組み、多用化する個人向けニーズを取り込む。
その上で今後の財務目標として、2016年度時点の売上2兆600億円、営業利益340億円、営業利益率1.6%、ROE 0.3%を、2019年度には売上2兆2000億円、営業利益10億円、営業利益率4.5%、ROE6.9%、ファイナンス事業を除くフリーキャッシュフロー1000億円、2022年度には売上2兆3000億円、営業利益1850億円、営業利益率8.0%、ROE 9.0%以上、ファイナンス事業を除くフリーキャッシュフロー2500億円という目標を掲げる。
「2020年度の営業利益1850億円は、2007年に達成した最高益1815億円を超える目標としていくことの意思表示でもある」(山下氏)。
成長戦略を実現するための基本的な考え方として、リコーの強みに立脚した事業展開。脱自己完結と脱自前主義を実践した全員参加の社内デジタル革命を進める、オープンな経営スタイル。そして2018年・2019年の2年間で2000億円超えの投資を実現する、メリハリのついた戦略投資がある。
その上で、成長戦略0=MFPを進化させ、オペレーションを磨き、顧客基盤を固めるとのこと。成長戦略1=プリンティング技術の可能性を追求し、顧客基盤を拡大する。成長戦略2=顧客基盤にリコーならではの付加価値を載せ、さらにオフィスと現場をつなぐという3つの成長戦略実現という目標を掲げている。
現在の事業の柱であるMFP事業については、米Xeroxを富士フイルムが買収するなど、業界全体が大きな転換期を迎えている。リコーのMFP事業についても、「われわれ自身がデジタル革命に取り組み、生産の自動化、機械に自己診断機能を盛り込むなど保守プロセス最適化などオペレーション・エクセレンスを追求する。さらに、自前主義ではない協業の追求、MFPの進化を実現する」(山下氏)と、基盤事業“最強”化を目標として掲げた。
「われわれ自身がデジタル革命で実現できていないことも多い。例えば、製造においては生産したものを各国で最適化しているが、これをクラウド経由による生産の自動化なども実現できていない。協業の強化とMFPの進化によって、お客さま満足度ナンバー1企業であり続けることを目指す」と事業の見直しを進めながら、顧客満足度ナンバー1維持を目標として掲げる。
こうして、従来のハードウェア中心のビジネスから、すでに納入したハードウェアに新しい価値を載せるビジネスへの転換を目指していく。
なお、前述の富士フイルムによるXerox買収について、山下氏は「思うところはいろいろあるが、他社の状況をコメントすることはできない。ただ、これで当社のオフィスプリンティング市場が大きく揺らぐということはないと思う」とコメントしている。
成長戦略1と成長戦略2
成長戦略1のプリンティング技術の顧客基盤拡大は、インクジェット用途を拡大し、加飾・装飾品、ソフトサイネージ・フィルム、商用印刷/コート紙、衣類・織物などでの印刷を行う。
さらに3D造形品、2次電池、細胞チップ/ヒト組織モデル、吸入薬といったこれまではプリンティング技術が活用されていなかった分野での活用を目指す。その1つであるバイオプリンティングでは、創薬コスト低減を実現する先端医療での活用に向けて開発が進められているという。
成長戦略2のオフィスと現場をつなぐ価値創出では、エッジデバイスとアプリケーションの組み合わせで新しい価値創造を目指す。「当社が提供しているMFP、インタラクティブホワイトボード、ユニファイドコミュニケーションシステム、THETAなどのエッジデバイスを活用し、ハード自身は変更することなく価値をあげるお手伝いをしていく」。
オフィスのワークフロー改革、コミュニケーション改革のいずれにおいても、中小企業向け、大企業向けで戦略を変えて、現場を大きく変えていくための提案を行う。その際、リコー製だけでなく、他社製品を組み合わせて提案するなど、脱自前主義を実践した提案を実施するという。
また、これまでは事業ごとに行き来がなかったプラットフォームをオープン化する。自社のプラットフォームに、パートナー企業のキラーソリューションを組み合わせることで、顧客にとっての価値最適化を進めるとした。
具体的にはインタラクティブホワイトボードに、IBMのコグニティブサービスである「Watson」を組み合わせて提供し、コラボレーションの促進から、議論の記録と見える化、さらに情報を再活用する提案を行っていくことで、オフィスの生産性向上実現するといった提案を行っていく。
なお、前述のように大企業、中小企業とマーケットごとに異なる戦略を展開する考えだが、これは「日本の顧客の実態を見直すと、リコージャパンが取引する40万社のうち50%の企業のコミュニケーション手段がFAX。基幹システムについても中小企業には進化から取り残されている感がある。各業界別ワークフローを提供し、改革を推進したい」と山下氏が述べたように、中小企業に適した改革が必要との観点から。顧客である中小企業の実態をふまえ、新たな価値を生むビジネスを展開する考えだ。