【RED HAT FORUM 2012】Red Hatはなぜ、ほかにない成長を遂げたのか?~ホワイトハーストCEO


米Red Hat社CEO ジム・ホワイトハースト氏

 レッドハット株式会社は23日、カンファレンス「RED HAT FORUM 2012」を開催した。基調講演に登壇した米Red Hat社CEOのジム・ホワイトハースト氏は、売り上げ10億ドルを越えた同社のビジネスモデルの独自性について語り、さらにそのクラウド分野への応用について説明した。

 ホワイトハースト氏は「なぜRed Hatがほかにない成長を遂げたか」の理由として、「コモディティの威力をミッションクリティカルの世界にもたらした」ことを挙げ、これを「ムーアの法則+信頼性」と呼んだ。

 Linuxディストリビューションは、Linuxカーネルを中心に、1万を越えるソフトウェアを組み合わせて作られている。そのほとんどが既存のオープンソースソフトウェアで、コミュニティにより活発に開発されている。

 ただし、企業の取引などのミッションクリティカルなエンタープライズシステムを載せるにあたっては、安定性と信頼性が必要となる。Red Hatでは2002年にRed Hat Enterprise Linux(RHEL)を始めたときに、カーネルなど重要なソフトウェアのバージョンを固定するとともに、最新版を常にフォローし、必要に応じてセキュリティフィックスや新しいハードウェアへの対応などを製品に適用(バックポート)して、信頼性を提供してきた。ホワイトハースト氏は「Red Hatはそのために多数のR&D投資をしており、割合は18%におよぶ。これは、ソフトウェア企業ではほかにない」と語った。

 こうした標準ベースのビジネスモデルについて、ホワイトハースト氏は、ボルトを例に挙げた。氏によると、産業革命でもGDPの変化があったが、それから100年以上たった1870年ごろにボルトの標準化が起こり、部品や工具が共通化された。これにより生産性が飛躍的に向上し、GDPが30年ごとに倍になったという。

 「コンピュータの世界も、ここ数年でようやく、標準化されたコンポーネントとして語られるようになった」とホワイトハースト氏は論じる。

 そのうえで、現状のクラウドへの懸念として、ベンダーが差別化のために標準化を避けていると指摘。「ベンダーごとに専用のネジとドライバーしか使えないようなもの」として、「Red Hatでは、一回開発すればどこでも使えることを目指す」と語った。

 Red Hatでは、OSからハイパーバイザー、クラウド管理のCloudForms、PaaS基盤のOpenShift、分散ストレージのRed Hat Storage、ミドルウェアなど、クラウドを構成するさまざまなコンポーネントを扱っている。ホワイトハースト氏は「重要なのは、ユーザーがコントロールできること。適切な参加の仕組みを作って開発プロセスが動くことが、技術的なアーキテクチャ以上に重要になる」と主張した。

Red Hatの成功は「ムーアの法則+信頼性」、つまり「コモディティの威力をミッションクリティカルの世界にもたらした」ことだという説明従来(エンタープライズ)と次世代(クラウド)の2つの世界にまたがるというRed Hatのポジションの説明
ボルトのように標準コンポーネントにもとづくコンピューティングが重要、クラウドコンピューティングでも、という説明Red Hatによるクラウドのためのソリューション
レッドハット株式会社 代表取締役社長 廣川裕司氏

 ホワイトハースト氏に先立つオープニングとしては、レッドハット株式会社 代表取締役社長の廣川裕司氏が登壇した。

 廣川氏は「Power of Open Source Software(OSSの勢い)」として、オープンソースソフトウェアのカバー領域がOSからミドルウェア、データベース、サーバー仮想化、アプリケーションなどに拡大したきたことを紹介した。

 そのうえで、Red Hat社の価値は「OSSのメリットをエンタープライズレベルに」することだとして、安定性や信頼性、パートナー制度、ミッションクリティカルサポート、サブスクリプションモデルなどを挙げた。

 また、オープンソースのビジネスを支えるものとして、ユーザー、コミュニティ、パートナー、Red Hatが「四身一体」となっていることを強調。基調講演後の記者会見では、プロプライエタリなソフトウェア開発ではトップのビジョンによりロードマップが決まるが、オープンソースのビジネスでは各方向を向いてハブとなることが重要と説明した。

 最後に「Red HatはもはやOSだけの会社ではない」として、ミドルウェア、仮想化、クラウド、ストレージ、サービスのそれぞれの取り組みを紹介した。

 ストレージ分野では、Red Hat StorageのパートナーモデルがRED HAT FORUM翌日の24日からローンチする。廣川氏は「(競合製品であるEMC社の)Isilonは日本市場の比率が高く、われわれもそこを狙う」と語った。また、年内にリリース予定の仮想化製品Red Hat Enterprise Virtualization(RHEV)の3.1について、日本語などのマルチバイト文字に対応し、ストレージのマイグレーションなどをサポートして「vSphereと同じようになる」と説明した。

OSSのカバー領域が拡大しているという説明Red Haの価値は「OSSのメリットをエンタープライズレベルに」だという説明
Red Hatがユーザーやコミュニティ、パートナーのハブとなるという説明Red Hatが扱う分野
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(高橋 正和)
2012/10/23 17:32