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【Interop 2013】「小さく壊れにくいだけでなく、現場のニーズを汲めるのが強み」~ぷらっとホームのアプライアンス戦略

 ぷらっとホーム株式会社では2012年の6月7日に、ARMアーキテクチャを採用した小型Linuxサーバーの新モデル「OpenBlocks Aファミリ」を発表。その後、同社が提供している「EasyBlocksシリーズ」をはじめとしたアプライアンスをOpenBlocks Aファミリベースに切り替え、続々と新製品を提供したり、製品のリニューアルを行ったりしてきた。

 直近でも、5月29日にはZabbix 2.0を搭載した「Zabbix Enterprise Appliance ZS-5200」を、5月31日には「EasyBlocksシリーズ」の新製品7モデルを発表するなど、着々と製品ラインアップを強化している。

 こうした同社の戦略の背景にあるのは何かを、Interop 2013に出展している同社の担当に聞いた。

Interop 2013のぷらっとホームブース

顧客のニーズに応えたリニューアルを進める

ぷらっとホーム 製商品事業本部 技術部 マイクロサーバ技術課の木村友則課長

 小型ネットワークアプライアンスとして提供されているEasyBlocksシリーズは、手間をかけずにネットワーク機能を導入できるというコンセプトや、小型で駆動部品を持たず、トラブルが発生しにくいといった点が特徴で、さまざまな環境に導入されてきた。

 特に、大規模向けの統合型である「EasyBlocks Enterprise」や「EasyBlocks ネットワークコア統合型モデル」は、RADIUS・DHCP・DNS・NTP・Syslog・Proxy・監視管理の各機能が1台に統合されており、かなり多くの局面に1台で対応できる点が評価されている。

 しかし逆に、「いざ導入してみると、実際には使う機能が限られているというケースが実は結構多かった。しかもそうしたケースでは、使う機能が少ない分、価格が安いものがほしい、というニーズが存在している」(ぷらっとホーム 製商品事業本部 技術部 マイクロサーバ技術課の木村友則課長)のだという。

 そうした要望を受け、さらに個別のニーズを拾って製品化されたものが、5月31日に発表されたSyslog、DHCP、DNS、NTP、RADIUS、監視管理、Webキャッシング向けProxy(小規模版)の7モデルである。

 例えばDHCPやDNSのモデルは、ネットワークでは必須となる機能であり、大手ベンダーでもアプライアンス製品を提供している。しかし木村課長が「大手ベンダーの製品は非常に多くの機能を持っており、たいていは使いこなせない。そこまで多機能はいらないから、使いやすく、手ごろな価格の製品がほしいという声を、エンドユーザーやSIerからいただいていた」と話すように、より手ごろな製品が強く望まれていたのだ。

 「これらのモデルでは、大手ベンダー製品の1台分の価格で、冗長構成と予備機の確保が可能なくらい。こうした点が、お客さまに非常に評価されている」。

EasyBlocksシリーズ
多機能型のEasyBlocks Enterprise

“単機能化”だけにとどまらない機能強化も

 また、7製品のうちSyslogモデルでは、製品の単機能化を行うだけでなく、ユーザーニーズをくみ取った機能強化も行われている。

 企業内システムなどの各アプリケーションやOSが出力するログは、システムの運用・管理に欠かせないものだ。特に、トラブルが起きた際のエラー確認などでは、原因の究明や、各部門、あるいはSIerの責任分界点をはっきりさせる意味でも重要となるし、いざ必要になった時に壊れていました、ということでは役に立たない。そういった意味では、大容量のSSDストレージを搭載できる上、可動部分を持たず信頼性の高いEasyBlocksは、Syslogを蓄積する用途ではピッタリな機器だといえる。

 またSyslogモデルでは、より大容量のログを保存できるよう、120GB、240GB、480GBの3つのモデルを用意しているのだが、本当に重要なのは、ログを蓄積することではなく活用することだ。

 そこで今回のSyslogモデルでは、蓄積したログを自動でプライオリティごとに色分けして表示し、視覚的に異常をとらえられるようにした。また、プライオリティごとの統計をグラフする機能を利用すれば、異常の前ぶれ察知や稼働状況の把握にも役立つという。

 さらに、ログの表示をさまざまな項目でフィルタリングする機能を追加。複数のフィルタリングルールをあらかじめ設定・保存したり、フィルタリングしたログをエクスポートしたりすることができる。

 木村課長は、「こうした、“ためる+見る”を実現するための仕掛けを十分に組み込んだのも、お客さまからの具体的なニーズに応えるため。当社は、さまざまなお客さまとのお付き合いがあるので、こうした声をくみ取ることができる。これも、大きな強みだと考えている」と述べ、単なるハードウェア組み込み型製品にとどまらない、EasyBlocksシリーズの強みをアピールした。

Syslogモデル

パートナーとの協業によるアプライアンス化も大きな武器に

 また、これ以外にも忘れてはいけないのが、ぷらっとホームでは、さまざまなソフトウェア会社とのコラボレーションを積極的に行っている点だろう。その代表例が、3種類提供しているシステム監視用アプライアンスだ。

 その3種類とは、NTTデータの「Hinemos」、ラトビアZabbix SIAの「Zabbix」、コムスクエアの「パトロールクラリス」で、いずれもパートナーとしてこれらのソフトウェア会社と協業し、製品化にこぎ着けた。Hinemosは「EasyBlocks Hinemosアプライアンス」、Zabbixは前述の通りZabbix Enterprise Appliance、パトロールクラリスは「EasyBlocks PATROLCLARICEアプライアンス」として、それぞれ製品化されている。

EasyBlocks Hinemosアプライアンス
Zabbix Enterprise Appliance
EasyBlocks PATROLCLARICEアプライアンス

 ここで重要視されるキーワードも、やはり省力化と信頼性なのだという。これらの監視ツールはすべて、単体として実績があり、広く使われているので、SIerがその顧客に導入しているケースも多い。しかし、SIerがいちいち構築して納入するのは手間がかかるので、アプライアンスを利用して省力化したいというニーズが増えているのだ。一方、監視用アプライアンスも壊れてしまっては支障が出る製品のため、ベースハードウェアとしてのOpenBlocksが持つ堅牢性が評価されているとのこと。

 「先日発表したばかりのZabbix Enterprise Applianceをはじめ、いずれも非常にお客さまの関心が高い製品。実際の導入時には、3種類のうちから迷ってどれかを選ぶというよりも、例えばジョブ管理にはHinemos、システム全体の監視にはZabbix、Windows環境にはパトロールクラリス、といったように、それぞれのソフトウェアが強みを生かして採用されるケースが多いようだ」(木村氏)。

 なお今後は、2013年夏にもリリースが予定されているソフトイーサのVPNソフト「PacketiX」の最新版を搭載したアプライアンスも製品化が企画されており、モバイルデバイスを含めた統合的なリモートアクセス環境を提供していく予定だ。

PacketiX VPNのアプライアンスも参考出品されている

(石井 一志)