「SQL Serverが要件に満たせないアプリケーションに遭遇したことはない」~米Microsoft・コーポレートVP
米Microsoftでは、SQL Serverの最新バージョンであるSQL Server 2012を提供し、そのビジネス領域をさらに拡大している。昨今では、ビッグデータという新たな領域についてもニーズが広がるなど、データベースの重要性はますます広がりつつある。
今回は、来日したSQL Server Database Systems Groupのコーポレートバイスプレジデント、クエンティン・クラーク氏に、SQL Serverに関する最新動向などを聞いた。
――RDBMSの評価をするときに必ずOracle Databaseとの比較が行われると思いますが。今のSQL ServerがまだOracleに足りないところがあるとすると、それは何だと認識されていますか?
SQL Server Database Systems Groupのコーポレートバイスプレジデント、クエンティン・クラーク氏 |
SQL Server 2012は今日、地球上で最大のアプリケーションでもチェックされていますし、さらにこれまで、ワールドワイドのビジネスにおいても、要件を満たせないようなアプリケーションには遭遇したことがありません。新機能であるSQL Server AlwaysOnによって、可用性という面でも改善しており、お客さまのフレキシビリティ、管理性、タイムトゥマーケットのなどの面で非常に良くなっています。
こうしたこともあって、お客さまからはSQL Server 2012を基幹系アプリケーションと一緒に動くようにしたいという要望をいただくようになりました。Oracle DatabaseよりもSQL Serverの方が好ましいと考えてくださっているのです。
また、なぜそうなのかという理由ですが、データプラットフォームとして包括的であることが大きく評価されています。OLTPはもちろん、大きなデータウェアハウス(DWH)環境にも、Hadoopにも対応していますし、データ統合の技術やマスタデータサービスなどもあります。さらには基幹系を含めたBIの活用という面があるでしょう。当社の(BIに関する)オファーでは、ExcelやMicrosoft Officeとあわせて、ビジネスワーカーの最後のギャップを埋めることができるのです。
――今後のフォーカスエリアとしては、どんなところがあるでしょうか。
SQL Serverが広く採用され、どんな基幹系アプリケーションにも対応できるようにしていくために、ミッションクリティカルな領域には継続してフォーカスしていきます。また、BIの領域などで今後もMicrosoft Office製品群とのパートナーシップを続け、もっともアクセスされる情報管理ツールであるようにしていきたいですね。
さらに、クラウドについても追求を続けます。例えばHadoopなどの新しいデリバリの方法もそうですし、アプライアンス、SQL Azureによるスケーラビリティを拡張していくことにも力を入れていきます。
――Oracleに関連しては、特に日本国内では顕著なのですが、Oracle ExadataがOLTP用途でもかなり好調と聞いています。また、Oracle Database Applianceもかなり企業の関心が高いようです。こうしたアプライアンス戦略は、わかりやすさというメリットもあって、これからも企業が注目し続けるように思っているのですが、Microsoftとしてはこれに対してどう考えていますか?
OracleがExadataによってお客さまを引きつけている理由は理解できます。彼らが提示している、複雑さをシンプルにするというメッセージで既存顧客に好まれているようです。しかしながら、既存顧客からさらに顧客層を広げているとは思っていません。
Microsoftはオープンプラットフォームを推進しています。お客さまがよくおっしゃるのは、「今後もさまざま要件に対応するために、それに応える複数のハードウェアの中から選択していきたい」という点です。
こうした声に応えるために、当社には、日本でも米国でも、さまざまなOEMパートナーやソリューションパートナーがいて、彼らはすべてのワークロード、つまりOLTPやDWHだけでなく、BIを含めたリファレンスアーキテクチャを提供しています。そしてまたOEMパートナーは、競合のいうアプライアンスと同じ速さでリファレンスアーキテクチャを提供しているので、タイムトゥマーケットの点ではリードしていると言っていいでしょう。。
もちろん、ハードウェアパートナーとも密に協業しているのは言うまでもありません。
また大規模のDWHでは、その複雑さゆえに適切な設定によって最大限のパフォーマンスを発揮するアプライアンスが求められていると思いますが、(買収したDATAllegroの技術を用いる超大規模向けの)SQL Server Parallel Data Warehouse(PDW)においても、アプライアンスとしてOEMと一緒に協業することが可能です。
このように、お客さまとパートナーと一緒になってオファリングを適切にやっているのが、当社の戦略です。今、この市場はうまくいっていると思いますし、対競合という点でもシェアを伸ばしています。
――今、お話にも出てきたSQL Server PDWについては、現在発表されているSQL Server 2012のラインアップには含まれていませんが、このビジネスは今後どうなっていくのでしょうか?
当社では、次期版を11月のイベントで発表する予定にしています。今後も、この製品を継続して提供することをお約束していますし、継続して投資していますので、その点はご心配なく。新しいSQL Server PDWによって、SQL Server 2012やWindows Server 2012のアドバンテージを拡張していけることを楽しみにしています。
――ただ、発表や提供の時期がほかのSQL Server 2012のエディションとは大きくずれてしまいましたね。SQL Server 2008 R2が発表された際は、SQL Serverと同一のラインアップであり、ユーザーは同一のテクノロジーでスケールアップ/アウトが可能とのメッセージが発信されていましたが、こうした点は変わってしまうのでしょうか?
いえ、ほかのSQL Server 2012と同じエンジンの上に構築されるという点は変わりませんし、今後SQL Server PDWがアップデートされても、製品ラインを分けるつもりはありません。同じ製品ラインの上で、開発の生産性を担保していきます。コアのバリューを変えるつもりはありません。
――新しいもの、という点では、Hadoopへの対応状況はいかがですか?
Windows Azure内で提供しているHadoopのサービスは好評を博しており、お客さまからもよいフィードバックをいただいています。今年行われたイベントのStrata(Strata+Hadoop World)でロードマップを発表しましたが、今後もApache(ソフトウェア財団)のオープンソースアプローチを信じて、当社も投資を継続します。非構造化データやビッグデータの選択肢としてHadoopに自信を持っているし、コミットを続けていく考えです。
――エンタープライズでは、Clouderaのディストリビューションである「Cloudera's Distribution including Apache Hadoop(CDH)」を利用するアプローチが増えてきましたね。Windowsプラットフォームはこれに対抗できるのでしょうか?
HadoopにはCDHだけでなく多くのディストリビューションがあります。当社では、Apache HadoopコアをWindowsで実行させることを目的としており、エコシステムでもそれを評価されているんです。HadoopのWindows対応は、当社にとっても当社の顧客にとってもよいことであり、HadoopコアをSQL Serverへ統合することは非常に価値があると思っています。
さまざまな業界において、捨てられていたデータをキャプチャ・分析して新しいビジネスのために役立てられるということが理解され始めていますので、Microsoftでは非常にわくわくしていますが、その活用のためにはデータインテグレーションやBIのツールが必要ですよね。
その世界では、SQL Serverは非常に強い武器になります。ユーザーが(SQL Server 2012に搭載されたセルフサービスBIツールの)Power Viewで、ペタバイトクラスの、リレーションのあるHaddopのデータストアを使えるようになればすばらしいですよね。
――最新バージョンであるSQL Server 2012が発売されたことで、お客さまでの活用のされ方に変化はありましたか?
もっともお客さまから引きがあるのは、ミッションクリティカルなところとBIでしょう。ミッションクリティカル領域では、SQL Server AlwaysOnとxVelocityという、2つの大きな機能が加わっている点が重要です。AlwaysOnでは、柔軟性、業界をリードするコストという点で、お客さまはHAのソリューションとしてベストであると評してくださっていますし、すべての基幹系アプリケーションで使えるという評価を下しています。xVelocityでも、分析サーバーに対しての新しいインデックス型の導入により、劇的なパフォーマンス向上が見込めます。
一方BIでは、PowerViewが導入され、これはお客さまを引きつける“磁石”のような機能になりました。エンタープライズの情報に対してアクセスできるパワーを持っていますし、インタラクティブに活用できます。どうやったらビジネスを変化できるか、という認識を変えあることができるのです。
また深く分析するために、とxVelocityを分析サーバーで使えるようにしたことで、大きな、テラバイトサイズのデータセットを使えるようになりました。さらには、よりリアルタイムで活用したいという要望がありますので、当社ではここに大きな投資をしています。大きなデータセットでもリアルタイムに状態を確認できるようにしていきたいですね。
当社の目指すものとしては、ユーザーがIT部門を巻き込まなくてもデータセットのモデル化を行えるようにする、というものがありますので、現在のセルフサービス戦略をさらに進めていきます。加えて、SharePointとの統合により、どういったモデルをユーザーが作り、またどういったモデルが人気があるのかをわかるようにもなっています。BIのモデル生成を“民主化”し、IT部門が介入するのは、データの品質がビジネスに大きな影響を与える場合のみにとどめた方が、よい影響を与えます。ガバナンスとセルフサービスによる権限委譲のバランスは重要になってくるでしょう。
――次期バージョンでは、どういった協会を検討していますか?
業界において、ビジネスを変えていく中核にあるのは情報だ、ということになっていきますので、BIとそのツールについても継続して投資をしています。外の情報をいか取り込み、ビジネスが情報を理解できるようにするか、というのは今後も課題です。
また、クラウド、インメモリ、高速なネットワーク、大規模なプロセスセットといった要素がテクノロジーのベースを変えようとしています。これらのアドバンテージを生かすために開発しているところです。さらには、SQL Serverがすべてのミッションクリティカルなニーズを満たせるように投資を継続してくれ、という声もありますので、こうしたところにきちんと対応していきます。