Googleエンタープライズ「コンシューマー化、モバイル化、クラウド化が3つのトレンド」


 グーグルは10月28日、企業ユーザー向けのイベント「Google Enterprise Day 2010 Tokyo」を東京都内で開催した。Google自身のサービスを紹介する講演のほか、パートナー企業による講演や展示なども行なわれた。

Google Enterprise Day 2010 Tokyoテーマ“Ready to Go Google?”

 

「コンシューマー化、モバイル化、クラウド化が3つのトレンド」

Googleエンタープライズ社長 デイヴ・ジルアード氏

 基調講演にはGoogleエンタープライズ社長のデイヴ・ジルアード氏が登壇。「3 Trends of Google Enterprise」について語った。ジルアード氏のいう3つのトレンドは、コンシューマー化、モバイル化、クラウド化だ。

 コンシューマー化は、エンタープライズ技術の逆側を指す。ジルアード氏は、かつてはエンタープライズ市場が技術をリードしていたが、現在ではコンシューマー市場が技術をリードしていると語り、「エンタープライズはエキサイティングでもなく生産性の高いものでもなくなった」と批判。Google Appsでは両者を組み合わせ、「先進的で、信頼性もあるようにする」と説明した。

 そのコンシューマー市場を代表するのがモバイルだ。ジルアード氏は、iPhoneのビジネスでの利用率が40%というデータを上げ、個人が会社のPCではなく、必要なときに必要な場所で、自分のデバイスを使うことが求められていると主張した。

 スマートフォンの背後にあるのがクラウドだ。ジルアード氏は「クラウド」という言葉が正しく使われていないと主張。Googleの定義として、ユーザーが自分で設備を持たず管理しないこと、必要なものだけを従量課金で使うこと、共有インフラによるスケールメリット、Webブラウザによる利用を上げた。

 氏は、現在の企業インフラがインターネットにファイアウォールを通して小さく繋がっている構造を、不安定で柔軟性のないものと主張。「答えはクラウドコンピューティング」として、従業員が使いたいデバイスで好きなところからアクセスしつつ、セキュリティも犠牲にする必要がない、と論じた。また、Googleの新技術として、企業がポリシーを設定することにより、スマートフォンのリモートワイプなどができる機能を紹介した。

 ジルアード氏は、「クラウドはもはや技術の問題ではない。企業がグローバル化するための変化をもたらす乗り物だ」と語り、日本でも多くの企業がGoogle Appsを使っていることを紹介。最後に「みなさんの成功を祈っている」として講演を終えた。

Googleによる「クラウドコンピューティング」の定義Google Appsの提供するクラウドプラットフォーム
スマートフォンのリモートワイプなどができる新機能日本のGoogle Apps導入企業

 

Google Docsで複数人が同時編集する新機能

Google社Google Appsプロダクトマネージャー アニル・サブハーワル氏

 Google Appsの講演では、Google社Google Appsプロダクトマネージャーのアニル・サブハーワル氏が登壇。現在のGoogle Appsを紹介するとともに、まだリリースされていない新機能を披露した。

 サブハーワル氏は、現在のビジネスが変化していて、メールなどの情報が溢れていてビジネスマンが処理しきれなくなっていること、グローバルなコラボレーションが必要になっていること、どこからでもアプリケーションにアクセスできる必要があることを問題点として提示。そうした今日のユーザーに向けたツールがGoogle Appsだと位置づけて、Google Appsの各サービスを説明した。

 そのうえで、まだリリースされていない新機能がデモされた。GmailからGoogle Docsのワープロ文書を開いて見ていると、文中に突然、コメント(注釈)が追加される。これは、同時に複数のユーザーが文書を開いて編集できる機能だ。注釈だけではなく、本文も共同編集できる。iPadやAndroid端末からの同時編集も実演された。

 さらに、Microsoft OfficeのPowerPointのアドオンで、ファイルに保存するかわりにGoogle Docsに同期するためのツールバーもデモされた。同期にはボタンをクリックする必要があるが、その時点でほかの人が加えた変更も自分の画面に反映される。さらに、複数の人が同期ボタンを押す前に同じページを編集していても、それぞれが同期すると両方が反映されるという様子も実演された。

Google Docsの文書を編集中に、ほかの人の注釈がリアルタイムで現れるiPadからも同時編集できる
Android端末からも同時編集できるPowerPointにツールバーを追加し、ファイルを保存するかわりにGoogle Docsと同期する

 

Google Appsのセキュリティへの取り組みを紹介

Google社Google Appsセキュリティディレクター エラン・ファイゲンバウム氏

 「Cloud Security」と題された講演では、Google社Google Appsセキュリティディレクターのエラン・ファイゲンバウム氏が登壇し、Google Appsでのセキュリティへの取り組みを紹介した。

 ファイゲンバウム氏は、よく聞かれるという「クラウドでデータは安全か?」という質問を取り上げる。それに対して「社内でデータは安全か?」と答え、PCやUSBメモリの紛失や盗難、企業がソフトウェアのアップデートパッチを検証して適用するまでのタイムラグなどのリスクを上げ、「クラウドならその必要がない」と説明した。

 ただし、クラウドが安全かどうかは事業者によるとも語り、「Googleはセキュリティをリードしてきた」と安全性を主張した。Googleのセキュリティ面での独自性として、すべて自社でサーバーを構築して単一プラットフォームで運用していることや、データを断片化して分散していることによりセキュリティ問題や障害に強いことなどを上げた。ユニークな取り組みとしては、ユーザーがGoogleのサービスを引き払うときにデータを引き上げられるData Liberationサービスも紹介された。

 また、ファイゲンバウム氏は、最近Google Appsに導入された二段階認証を紹介した。認証にあたってパスワードにワンタイムパスワードを併用するものだ。セキュリティトークン(ワンタイムパスワード生成器)にはiPhoneやAndroid、BlackBerryのアプリを利用。アプリはGoogle Appsに含まれるため追加の費用なしに使える。

 最後にファイゲンバウム氏は、「セキュリティはGoogleのコアなDNA。後付けではない」と語ってまとめた。

二段階認証(Two Step Verification)。パスワード認証にワンタイムパスワードを組み合わせる

 

ECサイト向け検索SaaSが新登場

 「エンタープライズソリューションセッション」と題された講演では、まず、グーグル社プロダクトマネージャーの鈴木宏輔氏が登壇し、日本で新しくリリースされた「Google Commerce Search」を紹介した。同日朝にリリースされた商品検索サービス「Googleショッピング」と対になるもので、こちらはECサイトが自サイト内の検索機能を実現するためのSaaSサービスだ。

 Google Commerce Searchは多彩な検索機能を備える。価格やサイズなどの絞り込みや並び替えの条件を定義できるほか、検索ランキングのルールをある程度カスタマイズでき、たとえば期間限定の商品を上にもってくることもできる。Googleのウェブ検索技術が使われているため、表記の揺れや誤りなどにも対応する。

 費用は年250万円からで、商品数やトラフィックに応じて変わる。導入するには、Googleショッピングと同様にGoogle Merchant Centerに商品情報を登録し、Google Commerce Searchの設定をするだけ。あとは、HTMLのコードを自サイトに埋め込むだけで利用できるという。

グーグル社プロダクトマネージャー 鈴木宏輔氏Google Commerce Search
Google Commerce Searchの設定ECサイトに埋め込むHTMLのコード

 続いて、地理情報の企業での応用へのヒントとして、株式会社ゴーガの小山文彦氏が登壇し、いくつかのGoogle Mapsのマッシュアップをデモ。「組み合わせると使い道が広がる」と語った。

 デモでは、スプレッドシートの特定の列に入っている住所から位置をGoogle Mapsに表示する例、Google Calendarの予定に入っている訪問先をGoogle Mapsで表示する例、ルート検索と同じ画面にその経路のストリートビューによるウォークスルーを表示する例を見せた。

株式会社ゴーガ 小山文彦氏スプレッドシートに入っている住所をGoogle Mapsで表示。Jリーグの本拠地のリストなどでデモした
Google Calendarの予定に入っている住所から、同じ画面でGoogle Mapsを表示。複数の予定から経路も表示できるルート検索と同じ画面にストリートビューによるウォークスルーを表示
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