【Citizenship Day 2010】MS、ITベンチャーのイノベーション最優秀賞を発表~医療ソフトに栄冠


 マイクロソフト株式会社は12月2日、同社のテクノロジーを活用したITベンチャーのソリューションを表彰する「Microsoft Innovation Award 2010」の最優秀賞を発表した。同日開催されたイベント「Microsoft Innovation Day 2010」で表彰式が行なわれた。

 最優秀賞は、株式会社イノテックの「変形性膝関節症診断支援ソフト KOACAD」が受賞した。

株式会社イノテック 代表取締役社長 伊藤賢治氏(右から2人目)と、マイクロソフト株式会社 代表執行役社長 樋口泰行氏(左から2人目)、プレゼンターのマイクロソフト株式会社 最高技術責任者 加治佐俊一氏(左端)・アグネス・チャン氏(右端)優秀賞受賞者

レントゲン写真からボタン1つで変形性膝関節症を診断

 最優秀賞を受賞した「変形性膝関節症診断支援ソフト KOACAD」は、医療分野のソフト。変形性膝関節症は、膝関節の軟骨の摩耗や変形、骨の新生などにより関節が変形し、痛みを起こし、ひいては寝たきりの原因にもなるというものだ。現在、診断にあたっては、レントゲン写真をベテランドクターが見て判断する「読影」という方法に頼っているという。

 KOACADは、アプリケーションにレントゲン写真を読み込むと、ボタン1つクリックするだけで変形性膝関節症かどうか診断し、レポートを出力するというものだ。これにより、ドクターのスキルを問わずに重症患者を早期発見できるようになるという。すでに厚生労働省研究班に利用されている。

 開発は、東京大学大学院 医学系研究課 特任助教の岡敬之氏との共同研究による。診断は、統計や経験から集計したデータを基に、レントゲン写真から骨の形状を読み取って判断する。

 株式会社イノテックは、光学系の計測ソフトなどを主に開発している企業。あるとき、広島工業大学から特許を購入してアプリケーションを開発したところ、その実績を岡氏がインターネットで見て、共同研究に結びついたという。代表取締役社長の伊藤賢治氏は、「光学系は多数の画面で複雑な設定をするものが多いが、今回はボタン一つという、驚くべき設計だった。それをソフトに落としこんだ」と語った。

株式会社イノテック 代表取締役社長 伊藤賢治氏現在の診断方法
レントゲン画像を読み込んで、ボタンを1つクリックするだけで、レポートが出力される

それぞれ異なる分野のベンチャーがプレゼン

 惜しくも最優秀賞は逃がしたものの、優秀賞を受賞した各ベンチャーはそれぞれ異なる分野のソシューションをプレゼンした。

 イータイピング株式会社の「e-typing」は、ウェブによるタイピング練習ソフト。93万人ものユーザーが集まっている。自分の成績を管理でき、100種類以上の豊富な問題が用意され、ランキングで励みにするといった工夫がほどこされている。代表取締役の蔦貫実氏は、「タイプライターの時代からある分野だが、タイピングがうまくなることに喜びを感じてもらうことで、イノベーションと認めてもらえた」と語った。

イータイピング株式会社 代表取締役 蔦貫実氏ウェブによるタイピング練習ソフト「e-typing」

 株式会社スカイアークシステムの「MTCMS Enterprise」は、企業向け大規模CMS。Movable Typeをベースに、数万ページの大規模サイトに対応し、承認ワークフロー、ウェブブラウザで表示したページをワープロ感覚その場で編集できる機能、Word文書からの変換などの特徴を持つ。代表取締役の小林晋也氏は「大企業の要望にあわせ、Windows Server・IIS・SQL Serverの組み合わせに対応した」と語った。

株式会社スカイアークシステム 代表取締役 小林晋也企業向け大規模CMS「MTCMS Enterprise」

 株式会社ステップワイズの「Venta for Silverlight」は、バックエンドにWindows Azure、フロントエンドにSilverlightを採用した、クラウド型販売管理システム。中小企業、特にExcelでデータを管理しているような小規模企業を主な対象としている。代表取締役の長谷川誠氏は、そのような市場をふまえ「複雑な機能よりも、シンプルで安価に、マニュアルレスで使えるものにした。中小企業に必要な機能はひととおり用意している」と語った。

株式会社ステップワイズ 代表取締役 長谷川誠氏クラウド型販売管理システム「Venta for Silverlight」

 株式会社ゼブラルの「XeBRaL ADDS」は、企業の開示情報(約130万文書)を横断的に検索し分析できるようにするSaaS型ソリューション。名前のとおりXBRLを最大限活用しているという。ゼブラルではSaaS型以外にも、マイクロソフトの情報マーケットプレイスDallasで情報を販売するといった提供形態も取っている。代表取締役社長の小畑実昭氏は、「会計などのプロフェッショナル向けなので、目にとまることが少ないが、優秀賞を受賞して一般の目にふれる機会ができた」と語った。

株式会社ゼブラル 代表取締役社長 小畑実昭氏企業の開示情報を横断的に検索できる「XeBRaL ADDS」
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