週刊海外テックWatch
連邦安全規則の草案をAIで生成 米運輸省の劇的合理化への懸念
2026年2月2日 11:28
世界でも広がるAI活用
AIによる規則作成の問題点として、ProPublicaやArs Technicaは、「ハルシネーション(幻覚)」を挙げている。事実とは異なる結果を確信をもって回答するハルシネーションは、人命や安全にかかわる分野では絶対に許容されないものだ。DOTが規制する航空安全や有害物質の輸送では、規則の一文字の誤りが重大な違いにつながることもありうる。
また、ProPublicaは、専門家であるはずの職員の役割が「AI出力の校正係」に矮小化されかねないと指摘する。専門家の中には、AIが起草を代替することで、弁護士や裁判官が本来備えるべき「分析力、構成力、議論の構築力」といった根源的なスキルが劣化するリスクを挙げる者もある。
だが、AIに法案や規則草案を書かせるという動きは世界に広がる。
ブラジルのポルト・アレグレ市では2023年10月、ChatGPTが作成した世界初の条例が成立した。Business Insiderによると、「盗まれた水道メーターの再設置費用を不動産所有者に請求することを禁止する」内容で、市議会議員のRamiro Rosario氏が提案したものだ。
条例案は市議会の全会一致で可決されたが、Rosario氏はその後、条例案がAI生成であることをX(旧Twitter)への投稿で明らかにした。約250文字のプロンプトを入力して15秒ほどで生成されたものだという。
このとき、市議会議長は「危険な前例」になると不快感を示したが、後に「より深く読み進めるうち」「トレンドになるだろうと気づいた」と述べている。
法や規則は、市民生活や、生命にさえ影響しうる。「十分な品質」であれば良いのか、どんなものならAIに任せてもよいのか、説明責任は誰が負うのか――。広い視野で考える必要があるだろう。