週刊海外テックWatch

値下げ合戦の裏で「実は割高」に? Meta、SpaceXAI、OpenAIが仕掛けるトークン価格競争

値下げの連鎖と、企業側のコスト不満

 トークンの価格競争が動き出したのは前月からだ。6月11日付のWall Street Journalは、OpenAIがトークン価格の大幅な引き下げを検討していると報じた。Anthropicも同様に動くとみて先手を打つことを狙ったという。両社は6月上旬、非公開でIPO関連書類を提出しており、値下げ・効率化競争は両社のユーザー獲得競争の文脈で始まっていたのだ。

 そして値下げの背景には、顧客企業側の切実な不満がある。いざエージェントを導入して使い始めたところ、AIモデルの使用料金が跳ね上がって月に数百万ドルを請求されたという企業も出てきた。ユーザー企業の間では「トークン税」と呼んで、AI企業に支払う利用料が膨らみ続けることへの懸念も広がっていた。

 DA Davidson & Coでテクノロジー調査を率いるGil Luria氏はBloombergに対し「企業の支出は以前より大幅に増えている」「コストが制御不能になりつつあるのを見て、効率性について疑問を持ち始めている」と指摘する。Anthropicが一律のサブスクリプション料金から利用量に応じた課金へ切り替えたことも、想定外の高額請求を招いた一因だという。

 こうした中で、値下げは実際の製品として姿を現した。

 The New Stackがまとめた主要6モデルの価格は下表の通りだ。低価格帯モデルの下限が100万トークンあたり1~2ドル程度まで下がる一方、フラッグシップ・プレミアム帯は5~10ドルへと上昇しており、価格帯の中間層が薄くなりつつある。

モデル名 入力単価 / 出力単価(100万トークンあたり)7月10日現在
GPT-5.6 Luna $1 / $6
Muse Spark 1.1 $1.25 / $4.25
Grok 4.5 $2 / $6
GPT-5.6 Sol $5 / $30
Claude Opus 4.8 $5 / $25
Claude Fable 5 $10 / $50

 また値下げ圧力をかけているのは米国大手だけではない。中国のテック企業は低価格のオープンAIモデルを市場に大量投入している。例えば、DeepSeekの推論特化モデル「DeepSeek V4 Pro」は入力100万トークンあたり0.435ドルでOpus 4.8の10分の1以下。Zhipu AIの「GLM-5.2」は同1.4ドルで3割弱だ(価格は7月21日確認)。

 わずか1年半前にはOpenAI幹部が月額「数千ドル」規模の高額プランを検討したと伝えられていたことを考えると、大きく様変わりしたと言える。