【Dreamforce2011】ベニオフCEOがソーシャル時代の開発体制への変換をアピール


 米国時間9月1日、米salesforce.comのプライベートショー「Dreamforce2011」の二日目が開催され、会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏が、前日に続いて基調講演を行った。

 前日の基調講演がソーシャルエンタープライズ実現に向けたビジョン中心だったのに対し、二日目はこのビジョンを実現するための技術的な裏付けとなる新製品、新機能が紹介された。

 

これまでとは異なるプラットフォームが必要に

米salesforce.com 会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏

 ベニオフ氏は、「昨日は、アプリケーションが変化していくという話をした。本日はプラットフォームの変化に焦点をあててお話をする」と前置きをしてから話を始めた。

 プラットフォームの変化として、Facebook用アプリケーションが55万、Android、iOS向けアプリケーションが75万以上、AppExchangeには1250のアプリケーションが存在する例を挙げ、「iPadが成功しているのは、アプリケーションが素晴らしかったからだ。その変化はコンシューマだけでなく、企業にも起こりつつある。では企業が利用する次世代のアプリケーション開発の変化をどのように起こすのか? これまで使ってきた古いアプリケーションサーバーや開発ツールを使って実現するべきなのか?次世代のアプリケーションは一度書けば、ソーシャルでもモバイルでも走り、オープンスタンダードをカバーしているものであるべきだ。カスタマーと企業を結ぶために、新しいアーキテクチャが必要となる」とこれまでとは異なるプラットフォーム登場の必要性を強調した。

 具体的には、次の3点をあげた。

 (1)ソーシャル・カスタマー・プロファイルをはじめとするソーシャルな要素の入ったデータベースの構築
 (2)利用した企業内ソーシャルネットワークの構築
 (3)企業やその製品のソーシャル化するカスタムネットワークの構築


次世代エンタープライズプラットフォームに必要な4つの要素salesforce.comのソーシャルエンタープライズを支える3つの要素

 ステップ1の企業内ソーシャルネットワークを実現するのが、前日に発表されたDatabase.com。お客さまのソーシャルプロフィールを含めたソーシャルDBが必要となるが、「多くのユーザーが、ソーシャルができる前の古いデータベースを活用している」としてソーシャル時代の新しいデータベースの必要性を強調。最初からソーシャル、モバイルを考慮したオープンなデータベースであるDatabase.comを利用すれば、salesforce.comのすべてのアプリケーションの統合が実現する。

 なお、Database.comは発表直後からの12時間で、1000以上の団体からサインアップされているという。


次世代プラットフォームに必要な要素を実現するステップ1は、ソーシャル・カスタマー・プロファイルを含むデータベースの構築Database.comにはAndroidとiOSのツールキットを含むソーシャルエンタープライズ構築のためのモデルが含まれる
Database.comはすべてのソーシャルエンタープライズアプリケーション向けのデータベースとなる昨日発表されたDatabase.Comは発表後12時間で1000以上の企業、団体からサインアップされた

 ステップ2の企業内ソーシャルネットワーク構築のためには、Force.comを活用する。企業内ソーシャルネットワーク構築の代表例として、FacebookのCIOであるティム・カンポス氏が登場。インターネット上の情報が増加した結果、情報を探し出す手段として検索エンジンが登場したものの、その後の情報増加により、検索エンジンを利用しても情報を見つけ出すことが難しくなった。そこで関連した情報を見つけ出すことができるソーシャル活用が登場した。

 「会社の中でもソーシャルグラフは応用できる。例えば、社員のパフォーマンスをレビューする際には組織図をベースに、所属する部門以外とのかかわりなど人間関係をソーシャルグラフ化し評価に役立てている。作業にはスピード感が必要で、Force.comのスピード感はわれわれの意図に合致している。具体例としては、データセンターのインベントリ管理を行った際、コンセプト策定からインプリメンテーションまでわずか3か月の期間で完了した」(Facebook カンポスCIO)。


Force.comでは、25万以上のアプリケーションが稼働中Force.comは、今冬にはChatterとの接続、モバイル対応、オープン化などの要素を付け加える
クラウドの世界にワークフローを取り込むため、直感的な操作でワークフローを構築できるツールを新たに提供WebサイトやWebアプリケーションを開発するSiteforceはHTML5をサポート

 

Herokuでは17万以上のアプリ開発が行われている

 ステップ3のカスタマーネットワークの構築は、コダックがFacebook上に写真をコラージュするアプリケーションを提供したことで、ほかの写真アプリケーションとは異なるカスタマーとの関係を結んだことを紹介。そのプラットフォームとしてHerokuが利用され、「唯一のマルチランゲージクラウドアプリケーションであるHerokuによって、17万以上のアプリケーション開発が行われている」という。

 多くのユーザーにHerokuが支持される理由としては、開発が容易であること、拡張性が高いことがあげられる。アプリケーションサービスは短期間にユーザー数が拡大することも珍しくない。高い拡張性によってそれが担保される。

 しかも、「物理サーバー、バーチャルサーバーの両方共、用意をすることは考えいったことを考える必要がない。アプリケーションに100%集中すればよい」(ベニオフCEO)とこれまでの開発者の懸念材料がなくなると説明した。

 また、利用者にとってもFacebook上のアプリケーションは、例えば映画のDVDを購入するにあたり、「DVD版とブルーレイ版のどちらを購入すべきだろう?」といった相談を友人としながら製品購入ができるメリットがある。

 さらにRubyでの開発に加えHeroku for Javaが登場。「データベースだけでなく、言語についてもオープンであるべきだ」という姿勢でJavaを採用したのだという。Eclipseを使って開発したアプリケーションをHerokuにデプロイすることもできる。

 また、大規模アプリケーション開発向けに新たに「Herokuエンタープライズパッケージ」の提供を開始する。エンタープライズ向けのRuby、Javaの両方をサポートしたパッケージとなっている。


Herokuは17万のアプリケーションを生み出したHeroku for Javaが登場Herokuエンタープライズパッケージも新たに登場

 二日目の基調講演後には、プレス向けのQ&Aセッションを行い、「IBMやマイクロソフトの製品だけがプラットフォームと考えるのは古い考え方だ。現在ではアプリケーションとプラットフォームは区分できない状態になってきている。われわれはISVと一緒にビジネスを行うプログラムをさらに拡充し、われわれも、アプリケーション開発会社もプラスとなるビジネスを進めていく。従来に比べプラットフォームを提供する意識が拡大したのは、顧客が何を求めているのか、その声を知った結果だ」と説明。顧客のニーズによって、salesforce.com自身がプラットフォームベンダーとしての色合いを強くする意向であることを協調した。

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