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富士通研究所、仮想ネットワークの通信ボトルネックを解消する分析技術を開発

 株式会社富士通研究所は16日、仮想ネットワークの通信を自動的に分析することにより、通信ボトルネックを解消する推奨設定を提示する技術を開発したと発表した。

 富士通研究所では、仮想インフラ上を流れている通信パケットを低負荷でキャプチャーする技術と、これを用いて仮想インフラの通信ボトルネックを特定し、仮想ネットワークの通信速度とパケットロス低減などによる品質の向上を実現するための推奨設定を自動で提示する技術を開発。仮想ネットワークの通信速度を最大で約2倍に向上できることを確認した。

開発した技術の概要

 従来、仮想ネットワークを流れている通信パケットをキャプチャーするためには、通信パケットのデータをパケット分析用の仮想マシン(分析VM)にコピーする必要があったが、この処理はシステムに負荷を与え、通信性能や品質の劣化を招くという問題があった。開発した技術では、仮想ネットワーク上のスイッチ(vSwitch)に複数の仮想サーバー(VM)からアクセスできる共有バッファーを設けることで、通信パケットのデータをコピーすることなく、低負荷で通信パケットをキャプチャーすることを可能にした。

仮想ネットワークでのキャプチャー低負荷化技術

 また、キャプチャーした通信パケットの挙動を分析することで、従来検出が困難であったハイパーバイザーやVMなど、仮想インフラ上で発生したパケットロスを網羅的に検出。この情報をもとに、仮想環境におけるパケットロスの発生傾向とインフラのリソース利用情報を関連付けてボトルネックを分析し、これを解消するための設定を提示する。

ケット分析とインフラ情報からボトルネックを分析し、推奨設定を提示する技術

 ファイル転送などの高トラフィックな通信環境を想定した実験において、今回開発した技術の推奨設定により、同一のハードウェアで通信速度を最大で約2倍に向上させ、パケットロスの低減など通信品質を約10倍改善できることを確認。また、ボトルネック分析や最適設定生成技術により、専門家を介さずに迅速に適切な設定が可能になり、運用コストを削減することも期待できると説明。柔軟なネットワーク構成の変更が必要とされる通信キャリアのネットワーク網など、通信性能や品質の問題で従来は仮想化技術を適用できなかった用途に対しても、仮想インフラを活用したサービスの安定稼働が実現できるとしている。

 富士通研究所では、今回開発した技術について、検出や改善可能なボトルネック事象の追加と分析精度の向上など研究開発を進め、2017年度中に富士通株式会社の「FUJITSU Software ServerView Infrastructure Manager」をはじめとする運用管理製品に搭載する予定としている。