仮想化道場

ARMサーバーはどこに使われていくのか? (ARMサーバーの環境はまだ整っていない)

ARMサーバーの環境はまだ整っていない

――1年以上前からARMサーバーを手がけているなら、なぜ販売しないのですか?

 一年前に発表した32ビットARMサーバーのCOPPERは、ARMプロセッサを使ったサーバーはどんなことに利用できるのか、ということを探るテストケースだったといえます。

 また、サーバー用途に向けた32ビットのARMプロセッサがまだまだ成熟していなかった、ということもあります。やはりサーバー用途ということを考えると、64ビットのARMプロセッサが必須といえるでしょう。

 それに、サーバーで利用されるARMプロセッサのパフォーマンスは、モバイルなどで利用されているものよりも、数段上の性能が必要になります。こういった時に、ARMプロセッサは本当に低消費電力で、電源効率がいいのかということもテストしなければなりません。

 COPPERを手がけた時に、ARM自身も64ビットアーキテクチャのARMv8を発表したため、本格的に製品化していくには32ビットARMではなく、64ビットARMだと考えています。また、64ビットARMプロセッサも多くのチップベンダーが開発を手がけ始めたところだったことから、プロセッサが成熟するにはもう少し時間がかかると思いました。

 さらに、これまでARMサーバーの製品化を行わなかった最大の要因は、OSだけでなく、開発ツールやアプリケーションなどのソフトウェア環境が整っていないという状況があったためです。

 このため、ハードウェアを提供しても、ARM用のOSを開発したり、アプリケーションを自ら開発しメンテナンスしたりできる組織でしかARMサーバーは利用できないと思い、Dellでは、ARMサーバーを限定的な提供にとどめています。

 今後は、ARMベースのOSやアプリケーションの開発を行っている企業や団体に、開発したARMサーバーを提供して、今後のARMサーバーのエコシステムを構築できるようにしようと考えています。実際、Apache Software FoundationにDell製のARMサーバーが提供され、フロントのWebサーバー群として利用されています。

昨年のARM Technology Symposiumで展示されたARMサーバー。このARMサーバーは、32ビットベースだ
ブレードにプロセッサとHDDが搭載されている
Dellは、米国で開催されたARM TechConでは、AppliedMicroの64ビットARMプロセッサを使ったARMサーバーを展示していた。OSは、64ビットのARM版Linux(Fedraベース)が動作していた(DellのWebサイトより)

(山本 雅史)