【ITpro EXPO会場レポート】富士通と日立はビッグデータなどをテーマに
■富士通、ビッグデータ処理や、スマートフォン向けクラウド、標的型攻撃対策など
富士通のブースでは、スマートフォン/タブレットやビッグデータなどを中心に、クラウドをまじえながら展示していた。
ビッグデータ関連では、同社が販売しているHadoopパッケージ製品「Interstage Big Data Parallel Processing Server」を展示。HDFSのかわりに独自のファイルシステムを用いることで処理を高速化し、処理時間を1/5程度に短縮したという。このファイルシステムは、POSIXインターフェイスでOSのファイルシステムとしても参照できる。
リアルタイムのビッグデータ処理としては、「Interstage Big Data Complex Event Processing Server」を展示。複合イベント処理(CEP)エンジンが、SQL型またはIF-THEN型で記述されたルールにもとづき、秒200万イベントをリアルタイムに処理するという。応用例として、人の位置情報と属性をマッチさせて、スマートフォンに店のクーポン券を発行するケースが紹介された。
ソーシャルメディア分析のシステムも参考出展された。キーワードを入力することで、そのキーワードのソーシャルメディアにおける発言数の推移や、発言者の属性の分析、ポジ・ネガ分析などができるという。年内から来年初頭を目標に、SaaSとして製品化したい考え。
Hadoopパッケージ製品「Interstage Big Data Parallel Processing Server」。独自のファイルシステムを用いることで処理を高速化 |
「Interstage Big Data Complex Event Processing Server」によるリアルタイムのビッグデータ処理の応用例 |
ソーシャルメディア分析のシステム。キーワードから、発言数や発言者の属性、ポジ・ネガなどを分析する |
スマートフォン/タブレットの分野で、「スマートデバイスによる作業現場の高度化」と題した展示では、拡張現実(AR)技術を配管検査に応用する例をデモ。配管に付けられたARタグにタブレットやスマートフォンを向けると、実際の映像に重ねてパイプ内の流量や流れの向きを表示。これによって、検査対象や締めるべき栓などを間違いなく伝えられるというもの。手順書を表示したり、コメントをつけてほかの端末と共有したりもできる。
また、スマートフォン/タブレットとクラウドを組み合わせるソリューションとして、モバイル端末対応グループウェアや、認証情報やアクセス履歴を残さない「FENICSブラウザ」、モバイル端末向けにWebアプリケーション画面を変換するソリューション、タブレットの電子カタログにテレビ会議や発注の機能が付いたシステム、DaaS(Desktop as a Service)サービスなどが展示された。
そのほか、法人向けタブレット端末として、Android搭載の「STYLISTIC M532/EA4」と、キーボード着脱式のWindows 8搭載ハイブリッドタブレット「STYLISTIC Q702/F」も展示されていた。
パイプに付けられたARタグにタブレットフォンを向けることで、流量など間違いなく配管検査するための情報を重ねて表示する |
モバイル端末対応のグループウェア。画面サイズ変更やタッチインターフェイスなどに対応する | 簡易シングルサインオンでWebアプリケーションを使い、終了したときに認証情報や履歴などを削除する「FENICSブラウザ」。アプリケーションを切り替えると終了となる |
PC向けWebアプリケーションの画面(左)を、モバイル端末向けに変換するソリューション。ベースの変換エンジンの上で、個別の処理を作成する |
法人向けタブレット端末「STYLISTIC Q702/F」。キーボード着脱式のハイブリッドタブレット | 法人向けタブレット端末「STYLISTIC M532/EA4」 |
標的型攻撃対策のソリューションも展示。予防訓練によるユーザー教育とセットで紹介されていたのが、メールのクライアント側で送信者のなりすましの可能性を検出し警告するシステムだ。これは、社内など同じ構成どうしであればメールを受信したときに送信者側の同じシステムに確認する。それ以外では、受信履歴を差出人単位で学習し、特徴のパターンからなりすましの可能性を警告するという。
また、プライベートクラウドを構築するための、サーバーやストレージ、スイッチ、仮想化ソフト、管理ソフトなどをパッケージ化した「Cloud Ready Blocks」も展示されていた。
標的攻撃対策として、送信者のなりすましの可能性を検出し警告するシステム |
プライベートクラウドを構築するためのハードやソフトをパッケージ化した「Cloud Ready Blocks」 |
■日立、BIアプライアンス製品でITpro EXPO AWARD大賞
日立のブースでは、「ビッグデータ」をテーマに、関連する製品やサービス、技術などを展示した。
「Hitachi Advanced Data Binderプラットフォーム」は、膨大なデータから高速にデータを抽出するBI(ビジネスインテリジェンス)製品。会場ではアプライアンス製品が展示され、イベント中に発表された「ITpro EXPO AWARD 2012」で大賞を受賞した。
Hitachi Advanced Data Binderの核となるのは、東大の喜連川研究室と共同開発した、従来のRDBMSと比べて100倍の速度で問い合わせできるという「超高速データベースエンジン」。その上にDTS社のBIソフトウェア「BI Navigation Studio」を載せ、ハードウェアと一体で販売している。受賞のポイントは「すぐ使えるところが評価されたのだろう」とのことだった。
会場では展示しているアプライアンス製品を使って、2億件から瞬時にデータを抽出したり、さらにドリルダウンしたりするところをデモした。
また、業務バッチ処理をMapReduce方式の分散処理で高速化する試みが2種類展示された。uCosminexus Grid Processing Serverによる「グリッドバッチ」は、COBOLやJavaなどの既存のバッチプログラムを分散処理で高速化する。1つの処理が失敗したときにその処理だけ再実行するなどの特徴があるという。
一方、参考出展された「Hadoopのエンタープライズ活用」のシステムは、HA8000高集積サーバーの上に、Hadoopの商用ディストリビューション「Cloudera Enterprise/CDH」(Cloudera社)と、Hadoop上の業務バッチ処理フレームワーク「Asakusa Framework」(ノーチラス・テクノロジーズ社)を組み合わせ、日立グループの業務バッチシステムのノウハウを加えたもの。アプライアンスとして製品化したい考えだという。なお、日立グループは10月9日にCloudera社と販売代理店契約を結んでいる。
そのほか、インメモリ型の分散キーバリューストアデータベース「uCosminexus Elastic Application Data Store」や、ミッドレンジのユニファイドストレージ「Hitachi Unified Storage VM」、位置情報をリアルタイムに分析してユーザーに合った広告をタイミングに合わせて配信する実証実験、データ分析専門家「データ・アナリティクス・マイスター」のサービス、業務向けクラウドサービス「Harmonious Cloud」などが展示された。
Hitachi Advanced Data Binderのアプライアンス | Hitachi Advanced Data Binderで2億件から瞬時にデータを抽出するデモ |
既存の業務バッチ処理をMapReduce方式の分散処理で高速化する「グリッドバッチ」のデモ |
Cloudera Enterprise/CDHやAsakusa Frameworkなどを組み合わせてHadoopの分散処理で業務バッチを高速化するデモ(参考出展) |
インメモリ型の分散キーバリューストアデータベース「uCosminexus Elastic Application Data Store」の説明 | ミッドレンジのユニファイドストレージ「Hitachi Unified Storage VM」 |
位置情報をリアルタイムに分析する広告配信の実証実験 | 業務向けクラウドサービス「Harmonious Cloud」 |
Harmonious Cloud上のグループウェア「Groupmax Collaboration Edition」 | センサー情報を生態系保全に利用する「環境情報見える化システム」 |