週刊海外テックWatch

オープンウエイトは審査対象外 米AI安全審査に残る奇妙な線引き

オープンウエイトモデルは「対象外」

 8月4日の協議で焦点となったのが、審査対象の線引きだという。Bloombergによると、政府当局者はこの会合で、中国企業が開発するオープンウエイトモデルは、このフレームワークの審査対象外になると業界側に伝えた。

 だがこの線引きには、矛盾があるとの指摘が出ている。フランスのAI安全評価団体SaferAIが8月2日に公表した報告書は、中国Z.ai製のオープンウエイトモデル「GLM-5.2」を、「Opus 4.7」や「GPT-5.5」などのフロンティアモデルと比較した。サイバー分野では、GLM-5.2の能力は数カ月前に公開されたフロンティアモデルに匹敵し、Opus 4.7が一部のCyberGym評価を拒否したのに対し、GLM-5.2はコンテンツフィルターによる制限を受けずに評価を実行した。

 SaferAIは、GLM-5.2の能力そのものについて総合的な危険判定はしていないが、同程度の能力を持つクローズドモデルに比べて安全策が弱く、オープンウエイトであるため安全策を除去できる点を問題視している。

 非公開のまま進む協議の進め方そのものにも、批判の声が上がっている。超党派の外交シンクタンク、外交問題評議会(CFR)の研究者、Chris McGuire氏も、「世界で最も重要な技術を秘密裏の自発的ルールで規制することはできない」とXへの投稿で批判した。そして「米国内の中国製・第三国製・オープンウエイトのモデルにも適用されるのか? これは極めて重要な点だ」と続けた。

 政権内部でも、規制の在り方には議論があり、一致をみているわけではない。

 一つは慎重論だ。David Sacks氏らは、モデルへの厳格な事前審査はAI大手に有利に働き、米国の対中競争力を損ないかねないと主張している(Axios)。もう一つは対中国の姿勢だ。Scott Bessent財務長官は、中国企業が米国モデルを「蒸留」して技術を盗んでいると発言し、制裁の可能性にも言及している(CNBC)。中国製オープンウエイトモデルを審査対象から除外する方向で検討されているのと真逆の考えだ。