週刊海外テックWatch

全米でAIデータセンターに“No” NY州は米国初の一時停止命令

欧州が先に歩んだ道――モラトリアムから「条件付き再開」へ

 米国で起きた「AIブームと電力網の綱引き」は、欧州ではすでに数年前から表面化しているテーマだ。

 欧州最大のデータセンター拠点の一つ、アイルランドがその先例だ。地元紙The Irish Timesなどによると、電力消費急増によるブラックアウト懸念から、規制当局のCRU(公益事業規制委員会)は2021年、首都ダブリン周辺での新規データセンターの電力網接続を事実上禁止した。データセンターの電力消費は2024年に国内需要の約22%に達し、10年後には3割を超える可能性があるとCRUは説明している。

 事実上のモラトリアムは4年間続き、この間にAmazonは英ロンドンにデータセンターを建設する決定を下した。Microsoftも、ロンドン、フランクフルト、マドリードへの立地変更を検討したという。

 潮目が変わったのは2025年12月だ。CRUは条件付きで接続禁止を解除した。

 国際法律事務所Pinsent Masonsによると、CRUは新規データセンターに対し、自家発電設備または蓄電システムの設置と、需要に応じた系統への電力の逆供給を義務付けた。さらに、6年間の移行期間を経て、年間電力需要の80%以上を国内の追加再生可能エネルギーで賄うことも求めた。単純な規制解除ではなく、規制を精緻化した上で再開する、というアプローチだ。

 送電網の容量不足を理由に新規の接続申請を制限・凍結する動きは、アイルランドだけではない。オランダ・アムステルダムでは2019年から、ドイツ・フランクフルトでは2022年から見られる。欧州委員会は2040年までにグリッド整備に1.2兆ユーロ(約1兆3600億ドル)の投資が必要と試算しているとEuronewsは伝えており、欧州で数年前に起きたことが、米国で今起きつつあると言えそうだ。

 データセンターへの反発は、モラトリアムを支持しないTrump政権にも対応を促したとみられる。大統領は7月23日、データセンター増設に伴う電力コストが一般家庭に転嫁されないようにする「料金負担者保護の誓約」の対象拡大を発表した。ホワイトハウスによると、拡大後の枠組みは米国で供給される電力の約80%をカバーする。もっとも、この誓約に法的拘束力はない。

 欧州が数年かけて到達したのは、モラトリアムの恒久化ではなく「条件付き再開」という着地点だった。米国もまた同じ道をたどるのか。ニューヨーク州の最長1年のモラトリアムは、その答えを探る時間となりそうだ。