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デルが“ひとり情シス”の中堅企業を救う――、日本発の新施策を実施

 デル株式会社は14日、従業員規模100人から1000人未満の中堅企業をターゲットとした新施策を展開すると発表した。

 中堅企業にアンケート調査を実施し、日本でユーザーの声を聞く中で誕生した「日本発」の施策。一人で情報システム担当を行っている企業が多い実情をサポートするために、「ひとり情シス」支援ソリューションを提供し、特に対応が容易ではないセキュリティ対策については、IPAが2016年11月に発表した中小企業のセキュリティガイドラインの普及を進めていく。

 デル自身の中堅企業向け施策、営業体制も大幅に強化し、すでに1月から日本全国で中堅企業向けセミナーを実施。電話でセールスを行うインサイドセールス担当者の中から、クラウドを含めたハイブリッド提案を行うことができるスキルを持った「ITコンシェルジェ」を育成し、最適な提案を行っていくという。

 こうした施策によって、現在でも残っている「デル=クライアントパソコンを直販する企業」というイメージを刷新し、幅広いソリューションを提供できる企業としての存在感をアピールしていく。

 今回の新施策についてデルでは、「外資系企業の施策というと、米本社が立案した同じ内容を日本で展開することが多い。しかし、今回は日本のお客様の声を聞く中で誕生した企画」(デル 広域営業統括本部 執行役員 統括本部長の清水博氏)と、日本発の施策であることを強調した。

デル 広域営業統括本部 執行役員 統括本部長の清水博氏

中堅企業のIT担当者が持つ「3つの役割」

 デルでは2016年12月26日から2017年1月20日まで、中堅企業446社にアンケート調査を実施した。調査結果の注目点として、デルでは次の6点をあげる。

1)中堅企業の給与体系の中で、IT人材と一般社員では給与体系に変化=IT人材の給与は二極化しており、優秀なIT人材には一般社員と異なる給与体系で優遇するケースと、IT人材はあくまでバックオフィスの一部門と考えて給与を引き上げないケースに二極化する傾向が出ている
2)IT関連の意思決定に社長が関与するケースは70%
3)「ひとり情シス」が14%、「専任担当者なし」が13%
4)21%がIT予算は増加傾向と回答しているが、「突発的に予算が決定する」との回答が多数
5)従業員数200人以上の製造業77%が海外展開を実施もしくは検討
6)IPAセキュリティガイドラインに準拠している企業は3%にとどまる

中堅企業IT動向調査による注目事実

 「アンケートの結果から、中堅企業のIT担当者の方は、日々経営者の近くでコミュニケーションを行っていることが明らかになった。また、現場の担当者の声を聞いて、どうITに反映するべきかを検討する役割も担っている。さらに、実務者として人数が限られる中、パソコンの設定などに取り組む仕事もある。この3つの役割をこなしている上に、大きく変化しているIT環境をどう取り入れるのか、重大な局面にあるのが中堅企業のIT担当者の方の実態ではないか」(デル 最高技術責任者の黒田晴彦氏)。

デル 最高技術責任者の黒田晴彦氏

中堅企業にもリーチが取れている強みを生かす

 こうした観点から今回の新施策を実施することとなった。特にセキュリティに関しては、「単に技術を取り入れるだけではなく、仕組みを作り、教育を行った上で技術を導入しなければうまくいかない。従来のIT部門の業務とは違う要素をもった重い仕事」(黒田氏)とIT部門には負荷が大きいと見ている。そこでIPAが発表した中堅企業向けのセキュリティガイドラインを取り入れることを勧めている。

「セキュリティ5か条」対応ソリューション

 「当社の強みは、ユーザーダイレクトで中堅企業にもリーチが取れている点にある。この強みを生かし、我々が行える支援領域の拡大・充実を図っていくことが、今回の新施策の趣旨」と黒田氏は説明する。

デルの持つ強み

 具体的には、セキュリティ、最新の技術動向などを盛り込んだセミナーを全国各地で展開する。「1月に東京で開催したセミナーでは、当社から最新製品の紹介などに加え、IPAの担当者の方からサイバーセキュリティに関する説明、日本マイクロソフトの担当者からWindows 10とWindows Server2016を同時に導入することによるメリットの説明などが行われた。日本マイクロソフトによれば、同時導入によるメリットをセミナーで話したのは初めての機会だったという」(清水氏)。

中堅企業向けセミナーを実施

 また、ひとり情シスを支援するために、守り、攻めの両方の観点からのIT環境の変化の糸口を紹介するソリューションを提供。ひとり情シス担当者の負荷が少ない状況で最新のITソリューション導入につながる提案方法についても紹介していく。

ひとり情シス支援ソリューション

 デル側では中堅企業の利用パターンを整理して、低価格なレディメイド構成のハイブリッドクラウド提案を提供。提供内容としても、ハードウェア単体ではなく、SAP、Oracle、OBC、内田洋行の代表的なERPパッケージソリューションの提供も開始する。

 営業体制としても、従来のインサイドセールス体制を強化し、ITコーディネーター、情報セキュリティマネジメントなどの資格を取得したスタッフを「ITコンシェルジェ」として認定し、より高度な提案を行っていく。ITコンシェルジェの人数等は明らかにしていないが、担当部門でのITコンシェルジェの比率を増やしていくことを予定している。

 デルで中堅企業向けビジネスを担当する広域営業統括本部が、現在、日本の中堅企業6万社のうち、2万2000社に口座を持っているが、取引相手はさらに拡大する。また、販売に関しては、「コンタクトに関してはデルが行っていくが、実際の販売は全てパートナー経由で行う。特に地方にはデルの拠点がない地域もある。販売パートナーとの連携欠かせない」(清水氏)とパートナー経由で行っていく。