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クラウドネイティブ技術とAIの最新動向をCNCF・Linux Foundation幹部が語る――「KubeCon + CloudNativeCon Japan 2026」レポート
2026年7月30日 11:38
Kubernetesとクラウドネイティブ技術に関する国際技術カンファレンス「KubeCon + CloudNativeCon Japan 2026」が、7月28日から30日に都内で開催されている(28日は併設イベント中心)。今回のテーマは「Keep Cloud Native Moving(クラウドネイティブを前進させ続ける)」。
KubeCon + CloudNativeConは、The Linux Foundation傘下のCNCF(Cloud Native Computing Foundation)のフラグシップイベントで、今回は昨年に続いて日本での2回目の開催となった。
7月29日の基調講演には、CNCFのExecutive DirectorのJonathan Bryce氏と、CTOのChris Aniszczyk氏が登壇し、クラウドネイティブをめぐる動向を紹介した。
また同日、会場にて記者説明会が開催。Bryce氏とAniszczyk氏に加え、The Linux FoundationのExecutive DirectorのJim Zemlin氏と、The Linux Foundationの日本オペレーション担当VPの福安徳晃氏が登壇し、The Linux FoundationやCNCF関連の動向を解説した。
Jonathan Bryce氏とChris Aniszczyk氏が基調講演
基調講演では、Aniszczyk氏がCNCF関連の近況を語り、Bryce氏がその中でクラウドネイティブとAI関連の動向を語った。
日本に約95万人のクラウドネイティブ開発者、CNCFへのコントリビュートでも10位
Aniszczyk氏は「Cloud native is moving(クラウドネイティブは前進している)」として、最近の動向を紹介した。
まず、3月に開催された「KubeCon + CloudNativeCon Europe 2026」に、1万3500人以上の参加者と3400以上の団体が100カ国以上から集まり、最大規模で開催されたことをAniszczyk氏は紹介した。
CNCF傘下のプロジェクトも前進している。FluidやTekton、HAMi、Confidential Containersが新たにインキュベーションの段階のプロジェクトとなった。そのほかサンドボックス段階のプロジェクトから興味深いものとして、ゲームサーバーのAgonesや、AI推論ワークロードのためのllm-d、Kubernetes上でデータベースを運用するOpenEverestもAniszczyk氏は紹介した。
参加企業として大きなところでは、NVIDIAがCNCFのプラチナメンバーになり、さらにGPUを使うAIワークロードのサポートのために400万ドルを寄付し、そしてGPUの動的リソース割り当てのドライバーをCNCFに寄贈した。
そのほか、フィンテックのAdyenや、VMwareのBroadcomがプラチナメンバーになったこともAniszczyk氏は紹介した。
CNCFのコミュニティの成長については、現在230以上のプロジェクトがあり、191カ国から30万人以上のコントリビューターが参加しており、この6カ月間で開発者数が約1500万人から約2000万人へと27.6%ほど増加しているとAniszczyk氏は紹介。「CNCFは驚異的な成長を遂げている」と語った。
その約2000万人のうち、日本には約95万人がいることもAniszczyk氏は紹介した。これは、CNCFがSlashDataと共同で作成した調査レポート「State of Cloud Native Development in Japan 2026」からのもので、このレポートは7月29日(米国時間7月28日)に発表された。
同レポートからそのほか、日本はCNCFのプロジェクトへのコントリビュートで世界10位であることも紹介された。
製造業やゲーム業界など特定業界でKubernetesとCNCFプロジェクトを使うためのリファレンスアーキテクチャー集「Cloud Native Reference Architecture」もAniszczyk氏は紹介。その中に、日本のコロプラによるゲームサーバーのアーキテクチャーが7月28日(米国時間)付けで加わったこともアナウンスした。
クラウドネイティブインフラの強みをAIワークロードに生かす
ここでBryce氏に交代し、クラウドネイティブとAIの交差点がいかにCNCFの成長につながっているかについて語った。
Bryce氏は、前述の「KubeCon + CloudNativeCon Europe 2026」において、配車のUberや、自動運転車のWayve、光学機器のZeissがクラウドネイティブインフラ上のAIワークロードについて発表したと紹介した。
ここで、株式会社SUBARUが、今回のKubeCon + CloudNativeCon JapanでEnd User Case Study Contest(利用企業事例コンテスト)を受賞したとBryce氏は発表した。
Bryce氏は、AI時代のインフラへの新しいニーズについて解説した。
1つ目は、いかにAIの推論をスケールさせるか。Bryce氏は、AIのコンピュートの配分が、AIモデルの学習が3分の1、推論が3分の2と、推論の割合が多くなっているというデータを紹介。さらに、2030年までにAI推論の電力消費が93.3ギガワットになると予測するマッキンゼーのレポートを紹介した。
Bryce氏は「推論のワークロードは、クラウドネイティブで慣れ親しんだものと似ている」と指摘。常に稼働し、パフォーマンスの保証が必要で、トラフィックの急増に対応できるスケーラビリティと伸縮性が求められるとして、「これらはクラウドネイティブで解決してきた課題なので、われわれがこの新しいワークロードに参入して発展させる絶好の機会だ」と述べた。
そしてBryce氏は、80%以上の企業が現在Kubernetesを運用しており、そのうち60%がすでに生成AIを活用しているという調査データを紹介し、「Kubernetesなどクラウドネイティブのプロジェクトは分散システムのために設計されてきたが、AIはそのようなワークロードの優れた例となっている」と語った。
もちろん、AIワークロードならではの要件をサポートする必要もあり、各レイヤーでAIワークロードのサポートに取り組んでいると紹介した。
その一例が、AI推論エンジン「vLLM」を基に水平スケールさせる「llm-d」だ。「これは、Kubernetesとその周辺のフレームワークを用いてAIワークロードに対応する良い例だ」とBryce氏は説明した。
2つ目の新しいニーズは、インテリジェンスを守ることで、ここではソブリンAI(主権AI)を意味する。Bryce氏は、AIやシステムのコントロールを持つことが多くの企業にとって戦略的な課題となるとしつつ、それはクラウドネイティブのプロジェクトやコミュニティが築いてきた能力と合致していると述べた。
KubernetesとAIのインフラを扱う人材のための教育を拡大
ここで再び交代したAniszczyk氏は、Kubernetesがかつてパブリッククラウドやプライベートクラウドなどで一貫性を実現するように取り組んだように、AIワークロードに対しても一貫性を保証するためのCertified Kubernetes AI Platformに取り組んでいると紹介した。
またAniszczyk氏は、世界中を訪問してクラウドネイティブの技術が使われ、開発者が熱意を持っているのを見るのが楽しいと語る。そして「関わるのに早すぎることはない」と来場者にCNCFへの参加を呼びかけた。
そして大規模AIワークロードを理解できる人材の需要が伸びているため、教育のパートナーシップを拡大しており、新たにUdemyと提携して認定とトレーニングの提供を開始したと紹介した。
最後にAniszczyk氏は、あらためて今回のテーマを基に「Let's keep cloud native moving(これからもクラウドネイティブを前進させ続けよう)」と来場者に呼びかけた。
The Linux Foundationによる、AIやKubernetesへの取り組み
基調講演後には、記者説明会が開かれた。ここでは、The Linux FoundationのExecutive DirectorのJim Zemlin氏と、The Linux Foundationの日本オペレーション担当VPの福安徳晃氏の話をレポートする。
重要システムで使われるOSSコンポーネントの脆弱性に業界リーダー企業が共同で対応する「Akrites」
Zemlin氏は、The Linux FoundationのAIへの取り組みを紹介した。
Zemlin氏はまず、2026年の大手テックによるAIインフラ投資が9000億ドルという数字などを紹介し、「これは円ではなくドル」とユーモアをまじえて強調しながら、技術史上最大規模のインフラが構築されている時を目撃していると語った。
また、AIのハードウェアから上の各レイヤーを紹介し、すべてのレイヤーでOSSが使われており、その多くをThe Linux Foundationがホストしているとも語った。
その中でもZemlin氏はオープンウェイトのAIモデルに着目。少し前は最新AIモデルにオープンウェイトなAIモデルが3~6か月遅れで追従する形だったが、最近では中国などからKimi K3のように最新AIモデルと対抗するようなオープンウェイトのAIモデルが登場していると説明した。
これを踏まえZemlin氏は、「オープンウェイトなモデルが、日本に大きな貢献をする」として、オープンウェイトモデルを日本の現場だけが持つデータと組み合わせることを提案。それがソブリンや経済的なレバレッジにつながると論じた。
一方で「AIにまつわる課題もある」とZemlin氏。昨今ニュースでも取り上げられているように、Claude Mythosなどの最先端モデルが脆弱性を見つける能力を持ち、それを攻撃に悪用される懸念だ。同氏は、パッチが公開される平均7日前に悪用されるという数字を紹介して、「守る側も脆弱性を素早く発見して対処していくことが求められている」と語った。
「The Linux Foundationは、これに対処するには、同じモデルを良い側に与えて脆弱性を止めるのが、一番良い方法だと考える」とZemlin氏は言う。
これを実施するのが、The Linux Foundationによって6月25日に発足した共同イニシアチブ「Akrites」だ。創設メンバーには大手テックカンパニーが名を連ねている。これらの組織が、重要インフラが依存するオープンソースのために、共有かつ機密のセキュリティインシデント対応チーム(SIRT)を組織し、脆弱性への対応、修正、情報開示を一元化する。「銀行や鉄道、通信、電力といった重要なシステムに入っているOSSのコンポーネントを検出し、脆弱性を見つけ、修正し、アップストリームに反映する」とZemlin氏は説明する。
「まず、これから6~12カ月ですべてを修正することを目指す。その後はOSSのメンテナーに高度なAIの能力を提供して、脆弱性のないコードを継続的に作れるようにしていく。大きなチャレンジだが、これが成功すれば皆が安全になる。日本企業の皆さんにもぜひ協力していただきたい」(Zemlin氏)。
Kubernetes認定試験取得者が2年で200%急増
福安氏は、日本企業のクラウドネイティブとAIの状況について語った。
福安氏は、「日本はなかなかクラウドネイティブが普及しない市場と言われていた」として、Kubernetes認定試験を取得した日本の技術者が、2年前にはインドの8分の1、中国の5分の1、韓国の2分の1だったと説明。それが急激に変わって、前回のKubeCon + CloudNativeCon Japan 2025以降、200%増加したことを紹介した。
「おそらくこれをドライブしているのが、AIアプリケーションに関するデマンド(需要)なんじゃないかと思う」と福安氏。「多くのAIアプリケーションはKubernetesで動くため、企業ではKubernetesのわかるエンジニアが必要になってくる」(福安氏)。
続いて福安氏は、企業のKubernetes導入率がグローバルでは72%のところ、日本は57%という数字を紹介し、AI活用もグローバルより16ポイント低いという数字も紹介した。一方で、AI採用需要は、グローバルで26%増加予測であるのに対し、国内は54%増予測となっている。
「日本はいまキャッチアップしているフェーズで、グローバルではKubernetesが普及してAIアプリケーションの準備ができているのに対し、これからKubernetesエンジニアの需要が増えてきていると、私は読んでいる」(福安氏)。
続いてソブリンAIについては、「ソブリンAIを実現しようとすると、ソブリンなクラウドが必要になる。そのためには日本にクラウドインフラを構築して運用するエンジニアを増やしていかないと実現できない」と福安氏は語った。
最後に、世界的な自動車会社などの製造業を持つ日本が優位性を発揮できる分野として、フィジカルAIが挙げられるが、これについて福安氏は「往々にしてハードウェアやAIモデルに投資や関心が集まりがちだが、ソフトウェアのインフラにどれだけ注視できるかが、強いフィジカルAIのビジネスを作るのに重要だと考えている」と語った。








































