【Interop Tokyo 2010基調講演】
「ビジネスソフトウェアもFacebookのように」-セールスフォース宇陀社長


 「Interop Tokyo 2010」で11日、株式会社セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長の宇陀栄次氏が特別講演に登壇。「Cloud 2とは?クラウドコンピューティングの進化とその可能性」と題して、SNS時代のビジネスアプリケーションに対するセールスフォースの取り組みを語った。

日本に期待するベニオフCEO

株式会社セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長 宇陀栄次氏

 講演は、iPad発売を報じるTV番組をスクリーンに映してスタート。番組中、iPadの本当の可能性はクラウドコンピューティングにあるとナレーターが話すと、それが一番わかっている人物として米Salesforce社CEOのマーク・ベニオフ氏が紹介された。

 壇上の宇陀氏はそれを受けて、ベニオフ氏の日本への期待を紹介した。ベニオフ氏は、3GネットワークやSNS、電子商取引が日本で圧倒的に普及率が高く、「Cloud 2の普及において日本市場が世界をリードする」と語っている。また、新技術への積極性や、クリスマスも正月も祝うような柔軟性、共同体重視のソーシャル指向に触れて、「日本はITサービス産業にすぐれた環境」とも言っている。

 その上で宇陀氏は、日本は輸出産業で成長してきたため、これからもクラウドコンピューティングでグローバルにビジネスチャンスを求めていく必要がある、との自説を述べた。

鳩山首相(撮影当時)とマーク・ベニオフ氏日本市場の重要性を語るベニオフ氏

「なぜビジネスソフトウェアはFacebookのように使えないのか」

 続いて宇陀氏は、「コンピューティングモデルは10年サイクルで変遷する」という観点から、「2010年代はどのようになるか」について語った。企業システムのビジネスソフトウェアの分野において、1999年は「なぜビジネスソフトウェアはAmazonのように簡単に使えないのか」だったのが、2010年には「なぜビジネスソフトウェアはFacebookのように簡単に使えないのか」になっているという。

 セールスフォースでは、Amazon世代のクラウドを「Cloud 1」、Facebook世代のクラウドを「Cloud 2」と定義している。具体的な違いは、Cloud 1がタブであるのに対しCloud 2はフィード。Cloud 1がプル型であるのに対しCloud 2はプッシュ型。ほか、クリックに対してタッチ、デスクトップに対してスマートフォンやタブレットPCなどと比較してみせた。

 その結果、プッシュ型により情報のスピード感がまったく違うほか、自分が能動的に意図して探したのとは違う情報がSNSから得られるという。

 Facebook時代のコミュニケーションへのセールスフォースの取り組みが、2009年11月に発表されたコラボレーションツールChatterだ。スクリーンに映し出されたChatterのデモでは、カスタマーサポートを例に、TwitterやFacebookのような画面にサービスアラートがあがってくるところ、そのやりとりを確認するところ、エスカレーションのために自分や問題に対するフォロアーをまきこむところ、まきこんだメンバーから解決策がアップロードされてそれを読むところ、などが紹介された。

 宇陀氏は、Chatterなら関連する物や人、見せたい物をどんどんまきこんでいけ、本人が意図しなくても情報が集まってくると説明した。これをセールスフォースでは「Nerve System(神経系統)」と呼ぶ。同氏は、「システムはこれから、いろいろな人の知恵の集合体になる」ため、「Cloud(雲)というよりCrowd(群集の叡智)」だと語った。

Cloud 1とCloud 2の違いChatterの紹介
Chatterの画面。サービスアラートが表示されている詳細な内容を調べる
人をどんどんまきこむiPhoneやiPad、Android、BlackBerryにも対応

「クラウドにより小規模な顧客がITを使う」

 セールスフォースのようなクラウドによる企業システムの特性として、企業規模を問わないことがあげられる。宇陀氏は、料亭が月額2万円程度の費用でセールスフォースを顧客管理に活用している例を紹介し、「いままでのITの限られたサービスとは、ぜんぜん違った世界も出てくる」と述べた。小さな会社ほどシステムで競争力が変わるし、提供側にとっても小規模な顧客が使うようになれば爆発的に利用数が増える。そして、「ITはコモディティ化し、あらゆる産業で使われていくだろう」と展望を語った。

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(高橋 正和)
2010/6/14 06:00