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NEC、海外でのセーフティ事業プラットフォーム型へ転換狙い英国企業を買収

 日本電気株式会社(NEC)は9日、英国のITサービス企業「Northgate Public Services Limited」(本社:英国Hertfordshire州HemelHempstead、略称:NPS)を4億7500万ポンド(約713億円)で買収すると発表した。

 NECでは顔認証技術、指紋認証などバイオメトリクスを基盤としたセーフティ事業を成長領域と位置付け、海外でも事業展開している。しかし、代表取締役 執行役員社長兼CEO 新野隆氏は、「個別SIによるサービス提供では、利益率の高い事業展開は難しい。改善のためには個別SIから水平展開によるプラットフォームへと、ビジネスモデルを転換する必要がある。そのために、今回の買収を第1弾に、今後も買収、パートナーシップによる海外でのプラットフォームビジネス展開を進める」という方針を強調した。

 プラットフォームビジネスを海外で展開することで、2020年度営業利益率5%以上、EBITDA率20%以上を目指す。

代表取締役 執行役員社長兼CEO 新野隆氏

 NECのセーフティ事業は、2017年度時点で国内500億円、海外500億円の合計1000億円の事業となる。

 新野氏は、「現段階では海外展開に関して赤字となっており、利益率の高いビジネスモデルに転換するためには、水平展開が可能なプラットフォームを整備・強化することが必須となる。その第1弾としてNPSを買収する」と説明した。

水平展開が可能なプラットフォームの整備・強化の第1弾としてNPSを買収

 今後の展開として、NECが強みを持つバイオメトリクス技術にAI技術を加え、1)データを収集・統合するデータプラットフォーム、2)「Bio-IDiom」「NEC the WISE」などデータ分析や将来の予測を行う分析プラットフォーム、3)警察、税金、公営住宅、ヘルスケア、空港など水平展開可能な共通業務機能を持つ、共通業務プラットフォーム――、といった3つのプラットフォームによる、新たなビジネスモデル構築を目指す。

3つのプラットフォームによる新たなビジネスモデル構築を目指す

 今回、NECが買収することを発表したNPSは、1969年設立で、英国を中心に公共分野向けのソフトウェア事業やサービス事業を展開。英国とインドに約1400人のソフトウェア技術者を有している。英国の全警察や中央政府、地方政府の95%と取引関係があり、特に警察業務、税徴収・社会保障給付、公営住宅管理の領域で強固な顧客基盤がある。

 NECでは英国でスタジアムの不審者発見などのために映像監視ソリューションを提供しているが、この案件でNPS社とビジネスの連携などは特にないという。

 3つのプラットフォームのうち、1)と3)を有することから、NECの2)を加えることで、利益率の高いビジネスモデルへのシフトが可能だと説明する。

NPS買収の意義

 「2014年から投資ファンドが株主で、投資ファンドへの利払いが負担となって赤字となっていたが、今回、NECが買収することで利払い分が解消される。また、投資ファンド主導で、利益率が低かったBPO事業をやめ、利益率の高い事業へのシフトを進めていたことから、買収後は黒字化できる見通し」(NEC 執行役員 山品正勝氏)。

NEC 執行役員 山品正勝氏

 NPS社が大きなシェアを持っている分野として、警察向けソリューション事業、中央・地方政府向けソリューション事業、公営住宅向けソリューション事業の3分野がある。特に警察向けソリューション事業の「CONNECT」が英国でシェア29%あり、大きな成長が期待できるという。

 また、「英国はデジタル先進国。英国でNPS社の強固な顧客基盤、共通業務プラットフォーム、デリバリーリソースを買収によって獲得することで、セーフティソリューションとプラットフォームビジネスを確立し、ほかの地域などへの横展開を進める」(新野氏)という狙いで買収を実現すると説明した。

デジタル先進国の英国でセーフティソリューションを確立

 NECではセーフティ事業を今後の成長分野と位置付けてはいるものの、海外でのセーフティ事業は、複数の国で実績が出てきているものの、「まだ投資段階で、(利益が)プラスとはなっていない」(新野氏)段階だ。

 売り上げ規模としても、国内、海外合わせて1000億円で、売上ボリューム拡大も必須となる。

 そのために今回のNPS買収をきっかけに、英国発でほかの地域への事業展開を強化していくことに加え、海外企業のM&A、パートナーリングを検討していく。

海外へ事業拡張を図る

 また、NECでは、1月末をめどに新しい中期経営計画を発表する準備を進めている。現時点では海外セーフティ事業については、2020年度に営業利益率5%以上、EBITADA率20%以上という目標を掲げているものの、プラットフォーム化の推進、セーフティ事業の高度化が実現した場合の営業利益率、EBITADA率については、「詳細は新しい中期経営計画発表まで控えたい」(新野氏)と変更点は明らかにしなかった。

 しかし、「EBITADA率は20%以上を目指していきたいと考えてはいるが、それを実現するための根源となるのが現状の個別SIからプラットフォームビジネスへ、ビジネスモデル転換。投資から収益をあげられる事業とするために、プラットフォーム化へのシフトを進める」(山品氏)とプラットフォームビジネスが成功するか、否かが利益率拡大に欠かせない要因だと説明した。

 なお、買収後もNPSの現経営陣は続投となる予定で、NEC側からも役員を送り込んでビジネスを進めていく計画だ。