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Intelのビッグデータ/IoT戦略を支えるClouderaとMcAfeeの存在~「Enterprise Summit」初日レポート (McAfeeによる“Security by Design”がIntelの強み)

McAfeeによる“Security by Design”がIntelの強み

 IoTのように急速に普及しつつある技術は、導入事例が圧倒的に少ないため、使う側にとってはさまざまな不安が生じる。クローニン氏はIoTにおける現状の課題として

・セキュリティとプライバシー
・バーティカルマーケットにおけるフラグメンテーション
・オペレーションおよびデータの透過的な統合
・レガシーインフラ
・相互運用性と標準化

といった点を挙げているが、この中でも最も普及の阻害要因となりうる危険性が高いのがセキュリティとプライバシーの問題だ。逆に言えば、セキュリティをおろそかにしたIoTに未来はない。エンタープライズからもコンシューマからも信頼を得ることができず、データ分析プラットフォームとしての基準を満たさないからだ。

 ここでIntelがビッグデータ/IoT戦略において優位点として強調するのは、McAfeeとの統合を進めてきた結果、ハードウェアとソフトウェアの両方に、最初の設計時からセキュリティを折り込んだ製品(Security by Design)を開発できることだ。高レベルのセキュリティを担保したハードウェア/ソフトウェアをベースにできれば、多種多様なIoTデータの格納先として最も重要な条件をクリアしたともいえる。

McAfee APAC CTOのショーン・デュカ氏

 個別インタビューに応じてくれたMcAfee APACでCTOを務めるショーン・デュカ(Sean Duca)氏は「IoTとセキュリティは不可分の存在。だからこそ最初からセキュリティありきでプラットフォームを構築できるIntelはIoT市場ですでに優位に立っている。もっとも100%のセキュリティは存在しないし、数十億、数百億のデバイスやシステムから流入するすべてのデータを完ぺきにチェックし、防御することは不可能でもある。

 落としどころの線引きは難しいが、ゲートウェイテクノロジ(Wind RiverベースのIntel Gateway Solutions)や暗号化技術と組み合わせた、多重のセキュリティフレームワークで安全性を高めることは可能」と語っている。

 「IoTはいままで考えることすらもできなかった世界を実現する。(センサーを内蔵した)タッチするだけでその人の体調や精神状態までたちどころにクラウドに記録されるようになる日も遠くない。そのとき、ユーザーがセキュリティやプライバシーを毎回心配しなくてはいけないようなプラットフォームであってはならない。McAfeeの長年にわたるセキュリティの資産を継承したIntelだからこそ、このきびしい条件をクリアできる」(デュカ氏)。

 なお、前述のゲナイ氏は昨年10月にClouderaに入社したが、その前は長いことミドルウェアやメインフレームのセキュリティにかかわってきたキャリアをもつ。Clouderaもまたセキュリティに力を入れている企業であり、ゲナイ氏のような人材を補強しているところだが、そうしたポリシーがIntelとも一致したということもできる。

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 Intelが実現しようとしているIoTプラットフォームが描く未来はどんな世界なのだろうか。実はすでにその一端が成果として見え始めている。

 Intelは8月13日、パーキンソン病の研究助成活動を行う「マイケル・J・フォックス財団(The Michael J. Fox Foundation)」との提携を発表した。パーキンソン病の患者数名にウェアラブル端末を装着し、端末のセンサーから抽出したデータをIntelアーキテクチャおよびClouderaベースのIoTプラットフォームに送信、データを分析するというプロジェクトで、患者の症状をリアルタイムかつダイレクトに測定できる。このデータ分析により、新薬の開発や治療に大きな進展があると見られており、多くの患者やその家族が成果に期待を寄せている。

 ビッグデータやIoTの分析が拡大/普及すれば、いままで実現できなかったことができるようになる可能性が一気に広がる。「Intelはビッグデータ/IoTの市場においてリーディングテクノロジを提供することを約束する」とクローニン氏は強調する。もしその言葉通りであれば、5年後にはまったく新しい世界が開けているかもしれない。

五味 明子