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日本オラクル、オーバーマイヤーCEOが就任会見「日本の顧客のクラウドジャーニーをオラクルクラウドで加速させる」

 日本オラクル株式会社は19日、6月5日付けで同社 執行役 最高経営責任者(CEO)に就任したフランク・オーバーマイヤー氏の就任記者会見を行った。

 Oracleのドイツ法人でクラウドビジネスをけん引してきた実績を評価され、日本法人のトップに就任したオーバーマイヤー氏だが、日本市場においては「顧客のビジネスのニーズと期待を理解することを最優先にし、1社1社のステータスにあわせたクラウドジャーニーを、オラクルクラウドでもって支援していく」と語り、ドイツに続いて日本でのクラウドビジネスをも拡大していく方針を示している。

日本オラクル 執行役 最高経営責任者のフランク・オーバーマイヤー氏

 オーバーマイヤー氏は日本市場に必要なクラウド環境の条件として、以下の4点を挙げている。

・オープン(Open):誰もがさまざまなワークロードを実行でき、顧客のフィードバックを常に反映する
・スケーラブル(Scalable):ニーズに応じて拡張する
・コンプリート(Complete):IaaS、PaaS、SaaSといったあらゆるクラウドをカバーする
・レディ(Ready):顧客が求めるサービスが常に用意されている

 特にオーバーマイヤー氏が強調するのが「コンプリートクラウド」であるという点だ。「インフラからアプリケーションまで、"完全な"かたちのクラウドとしてすべて提供できるのはオラクルだけ」(オーバーマイヤー氏)としており、前CEOで現在は取締役会長に就いた杉原博茂氏が3年間に渡って提唱してきた「2020年までに日本のクラウド市場でNo.1企業になる」という目標を、"コンプリート"なラインアップでもってそのまま継承していく意向を明らかにしている。

 「顧客ごとのITにおけるステータスを正しく見極め、それぞれのニーズにフォーカスしたクラウド環境を提供し、顧客のクラウドジャーニーを加速させる。顧客への支援を通して、われわれもまたクラウド企業としてNo.1になるという目標を達成したい」(オーバーマイヤー氏)。

 オラクルはクラウド企業として日本でNo.1になる――、当然ながら会見ではこの目標に対するきびしい質問が相次いだ。

 「現状ではオラクルはクラウドではNo.1ではない。オラクルには何が欠けているのか、どういった点を課題ととらえているのか」という質問に対し、オーバーマイヤー氏は「顧客の声を聞くことが何よりも重要だと考えている。(CEOに就任して以来)すでに90社以上の顧客と話をしてきたが、ほぼすべての企業がAWS(Amazon Web Services)の顧客だった。彼らはIaaSについてはともかく、ワークロードの最適化やIoT、クラウドにおけるデータベースの活用などに関してはオラクルクラウドの適用を検討している。われわれはそうした顧客のニーズを的確に把握し、支援していきたい」と語り、顧客企業の声にダイレクトにフォーカスしていく姿勢を強調している。

 また「AWSやMicrosoftなど競合企業が大きなシェアをもつクラウド市場で、オラクルは本当にキャッチアップできるのか」という質問には、「日本に限らず、クラウドビジネスはまだ世界的に見ても始まったばかりであり、クラウドへの移行は顧客のペースやステータスに沿って行う必要がある。またオラクルのクラウドはグローバルでも十分に実績があり、遅れているとは思っていない。それは決算の数字にもあらわれている。もちろん日本でも十分にキャッチアップ可能だ」と強い自信を見せている。

 さらに「グローバルでの競合企業は?」という質問にオーバーマイヤー氏は、「IaaSではAWS、SaaSではSalesforce.com」と回答している。

 「クラウドは非常にダイナミックなビジネスであり、競合のやり方はよく見ているつもりだ。彼らのやり方に学ぶ部分も多く、きちんとビジネスを見極めながら勝負していきたい」と答えており、両者とのシェア争いを視野に入れたビジネスを展開していくとしている。

 なお、オーバーマイヤー氏とともに会見に同席した杉原氏は「もともと"日本でクラウドのNo.1企業になる"と発言したのは私だが、そろそろ皆さん(報道陣)とその部分を整理したいと考えている。クラウドとはIaaSなのか、SaaSなのか、パブリッククラウドなのか、それともハイブリッドクラウドなのか。ひとくちにクラウドといってもさまざまなとらえ方がある。実際、SaaSのHCMなどではすでにオラクルはNo.1となっている。クラウドといえば何でもかんでもAWSが一番というわけではない」と発言しており、クラウドのトレンドが変わりつつあると強調する。

取締役会長の杉原博茂氏

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 会見の冒頭、杉原氏は「2014年に(日本オラクルの)社長に就任してあっというまに3年がたった。この3年間、オラクルがクラウドにシフトするという姿勢は打ち出せたと自負している。そしていまは次のリーダーに日本のクラウドビジネスを任せる時期にきている。ドイツでクラウドビジネスを成功させたフランク(オーバーマイヤー氏)はまさに日本の市場を任せるのに適任」とコメントしている。

 ではこの3年間、オラクルは日本のクラウド市場で確たる地位を示すことに成功したのか? 私見ではあるが「Yes」と言うにはかなり無理がある。オーバーマイヤー氏が「(クラウド企業として)最大の競合」と評したAWSとの差は、この3年間で縮まるどころかむしろ拡大した感すらあり、日本を含む世界のクラウド市場はいまもAWSを中心に回っている。

 確かに、HCMやEPMなどのSaaSソリューションに関しては一定のシェアを獲得してきたが、「オラクルが(IaaS、PaaS、SaaS含め)日本のクラウド市場で強力な存在感を示している」と言うにはほど遠いのが現状だ。

 もっとも、国内にはまだクラウドへの移行を果たせてない企業は数多く存在し、オーバーマイヤー氏が会見で強調したように「個々の顧客企業のステータスにフォーカスし、それぞれに最適なクラウドジャーニーを支援する」ことにフォーカスすれば、シェアを拡大できる可能性は高い。

 ドイツでのビジネス拡大で実績を上げたオーバーマイヤー氏がその手腕を日本市場でどう発揮するのか、クラウド企業としてのオラクルのケイパビリティがあらためて問われるフェーズに入ったといえる。