週刊海外テックWatch

ハイブリッド戦略で差別化を図る IBMが「ソブリンAI」市場に参入

“デジタル国境”の内側で何が起こるのか

 IBMはSovereign Coreの設計で、「プラットフォーム機能」「ファーストクラスのシステム特性」「高速かつスケールする運用」という3つの基本原則を掲げている。

 この3原則に基づき、5つのコア機能を提供する。顧客が運用するコントロールプレーン、「主権境界(sovereignty boundary)」内でのIDと暗号化キー管理、ローカルログとテレメトリー、統制されたAI推論、そして迅速な展開能力だ。

 主権境界とは、いわば「デジタル国境」のようなものだ。国境が人や物の移動を管理するように、主権境界はデータとAI処理の流れを管理する。従来のクラウドサービスでは、この境界が曖昧だった。データがどこに保存され、AIがどこで推論を実行しているのか、ユーザー側では完全に把握できなかった。

 IBM Sovereign Coreでは、AIモデルの展開とホスティング、ローカル推論実行がすべて主権境界内で行われ、データが外部プロバイダーにエクスポートされることはない。組織は、組み込みのマルチテナンシー機能を備えた隔離環境を、展開から数日以内に立ち上げることができるという。

 テック系メディアの解説によると、IBM Sovereign Coreのアーキテクチャは、コンテナオーケストレーションプラットフォームである「Red Hat OpenShift」と仮想化の「OpenShift Virtualization」を基盤とし、ハードウェアとインフラの柔軟性を提供する。

 シークレット管理ツールの「HashiCorp Vault」が主権境界内でのアクセス管理を担い、「IBM Concert Compliance Center」がガバナンス、リスク管理、コンプライアンス検証を実行する。OpenShiftを実行可能なKubernetesベースの環境であれば、オンプレミスでもクラウドでも実行できる。

 IBMのソフトウェア担当バイスプレジデントのWill Streit氏は、「Red Hatが実行できる環境であれば(IBM Sovereign Coreを)実行できる」としており、顧客が地域間だけでなくインフラ間でもワークロードを移動できると説明した(TechTarget)。

 また、バンドルソフトウェアとして提供されるため、企業や通信事業者が特定の業界や顧客向けに、迅速にソブリン環境を設定できると付け加えた。