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セールスフォース・ドットコム、ISVスタートアップ企業向け支援を強化

 株式会社セールスフォース・ドットコムは24日、同社の投資部門「Salesforce Ventures」によるスタートアップ企業向け支援プログラムを強化すると発表した。

 「ISVスタートアップ支援プログラム」は、Salesforceプラットフォームを活用したアプリケーション、サービスの開発および販売を行う独立系ソフトウェアベンダー(ISV)を支援する制度だ。

 同支援プログラム自体はグローバル共通に実施しているものだが、細かい仕組みについては国ごとに最適化したものを提供しており、新たな支援プログラムも日本独自の仕組みを採用しているという。

2つの新しいプログラムを提供

 新たに追加した支援内容は、Amazon Web Services(AWS)やGoogle、Microsoft Azureなどの他社プラットフォームとAPI連携し、プラットフォームを越えた価値を提供するための「コネクタープログラム」、最小限のリソースで最大限の効果を迅速に創出するための「ISVスタートアップ・ファスト・プログラム」の2つとなる。

 セールスフォース・ドットコム 執行役員 アライアンス本部 AppExchangeアライアンス部長の北原祐司氏は、コネクタープログラムについて「他社のプラットフォームで開発されたパートナーのアプリを、セールスフォースのプラットフォームと連携して動作させることも支援していくことになる。顧客に新たな価値を提供することができるレベニューシェア型のプログラムであり、それぞれのプラットフォームの特徴に関する情報を提供することになる」と説明する。

セールスフォース・ドットコム 執行役員 アライアンス本部 AppExchangeアライアンス部長の北原祐司氏
コネクタープログラム

 また、ISVスタートアップ・ファスト・プログラムでは、起業時のビジネスデザインを支援し、IPOまでの道のりを描くためのセミナーとして、TRAILHEAD(トレイルヘッド)を通じて提供する「スタートアップセミナー」、Q&Aベースの技術支援だけにとどまらず、PoC(概念実証)でのサンプルアプリケーションの稼働や、MVPの検討などをサポートする「PoC技術支援」、トライアル対象ユーザーの紹介やアプリの検証、顧客紹介によりビジネスを早期に立ち上げる「顧客・パートナー紹介」、クラウドベースの成功事例から、次の飛躍までを視野に入れたセミナーを提供する「クラウドビジネスユニバーシティ」、プラットフォームアップグレードの技術支援を行う「プレミアサポート」を提供する。

 「以前からの資金支援や海外進出サポートなどの支援策に加えて、新たなプログラムを追加することで、日本のスタートアップ企業がより素早くビジネスを立ち上げ、グローバルに展開することを支援していく。成功している企業の多くは、Salesforceの年3回のバージョンアップに対して、追随する形でアプリのバージョンアップを行っているのが特徴である。単に、バージョンアップをして終わりではなく、しっかりとパートナーをサポートしていくことに力を注ぐ」(北原氏)とした。

ISVスタートアップ・ファスト・プログラムの詳細

 ISVパートナーは、開発したアプリを公開するAppExchangeに登録することになるが、「AppExchangeは、ビジネスアプリのナンバーワンマーケットプレイスとして、全世界で3000本以上のアプリと300以上のコンポーネントが用意されており、日本では、約300本のアプリがある。これまでに累計500万回以上のインストールが行われている」としたほか、「日本で開発したアプリを、年間50本程度増やしたい。本数ベースで、世界全体の1割程度を維持したい」と話した。

 なお、同社におけるパートナーは、セールスフォース・ドットコムのプラットフォームを活用しながら、経営戦略を顧客にアドバイスする「コンサルタント」、セールスフォースをプラットフォームやコンポーネントとして活用し、業務改革を設計する「システムインテグレータ」、クラウドと基幹システム、クラウド同士を結びつけ、俊敏に変革を実現する「クラウドインテグレータ」、アプリのカスタマイズを行い、社内のプロジェクト型で展開する「Customer Successパートナー」、アプリを開発し、ベストプラクティスを提供する「ISVパートナー(スタートアップ)」の5つに分類。国内には、約500社のパートナーがあり、そのうちISVパートナーが150社以上を占めるという。

 「セールスフォース・ドットコムのビジネスは、当社が提供するサービスと、パートナーとの協業によって、顧客にイノベーションを提供することが基本姿勢であり、パートナー支援を重視している」(北原氏)とした。

Salesforceのパートナー

国内では7年間で34社へ投資

 一方、スタートアップ企業に対して投資を行うSalesforce Ventures自体の取り組みについても説明した。

 Salesforce Venturesでは、過去9年間にわたって、14カ国、200社以上のクラウドベンチャー企業に対して投資を行っており、同時に投資先企業に対して、クラウドベンチャーとしての経営知見と、顧客へのアクセス支援を提供する役割を担う。

 ISVスタートアップ支援プログラムにおいても、Salesforce Venturesによる投資が行われることになる。

 Salesforce Ventures 日本代表の浅田慎二氏は、「Salesforce Venturesは、外部調査機関による評価が高く、エンタープライズソフトウェア分野では5位、コーポレートベンチャーキャピタルとしては3位、Forbes誌による上位100位までのスタートアップに投資しているベンチャーキャピタルとしては1位にランクされている」とした。

各ランキングの上位にランクインしているという
Salesforce Ventures 日本代表の浅田慎二氏

 また日本での活動についても、国内にSalesforce Venturesを設立してから7年間で34社に投資を行っており、「国内で最もアクティブな外資系コーポレートベンチャーキャピタルに位置づけられている」という。

 34社の内訳は、ISVパートナーが21社、クラウドインテグレータが6社となっており、そのほかIPOなどを行った企業が4社、M&Aされた企業が3社あるとのこと。

7年間で34社へ投資

 浅田氏は、「ISVをつなげるエコシステムの構築や、セールスフォース・ドットコムの製品チームとの連携、販売パートナーとの連携などのほか、ビジネスモデルやマーケティング、資金調達などのアドバイス、そして、セールスフォース・ドットコムが投資をしている“信頼”といった付加価値を提供できることが、Salesforce Venturesの特徴になる」とし、「今後、日本における投資を1~2割は増やしたい」と述べた。

投資先への付加価値提供がメリット