【Interop 2012】ARMアーキテクチャで性能向上! 「OpenBlocks」新モデルの狙いをぷらっとホームに聞く


 ぷらっとホーム株式会社では6月7日に、小型Linuxサーバーの新モデル「OpenBlocks Aシリーズ」を発表した。これまでのPowerPCアーキテクチャからARMアーキテクチャにハードウェアを一新し、基本性能を大幅に向上させたこのシリーズは、業界の中で高い注目を集めている。この新シリーズはどういう意図で作られたのかを、Interop 2012に出展している同社の担当に聞いた。

Interop 2012のぷらっとホームブース。大きなOpenBlocksが目立つ

 

x86サーバーの代替として本当に使える製品になった

OpenBlocks Aシリーズの上位モデル「OpenBlocks AX3」(4ポート)

 OpenBlocksは、ぷらっとホームが独自開発している小型サーバーブランドで、2000年に発売して以来、累計6万台を販売しているベストセラー製品だ。徹底的に駆動部を廃して高い耐久性を追求するほか、小型・低消費電力を売りにしており、さまざまな用途に利用されてきた。

 そして2009年に発売されたOpenBlockS 600では、その1つ前となるOpenBlockS 266から性能を大幅に引き上げ、従来の小型サーバーには不向きだった領域に対しても適用の幅を広げたとアピールしていた。とはいえ、それでもPowerPC 405EX(600MHz)、1GBメモリのスペックにとどまっており、x86サーバーと比べれば性能が落ちるため、より高い性能の製品が望まれていた。

 そうした声に応えて登場したのが、今回の「OpenBlocks Aシリーズ」だ。スマートデバイスでも採用が進むARMアーキテクチャに切り替え、デュアルコアCPUのARMADA XP 1.33GHzを搭載(上位モデルのOpenBlocks AX3)しながらも、最大13Wと消費電力は低いレベルにとどまっているため、x86プラットフォームでは低消費電力となるAtomと比べ、同じクロックでは同等、消費電力あたりのパフォーマンスではAtomよりかなり上の性能を実現したという。

 ぷらっとホーム 製商品事業本部 技術部 ソリューショングループ ソリューション課の木村友則課長はこの点について、「これまでは、x86サーバーの代替として使えるとはいっても、用途が限られてしまっていた。しかし今回はかなり多くの用途で、実際にx86サーバーの代替として使えるようになった。複数台を並べて並列処理をさせるということも可能ではないか」と説明する。

 並列処理の例では、消費電力には敏感なデータセンターにおいて、複数のOpenBlocks AX3を並べてWebのフロントサーバーに利用し、消費電力を大幅に削減するといった用途などにも適用できるとする。すでに、サーバーベンダーからも高密度にサーバーを実装できる製品は提供されているが、木村課長は「当社のOpenBlocksはスタンドアロンで使えて、消費電力も設置場所も小さい。これは大きな差異だ」と述べ、それらの製品に対する優位性をアピールした。

 「クラウド化の流れによってオフィスの中に残るシステムは減っているが、どうしても残るモノもある。小型で壊れにくく、なおかつ1個で複数用途に利用できる製品があれば、ユーザーとしては手間が減ることになる。x86サーバーの代替としても使える性能を持ったOpenBlocks AX3であれば、そうしたニーズに十分応えられるだろう」(木村課長)。


Atomと比べて、消費電力あたりの性能では圧倒的に高い処理性能を持つという中小企業向けネットワーキング部門にノミネートされている。【6/14追記】OpenBlocks AX3は特別賞を受賞した

 

豊富なインターフェイスにより幅広い使い方に対応、OEMの拡大にも期待

 またOpenBlocks Aシリーズは、インターフェイスが大幅に増強されたのも特徴の1つ。全モデルがSATA/eSATAのインターフェイスを搭載するため、2.5型SSDなどのストレージを搭載できるようになった。木村課長によれば、「従来もCFをストレージとして搭載することはできたが、容量とスピードの両面で不満を抱いているお客さまがやはり存在した」とのこと。しかしSSDの登場と普及により、回転する部分を引き続き搭載しないままで、この2つの課題をクリアできるようになったため、今回はSATAインターフェイスの搭載を決めたのだという。

 さらにOpenBlocks AX3の4ポートモデルでは、Mini PCI Expressも搭載している。これは無線LANモジュールの組み込みなどを視野に入れたもので、例えばWeb Proxyとして利用する場合に、無線LAN機器からの通信を受けてUSB接続の3G通信モジュールからインターネットへ接続する、といった利用法が可能になる。さらに木村課長は、「インターフェイスを用意しておくことで、お客さまが、当社が想定していなかったような新たな使い方を見いだしてくれることもある」とコメントし、今後の活用の広がりにも期待を表明した。


OpenBlocks AX3の分解展示も行われている分解展示されているOpenBlocks AX3のメインボード

 広がりという点では、ぷらっとホームではOEMへの提供拡大にも期待しているという。OpenBlocksシリーズではこれまでも、NECソフトウェア北陸の印刷制御アプライアンス「印刷制御BOX netBlade」、ソフトクリエイトのネットワーク監視アプライアンス「L2Blocker」など、2けた以上のアプライアンス製品のベースハードウェアとして提供されてきた実績を持つ。しかしハードウェア性能の限界から、ソフトウェアのチューニングを行うなど、ベンダー側でも一手間かける必要があった。

 しかし、Atomサーバーと同等の性能を実現できるOpenBlocks AX3であれば、「OEMメーカーが頑張らなくても、それなりのパフォーマンスが発揮できる」(木村課長)ため、その負担が軽減されるというわけだ。現在、出荷台数のおおよそ1/3がOEM向けとのことだが、OpenBlocks AX3の登場によりアプライアンスのベースハードウェアとしての採用が増え、この比率がさらに多くなるかもしれない。

 一方、小型エントリーモデルとして提供されるOpenBlocks A6では、消費電力が最大6.0W(OpenBlockS 600は最大8.0W)、動作時許容周辺温度が55℃(同53℃)と、省電力性能、許容温度が従来モデルよりも向上しており、組み込み用途での適用が期待されている。

 「床下や天井裏、配電盤など過酷な場所に設置するという用途は結構存在しているが、OpenBlocks A6であれば、十分に対応可能だ。もともとOpenBlocksシリーズは冷却のためのスリットなども設けておらず、ホコリが舞うような環境でも十分使えるように作ってある。GPIOやシリアルポートを経由したさまざまなセンサーなどとの連携も可能で、単なるエントリーモデルではなく、こうした組み込み用途なども見据えて提供する」(木村課長)。

 

販売代理店やSIerへの訴求も狙う

 もう1つ、ぷらっとホームが提供しているアプライアンス「EasyBlocks」も、同時に発表されたモデルから、ARMアーキテクチャを採用する新ハードウェアに一新された。

 その中でネットワーク機能を提供する「EasyBlocks Enterprise」では、従来の「EasyBlocks」と比べて、1台のハードウェアで対応可能な規模が拡大している。シンプルに少ない台数でネットワーク機能を提供しようとする場合、こうした性能の強化は大きな恩恵をもたらすだろう。

 また、今回は代理店販売の拡大をにらみ、さまざまな強化が行われているのも特徴の1つといえる。木村課長はその例として、「EasyBlocksでも、代理店やSIerがそのお客さまへEasyBlocksを納入するというケースがあり、例えばRADIUSモデルでは、ユーザーの登録など設定項目の一部だけをエンドユーザーへ解放したい、といった要望があった。EasyBlocks Enterpriseではこうした声に応えて、権限の分掌やエンドユーザー向け管理画面の提供などを行っている」と説明する。

 また「EasyBlocks Webキャッシング向けProxyモデル」では、SIerによって学校の教室などに設置された後、普段のメンテナンスはITに不慣れな先生が行う、といったケースが想定される。これに対応するために、あらかじめUSBメモリに設定情報を格納しておき、万一EasyBlocksが故障した際にはそれを差し替えるだけで設定を移行して動作する、といった機能が搭載されているという。これであれば、先生に「USBメモリを差し替えてケーブルをつないでください」という指示を出すだけで済むため、保守対応をするSIerの負担が軽減される。

 もともと、駆動部を排除して信頼性を高めているOpenBlocksやEasyBlocksは、SIerからしてみれば保守の手間があまりかからず手離れがいい製品ではあるが、ぷらっとホームでは、ソフトウェア面の改善や万一の故障時にもさらに手間が省ける仕組みを導入することにより、SIerや販売代理店などへの訴求をアピールできると考え、今後も継続して強化を行っていく意向である。

 「これまでのx86サーバーでは、ハードウェアが壊れたり、WindowsなどのOSのメンテナンスに手間がかかったり、またライセンス費用が多額だったり、さまざまな問題があったと当社では認識している。これを、信頼性が高く、性能が上がったOpenBlocksやEasyBlocksに置き換えることで、お客さまやSIerはさらなる価値を手に入れられると考えている」(木村課長)。


EasyBlocks Enterpriseアプライアンス製品のラインアップも強化される予定。VPNと管理の2つのアプライアンスが参考展示されていた
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