【PHPカンファレンス2010 基調講演】
「プラットフォームのオープン化で、ソーシャルアプリ市場が活気付く」-グリー
9月24日・25日の両日、都内において開催された「PHP Conference Japan 2010」において24日、「GREE Platformの現状と今後の取組について」と題し、グリー株式会社(以下、GREE) 取締役 執行役員CFO 事業開発本部長の青柳直樹氏による基調講演が行われた。大手ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のGREEは今年、プラットフォームのオープン化によって、サードベンダーによるアプリケーションを続々と発表している。
■ソーシャルゲームの成功により会員数が増大
取締役 執行役員CFO 事業開発本部長の青柳直樹氏 |
GREEのサービスは、2004年1月に現在の代表取締役である田中良和氏の趣味で始めた個人サイトとして開始している。しかし同年4月には会員数が1万人を超え、12月にはGREEの運営を目的としたグリー株式会社が設立されている。その後2006年に「参加するケータイ」をテーマに『EZ GREE(現 au one GREE)』をリリースすると、次々とドコモやソフトバンクといったキャリア向けにもサービスを開始した。
2006年に本格的にモバイルでのサービスを開始した当初、GREEの会員数は30万人程度で、「このころ、GREEのとmixiの会員数は20倍ほど差がありました」と青柳氏が語るように、当時のソーシャルプラットフォームでトップシェアを誇っていたmixiとは会員数で大きく引き離されていた。
ところがキラーコンテンツともいうべきソーシャルゲーム「釣り★スタ」などのヒットにより、その後GREEは大きく会員数を伸ばした。2010年にはmixi、モバゲータウンといったほかのソーシャルプラットフォームを抜いて会員数でトップとなったという。
「発表した当時は『いまさら携帯で釣りゲームなんて』というご意見も頂いたのですが、おかげさまで釣り★スタは大ヒットしました。ほかにもペット育成ゲームなど多くの会員を集めているゲームがあり、会員数は順調に伸びていきました」(青柳氏)。
GREE会員の男女比は、2010年6月時点で男性52%、女性48%とほぼ同じ割合である。また、これまでゲームというと、比較的年齢層の低いユーザーに支持されると思われていたが、GREE会員の年齢分布を見ると、年齢層も20代が34%、30代26%、それ以上の年齢が18%と幅広い層から支持されている。
2010年にGREEは会員数が2125万人と、mixiを抜き国内トップのソーシャルプラットフォームになった | GREEは老若男女、幅広い層の会員に支持されているという |
■さらに高みを目指すためのオープン化
青柳氏は、GREE会員の伸びと、ニンテンドーDSに代表される携帯ゲーム機の普及には、似た部分が多いという。
ニンテンドーDSとGREEの類似点 |
「ニンテンドーDSは、通常のゲームはもちろん、脳トレや教養系などさまざまなコンテンツを提供し、幅広い年齢層のユーザーから支持されています。私たちはニンテンドーDSの出荷台数と、GREEの会員数の推移には近いものを感じ、注目しています」(青柳氏)。
GREEがニンテンドーDSと自社のプラットフォームを比較した結果、ハードウェア面ではすでに普及している携帯電話上で展開する点で自社が有利であり、ソフトウェアに対する料金やTVCM等でのプロモーションに関してはほぼ同等であるとしている。しかし、コンテンツの充実度では、ニンテンドーDSに優良コンテンツが数多く存在しているのに対し、自社開発のゲームしか存在していなかった。
そこでGREEでは、2010年の6月より自社のプラットフォームをオープン化し、サードパーティのタイトルを充実させた。その結果、GREE全体のユニークユーザー数が増大し、アクティブ会員数した。しかも、GREEが自社開発したゲームへの、ネガティブなインパクトは見られないという。
■個人やベンチャーの参入が可能
ソーシャルネットワーキングサービスのプラットフォームは、GREEプラットフォームのみならずmixiやモバゲータウンなど続々とオープン化している。ここに個人やベンチャーの参入する余地が十分にあると、青柳氏は語る。
「われわれはもちろん、大手のソーシャルネットワーキングサービスは、すべてオープン化の方向に向かっています。今後、ソーシャルゲームをはじめとするソーシャルアプリケーション市場は拡大していきます。初期投資を抑えつつ、高い利益率を狙うことのできるソーシャルゲーム市場は、個人やベンチャー企業にとって大きなチャンスです」(青柳氏)。
現在、GREEのオープンプラットフォームで展開しているサードパーティ製のタイトルは複数あるが、その中のひとつである芸者東京エンターテインメント(GTE)の「おみせやさんforGREE」は、サービス開始から1カ月程度で会員数が100万人を超えたという。そのほかにも、戦国時代の城を作るゲームや、恋愛シミュレーションゲームなどさまざまなタイトルがある。タイトルをリリースしてからの運用や改良が重要なソーシャルゲームは、これまでWebのサービスを展開してきた人たちに向いていると青柳氏は語る。
「ソーシャルゲームは、作って終わりということはほとんどありません。ユーザーの反応を見ながら、改良を加えて進化していくことが重要になります。そのため、運用も含めてPDCAをきちんとまわしていくことに慣れているWebサービスを提供してきた方は、ソーシャルゲームの提供に向いています」(青柳氏)
さらに、GREEでは、パートナー向けのコンサルティングのサービスを充実させるため、専門のコンサルティングチームを立ち上げた。今後はベストプラクティスをタイムリーに共有していく予定であるという。また、プロモーションもGREEが支援し、今年は年末までにGREEでは計30タイトルのサードパーティ製タイトルを、TVCMで紹介する予定であるという。なお、その際の費用はGREEが支払うという。
「今後も拡大が予想されているソーシャルゲーム市場において、パートナーとWIN-WINの関係を築くことができると信じています」(青柳氏)。