VMware vSphere 4を試す【第一回】
USBメモリからブートするESXiサーバーを構築する
サーバー仮想化ソフトウェアとして有名なVMware vSphere 4は、単体のソフトウェアではなく、サーバー仮想化スイートともいうべきモノだ。仮想化のハイパーバイザーをベースに、さまざまな仮想化関連のソフトウェアで構成されている。機能が豊富なことから、軽い気持ちで試すには、ハードルが高いのも事実だ。
多くの機能が用意されているので、すべては紹介できないが、“らしさ”を実感できる機能をvSphere 4環境を実際に構築しながら紹介する。
初回は、vSphere 4の基盤となるハイパーバイザーのESX/ESXiのインストールを紹介する。
■vSphere 4の評価版を入手しよう
vSphere 4の60日間使える評価版は、VMwareのHPからダウンロードできる |
VMwareは、60日間試用できるvSphere 4の評価版をオンラインで配布している。この評価版には、vSphere 4 Enterprise PlusとvCenter Server Standardのライセンスが含まれているので、vSphere 4で提供されるすべての機能をテストできる。
ダウンロードページにアクセスすると、「ダウンロードするハイパーバイザーの選択」「管理サーバのダウンロード」「追加コンポーネントのダウンロード(オプション)」の3つの項目が表示される。このうち、「ダウンロードするハイパーバイザーの選択」にある「VMware ESXi 4.0 Update 1 Installableイメージ」と、「管理サーバのダウンロード」にある「VMware vCenter Server 4 U1およびモジュール」をダウンロードしよう。vCenter ServerはISOイメージとZIPイメージの2種類が用意されているが、ZIPイメージをダウンロードしておこう(詳細は次回説明する)。
vSphere 4で使用するハイパーバイザーとして、VMware ESXとVMware ESXiの2つが用意されている。ESX/ESXiは、基本的には同じコードを使ったハイパーバイザーだ。
違いは、ESXがLinuxのサービスコンソールを持つのに対して、ESXiはサービスコンソールを持たないベアメタルのハイパーバイザーという点。そのため、ESXはサービスコンソールから各種設定が行えるが、ESXiはコンソールから設定できる項目は必要最小限の部分だけで、各種設定を行うにはGUIのvSphere Clientが必要になる。その代わり、ESXiはサービスコンソールを持たないため、コンパクトにできているのが特長だ。このコンパクトな点を生かして、USBメモリやSDメモリから起動可能なOEM版のESXiがサーバーベンダーから提供されている。
ダウンロードページで提供されているESX/ESXiともに、内蔵HDDにインストールして利用するものだ。しかし、ESXiはUSBメモリからブートすることができる。内蔵HDDがないサーバーでも仮想サーバーとして利用することができるので、公式にサポートされた方法ではないが、ESXiをUSBメモリでブートできるようにする方法を紹介する。
■vSphere 4に対応したハードウェアを用意する
vSphere 4試用版を動作させる上で重要になるのが、サーバーやストレージといったハードウェアだ。
今回使用したのは、デルの「PowerEdge R805」。AMDの6コアOpteron×2を搭載したラックマウント型のサーバーだ。また、外部ストレージとして、デルの「EqualLogic PS5000XV」も使用した。どちらもvSphere 4をサポートしたハードウェアだ。このほか、このほか、vCenter Serverの動作用に、Windows Server 2008をインストールしたサーバーを1台用意した。サーバーといっても、デスクトップPCにWindows Server 2008をインストールしたものだ。
PowerEdge R805 | EqualLogic PS5000XV |
ESXiは、サーバーであれば格安サーバーでも動作可能だ。これから購入する場合は、同社が提供するハードウェア互換リストで対応状況を確認してから購入しよう。
IntelのNehalem世代やAMDのShanghai世代のCPUでは、CPUに仮想化をスピードアップ機能が入っている |
なお、ESX/ESXiでは、仮想メモリと実メモリのアドレスをマッピングする機能をサポートしている。この機能をサポートしたCPUなら、仮想環境は物理環境と比べても10%以下のオーバーヘッドで動作する。ESX/ESXiの導入を考えているなら、Intel EPTやAMD RVIをサポートしたサーバーを利用するといいだろう。Intel EPTはNehalem世代以降のCPU、AMD RVIは、Shanghai世代以降のCPUでサポートされている。
なお、ESXiがサポートするデバイス(特にNIC)は限られているので、環境を構築するにあたって、VMwareのサイトにあるハードウェア互換リストで確認しておこう。インテル製のNICであれば、ESXiでの動作をサポートしているので、動作しないという問題が発生するようであれば、これを利用するといいだろう。
■USBブートできるESXiを作成する
ESXiはISOイメージで配布されており、通常はこのISOイメージをCD-Rなどに焼き、サーバーの内蔵HDDにインストールして使用する。今回は非公式な方法ではあるが、USBメモリから直接ESXiをブートできる環境を作ってみる。
作業としては、ESXiのISOイメージからUSBブートに必要なファイルを抜き出して、USBメモリに書き込むだけだ。
使うソフトは、圧縮ファイルの解凍ソフト(Explzhを使用)とイメージファイルをUSBメモリに書き込むソフト(DD for Windowsを使用)の2つ。ちなみに、ESXiのブートUSBメモリの作成は、デスクトップPCがあれば行える。
これで作業は終了だ。あとはこのUSBメモリをサーバーに挿して起動すればOK。USBメモリからブートできるよう、BIOSなどでサーバーの設定内容を確認しておこう。
繰り返しになるが、ESX/ESXiは、サポートしているデバイスが少ないため、すべてのサーバーで動作するとは限らない。できれば、ESX/ESXiの動作が認証されているサーバーを使った方がベストだ。また、ESXiに対応していないNICを使っているためにエラーが起こる可能性が高い。この場合、インテル製のNIC(デスクトップ向けでOK)であればサポートされているので、別途用意してみるといいだろう。
なお、USBメモリでESXiをブートすると、USBメモリには設定ファイルが書き込まれる。このため、1つのUSBメモリを複数のサーバーで使い回すことはできない。サーバーごとにブート用のUSBメモリを用意しておこう。
■ESXiサーバーの基本設定
ESXiのブートに成功すれば、ESXiサーバーの起動画面が表示される。ただ、起動直後の設定では、いくつか問題が出るため、ここでは最低限の設定をESXiのコンソールで行う。
ここでは、キーボード、マネジメント用に利用するネットワークのIPアドレスの設定などを行っておく。
ESXiサーバーのコンソール画面。このSystem Customizationでキーボードやパスワード、ネットワークの設定を行う |
Configure Keyboard
ブート時のインストールで、キーボードがほかの言語になっている場合がある。そこで、一番最初にキーボードを「Japanese」に変更する。ただし、ESXiサーバーではIMEが入っているわけではないので、日本語の入力が行えるわけではない。日本語キーボードのキー配列に変更するためだ。
Configure Password
ESXiサーバーのコンソールやリモートでアクセスする場合、rootというIDを使用する。インストール直後は、rootのパスワードが設定されていないので設定しておこう。
Configure Management Network
ESXiサーバーは、DHCPから自動的にIPアドレスを取得する設定になっている。スタティックなIPアドレスを使用する場合は、ここで変更しよう。
ここでは、設定を変更するNICを選択したり、VLANの設定なども行える。今回は、1本のNICしかネットワークに接続していないため、このあたりはデフォルトでOKだ。
変更するのは、「IP Configuration」「DNS Configuration」「Custom DNS Suffixes」の3つ。IPv6を使用する場合は、「IPv6 Configuration」を使用する。
IP Configurationでは、IPアドレス、サブネット、ゲートウェイなどの設定が行える。デフォルトでは、DHCPからDynamic IP Addressを使用するようになっている。今回は、スタティックIPアドレスを使用するため、「Set static IP address and network configuration」を選択して、スペースキーを押す。そうすれば、IPアドレスやサブネット、ゲートウェイなどのIPアドレスが入力できるようになる。ここに、必要なIPアドレスを入力すればOKだ。
DNS Configurationでは、DNSサーバーのIPアドレスを入力しておく。Hostnameは、「ESXi01」にした。さらに、Custom DNS Suffixesで、ドメイン名を入力しておく。
Configure Management Networkから抜けるには、Escキーを押す。すると、ネットワーク設定を反映するかが尋ねられる。ここでYesを選択すれば、ネットワーク設定が自動的に変更される。
■vSphere Clientをインストールする
次に、ESXiサーバーを管理するために必要となるvSphere Clientをインストールしよう。インストール先はクライアントPCでもサーバーでもどこでもかまわない。今回は、vCenter Server用に用意しているWindows Server 2008環境にインストールした。
vSphere Clientをインストールするには、ダウンロードしたvCenter Serverのインストールメディアからインストールする方法と、ESXiサーバーにアクセスして、vSphere Clientをダウンロードしてインストールする方法がある。今回は、ESXiサーバーからvSphere Clientをダウンロードして、インストールする方法を紹介する。
ESXiサーバーには、WebブラウザでIPアドレスを指定してアクセスする。証明書のエラーが表示されるが、気にせずにアクセスしよう。そうすると、vSphere Clientなどがダウンロードできるページが表示される。ここで、vSphere Clientをダウンロードして、PCにインストールすればOKだ。
vSphere Clientのインストール自体は、難しいことはない。唯一あるのは、カスタムセットアップでvSphere Host Update Utility4.0をインストールするか? という選択肢の部分だろう。
vSphere Host Update Utilityは、ESX/ESXiなどのハイパーバイザーをアップデートするために利用するユーティリティ。今回は、インターネットに接続しない閉じたネットワーク上で環境を構築しているので、オフにしている。
【2月1日 修正】初出時、誤解を与える表現がありましたので、修正しました。
vSphere Clientを起動するには、デスクトップにある「VMware vSphere Client」をダブルクリックすればいい。vSphere Clientの起動後、接続するESXiサーバーのIPアドレス(もしくはホスト名)、ユーザー名、パスワードを入力すれば、ESXiサーバーにアクセスできる。
注意が必要なのは、vSphere ClientでESXiサーバーにアクセスするときに、セキュリティ警告が表示される点。これは、ESXiサーバーが正しい証明書を持っていないために起こるもので、無視して大丈夫だ。ただし、実運用の場合は、きちんと証明書を取って、警告が出ないようにした方がいい。
ESXiサーバーにアクセスするには、IPアドレスもしくはホスト名、ユーザー名(root)、パスワードを入力する | ここでも、証明書に関するセキュリティ警告が表示される。問題ないので、「無視」を選択して先にすすむ |
評価版であることを示すメッセージが表示されるので、「OK」をクリックする | vSphere Clientを使えば、ESXiのさまざまな設定がGUIベースで行える |
これでESXiサーバーを管理する環境ができあがった。ESXiサーバーを単体で使用するなら、これで基本設定は終了だ。しかし、vSphereらしい機能を利用するには、vCenter Serverが必要だ。
次回は、vCenter ServerのインストールとESXiサーバーをvCenter Serverに登録するところまでを紹介する。