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垂直統合インフラ製品「FlexPod」が5周年、さまざまに活用広がる

NetApp Insight 2015 Las Vegasレポート

 ストレージ製品ベンダーの米NetAppは、ユーザー企業やパートナー企業を主な対象としたカンファレンスイベント「NetApp Insight 2015 Las Vegas」を10月12日から米国で開催した。

 今回のテーマの1つに、Cisco社と共同で推進する垂直統合インフラ製品「FlexPod」が5周年を迎えたことがある。それにともない、Ciscoの担当シニアバイスプレジデントの講演や、FlexPodを導入している企業のセッションなどが開かれた。

FlexPodにより「データをその置かれたエッジで分析」

 初日のジェネラルセッションでは、Cisco社のNick Earle氏(Senior Vice President, Global Cloud and Managed Services)のコーナーが設けられ、FlexPodの使われ方とこれからについて語られた。

 Earle氏はまず、FlexPodの5周年を祝い、検証済みのシステムを組み合わせていること(Cisco Validated Design:CVD)をFlexPodの特徴として挙げた。

Nick Earle氏(Cisco社Senior Vice President, Global Cloud and Managed Services)
FlexPodの5周年と、その実績

 Earle氏は最近のITの変革として、「コネクティビティ(接続する数)が爆発的に増えている。いままでと全然違うものであり、それによりインフラも違ってくる」と語り、2020年には5000億個のモノがインターネットにつながるという数値などを紹介。「これまでのやりかたではアクセスできない量のデータが集まる」と説明した。

 こうした変化はビジネスにも影響を及ぼす。Earle氏は、Ciscoが主宰する「Global Center for Digital Business Transformation」の調査から、「あらゆる業種が、平均3年でdisrupt(破壊)される」というデータを紹介した。

 特に小売業では、デジタル化やスマートフォン、課金方法など変化が相次いでいる。「小売業では、誰が何を欲しているかを知るのが重要だ。ツイートや検索履歴など、さまざまなデータがある。これを活用することがビジネスにつながる」。

 こうした大規模なデータ分析には、これまでデータウェアハウス(DWH)やHadoopクラスターが中央に1つある構成が使われてきた。しかしEarle氏は「データには寿命がある。データを移動している時間はない。分析のほうにデータを持ってくるのではなく、データのあるところで分析をする必要がある」と主張。こうしたエッジでのデータ処理をHyper-Distributed(超分散)アーキテクチャと呼び、「CiscoとNetAppがそれを可能にした」と語った。

 その具体的な構成として、CiscoとNetAppによる垂直統合インフラ製品「FlexPod」をデータセンターやエッジに置き、Cisco Intercloudでクラウド間を接続。そして、ハイブリッドクラウド構成でデータを管理するNetApp Data Fabricで統合管理するというビジョンをEarle氏は描いてみせた。

「あらゆる業種が、平均3年でdisrupt(破壊)される」
中央に集めるデータ分析から、Hyper-Distributed(超分散)アーキテクチャによるエッジでの分析に
Hyper-Distributedによるビジネスプロセス
CiscoとNetAppのソリューションによるHyper-Distributedなアーキテクチャ

FlexPodによるIoTプラットフォームや、銀行システムの仮想インスタンス

 FlexPodについては、個別のセッションなどでも語られた。

 FlexPodを採用した事例として、記者向けセッションで、Virdata社のCatherine Van Aken氏とNetAppのPhil Brotherton氏(Vice President, Data Fabric Group)の対談が開かれた。

 Virdataは、IoTのためのプラットフォームをクラウドで提供しているスタートアップ企業だ。特にApache Sparkでデータをリアルタイム分析して洞察(insight)につなげることを簡素化するという。

 Aken氏は「われわれの顧客は金融業や製造業など、ハイテク系ではない企業だが、『Virdataはハイテクの複雑さをなくしてくれる』と言ってもらっている」と説明し、「データは新時代の石油になる」と語った。

 Virdataでは、パブリッククラウドからプライベートクラウド、両者を組み合わせたハイブリッドクラウドまで柔軟な構成をとり、プライベートクラウドではFlexPod上でOpenStackを動かしている。「プライベートな環境でIoTを扱いたい企業もあり、データをどこからでも提供できるようOpenStackとNetAppを選んだ」とAken氏は説明した。

Virdata社のCatherine Van Aken氏(右)とNetAppのPhil Brotherton氏(左)
パブリックラウド、ハイブリッドクラウド、プライベートクラウドと柔軟な構成を選べる

 また、パートナー企業によるパネルディスカッションでは、CiscoのJim Hugh氏と、SI企業のePlusのMark Melvin氏、さらにFlexPodの利用企業として金融業のING DirectのBen Issa氏が、NetAppのMaria Olson氏の司会で話しあった。

 中でも一同の興味を引いたのが、ING Directの「Bank-in-a-box」サービスだ。Bank-in-a-boxは、銀行システムの中に顧客ごとに分離された仮想インスタンスを瞬時に作れるようにする。このシステムを、FlexPod上で構築した。

 ING DirectのIssa氏は「スピードが出せないと成功しない。必要なサービスを実現するには、瞬時に銀行を作れる必要があった。最初は信じてもらえなかったが、現在では60万のBank-in-a-boxができた」と語った。

 また、ePlusのMelvin氏は「FlexPodのセールスが、この3年間、倍々で伸びている」と報告し、「顧客のためのコミュニティクラウドをFlexPodに移行して、インフラを見るより案件を見るようにした」と語った。

左から、Maria Olson氏(NetApp)、Jim Hugh氏(Cisco)、Ben Issa氏(ING Direct)、Mark Melvin氏(ePlus)

高橋 正和