米Oracle、エリソンCEOがソーシャルを活用したリアルタイムデータ分析を実演

Oracle Open World 2012で2度目の基調講演


 Oracle Open World San Francisco 2012の会期3日目となる、10月2日(米国時間)には、米Oracleのラリー・エリソンCEOが、同イベント2回目の基調講演を行った。

 開会初日となる9月30日の基調講演では、Oracle DATABASE 12cやOracle Exadata X3 Database in-memory Machine、Oracle Private Cloudなどの大型製品を発表したが、2回目の基調講演では、ソーシャルへの取り組みを中心に話題を展開したのが特徴だった。

 

OracleのSaaSの優位性を強調

米Oracleのラリー・エリソンCEO

 冒頭、エリソンCEOは、「OracleがSaaSとして提供しているアプリケーションの数は、ほかのベンダーよりもはるかに多く、しかもポイントソリューションではなく、スイート製品として提供できる点が特徴だ。人事部門だけでなく、マーケティング部門や営業部門、サポート部門でも活用できる統合したスイートとして提供している。企業が必要とするものは、すべてクラウドで用意している。すでにこれを活用している企業は約400社に達しているが、来年には数千社規模にまで拡大するだろう」と切り出す。

 「SaaSを利用しているユーザーは、その根底にあるデータベースやプログラミング言語といった技術まで購入していることになる。選択するには、そのプラットフォームがどういうものであるのかということも考えなくてはならない。Oracleが提供するプラットフォームは、Oracle DatabaseやJava、Fusion Middlewareなどで構成され、それらの技術は、われわれ自身が使っており、その上で開発も行っている」。

 「そして、これらは標準的な技術でもある。また、ExadataやExalogic、Exalyticsにより、高性能な環境が構築され、何10TBものフラッシュメモリも組み合わされ、InfiniBandによって接続されている。同じプラットフォームの上で、Oracle自身も、みなさんも開発を行っていることから、それぞれのアプリケーション同士が相互接続されることになる。買収した技術も含めて、何年にも渡る社内での活用を経て構築したものであり、このパワフルなプラットフォームを、みなさんと共有している点が特徴だ」などとした。

 一方で、Fusion Applicationsの顧客分類についても触れ、CRMでは38%、HCMが39%、ERPが23%の構成比であることや、全体の65%がSaaSで利用され、オンプレミスが26%、オンデマンドが9%であること、地域別では北米が67%に達し、日本を含むAPACが10%の構成比であることなどを示した。

 「初日に発表したOracle Private Cloudは、大変重要な意味を持つ。オンデマンドやオンプレミスのユーザーに対する代替案の提案となり、今後はこちらに移っていくことになるだろう」などとした。


OracleのSaaSアプリケーションの構造Fusion Applicationの顧客分析

 

アプリケーションレイヤでマルチテナンシーを実装してはいけない

メガネをかけて自らデモンストレーションを行うエリソンCEO

 ここでエリソンCEOは、いくつかのユーザー事例を紹介。オンデマンド型で利用しているFusion Applicationを、オンプレミスやOracleのパプリッククラウド、プライベートクラウドのいずれにも移行できることなどの柔軟性を強調してみせた。

 また、「クラウドになったからといって技術力や技術知識が不要になったわけではない。だからこそ、アクセンチュアも、デロイトも成長している。これまではクラウドの外でやっていたものを、クラウドのなかでそうしたビジネスをはじめたにすぎない」などと、パートナービジネスの重要性にも言及した。

 さらに、エリソンCEOは、「私は、この数年間、マルチテナンシーを批判してきた。だが私が言ってきたのは、マルチテナンシーをアプリケーションレイヤで実装することには問題があるという点だ。ディスクドライブやコンピュータリソースの共有は、オペレーションの効率化やコストダウンの観点からはメリットがあるが、アプリケーションレイヤでの共有化には課題がある。それをやると独立性で問題が発生し、セキュリティ面で機能しなくなることもある。クエリやレポーティングでの問題も発生する」という点を指摘。

 「マルチテナントのアプリケーションベンダは、それに気がついたからこそ、自分たちのためのクエリツール、セキュリティサービス、レポーティングツールを開発したわけだ。salesforce.comやNetSuiteはデータベースやミドルウェアを持たないので、すべての問題解決をアプリケーションレイヤで行わなくてはならない。ここで、すべてがうまく対応できるわけではない。われわれは、これらの問題はインフラストラクチャーレイヤーで解決するものだと考えており、さらに、Oracle Database 12cを投入することで、データベースレイヤーでも解決できる。複数のプライベートデータベースをひとつのコンテナデータベースに挿入することで、スケーラビリティやパフォーマンスでの向上が図れ、コストを削減できる。仮想的な異なるデータベースのなかで管理でき、セキュリティも高めることができる」などと述べ、自社の優位性をアピールした。

 さらに、「salesforce.comやNetSuiteは、90年代に生まれた技術である。Oracleは、HTML5の現代的なユーザーインターフェイスを持ち、モバイルをサポートし、SaaSにおいて、新たな選択肢を提案することができる」と、他社との違いを強調してみせた。

 続けて、「2つのポイントをお話ししたい」とし、「OracleはすべてのアプリケーションをJavaで開発していること、そして、SaaSのアプリケーションを拡張したいという場合には、われわれが開発したのと同じツールを活用することができる。これは大変重要なことである」とした。

 

Oracleのソーシャルへの取り組み

 さらに、エリソンCEOは、ソーシャルへの取り組みについても言及した。

 今回のOracle Open World San Francisco 2012では、「Social」、「Mobile」、「Complete」の3つをキーワードに掲げており、2回目の基調講演で、そのひとつである「Social」について触れた格好だ。

 「Oracleは、ソーシャルサービスへの展開を考え、Social Relationship Management Platformの構築に向けた買収を行ってきた。これにより、個別の製品をスイートとして提供するだけでなく、Social Relationship Management Platformとして、プラットフォームレイヤのものとして用意することができる。みなさんが開発するすべてのアプリケーションは、ソーシャル技術の利点をそのまま継承することができる。この点が他社との大きな違いである」などとした。

 Social Relationship Management Suiteは、「Social Network」、「Social Data & Insight」、「Social Engagement and Monitoring」、「Social Marketing」の4つで構成されるという。

 「これらによって、大量のソーシャルデータを、リアルタイムで、適切に処理し、ビジネスや製品、顧客の洞察ができるようになる。お客さまが自らの製品について、何が指摘されているのか、それに対してすぐに反応できるかが大切である」などと述べた。
 ここで、エリソンCEOは、自らがトヨタレクサスのブランドマネージャーになったと仮定し、自動車のプロモーションを立案するのに、ソーシャルをどう活用するかといった事例を、端末を操作しながら示してみせた。

 レクサスのプロモーションにおいて、どのオリンピック選手を活用したらいいのかをテーマにし、49億件ものソーシャルメディアへの書き込みをもとに、構造化データや非構造化データを、Oracle DATABASEとEndecaを活用してリアルタイムに分析。単にフォロワーの数だけでなく、オリンピック期間中のリーチ数、ターゲットとなる地域や顧客層からの書き込みや、自動車に関する書き込み量などをとらえながら、導き出してみせた。

 「ビッグデータの処理を行うときにはバッジ処理を考える人が多いが、インメモリ技術を活用したOracleのプラットフォームであれば、こうした大量のデータもリアルタイムで分析できる」などと語り、講演を締めくくった。


Oracleが示すSocial Relationship Management PlatformSocial Relationship Management Platformはさまざまな領域に展開する
4つで構成されるSocial Relationship Management Suite膨大なソーシャルデータから適切な結果を導き出す
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