997gの軽量ノートPCに見るデルの変化-メリット社長に聞く
9月2日に発表された法人向けノートPC「Latitude Eシリーズ」 |
デル株式会社は9月2日、法人向けノートPCの新製品として、Latitude Eシリーズを国内に投入すると発表した。なかでも、戦略的製品と位置づけられるLatitude E4200では、1kgを切る軽量化を実現。また、Latitude E6400では、最大19時間までの長時間バッテリー駆動など、日本のモバイルユースを強く意識した製品となっている。デルのジム・メリット社長は、「日本で十分、成功すると期待を持てるノートPC」と語る。一方、日本におけるデルの業績も上昇している。第2四半期決算は、「私が社長に就任してから最高の四半期になった」と、メリット社長が語るように、売上高は2ケタ成長、利益も30%を超える実績となっている。新たな法人向けノートPCへの期待、そして、今後の日本におけるデルの取り組みを聞いた。
ジム・メリット社長 |
先ごろ、米Dellが発表した2009年度第2四半期(5~7月)の業績は、売上高が対前年比11%増の164億ドル、出荷台数は同19%増となり、業界全体の成長を上回る伸びとなった。
業績発表リリースのなかで、マイケル・デル会長兼CEOは、「主要なすべての製品カテゴリにおいて、2四半期連続で、業界平均を数倍上回る成長を達成した」とのコメントを発表している。
営業利益は、グローバルコンシューマ事業や欧州、中東、アフリカ(EMEA)地域向けの投資などの影響もあり、9%減の8億1900万ドルと、前年同期の実績を下回っているが、日本/アジア太平洋地域や新興国市場での成長は依然として高い。
同発表によると、日本/アジア太平洋地域における売上高は前年同期比16%増、利益率も10%改善していることが明らかになっているが、メリット社長は、このほど、日本における業績についても言及。「売上高では2ケタ増、純利益では30%を超える成長を遂げ、利益率も2ケタの上昇となった。その結果、社長就任以来、最高の業績を達成した」(メリット社長)とする。
なかでも、大きな成長を遂げたのが、コンシューマ事業である。
製品ラインアップの強化、ビックカメラをはじめとする販売チャネルの拡張などもあり、売上高、利益ともに25%増という高い成長を遂げている。重点課題のひとつとして同社が掲げるコンシューマ事業の拡大に、明確な成果が出ているのだ。
また、法人向けクライアントPCについても、IT投資に対する機運が弱含みに推移するものの、「当社の法人向けビジネスにおいては、懸念するような状況にはない」として、「新たなノートPCの投入もあり、今後も立ち止まることなく、積極的な事業拡大に取り組む」と意欲を見せる。
今年度上期の取り組みのなかで、メリット社長が高い評価を寄せるのが、同社に対する顧客満足度が高まっている点だ。
専門誌の顧客満足度調査では、クライアントPC分野で第1位を獲得。同社の社内調査でも、顧客満足度は着実に上昇傾向にあるという。
「2年前に日本に来たときには、顧客満足度がいまほどは高くはなかった。これだけ改善できたのは、顧客満足度の向上に対して、積極的な投資を継続的に行ってきたこと。さらに社員が高い意識を持って、サポートの強化に取り組んでくれた成果。デルにとって、最も重要な指標が高まったことを評価したい」と語る。
一方、日本法人では、今年2月から始まっている2008年度において、2つのセールスセンターを国内に開設している。
ひとつは、2月に大阪に設置した西日本支社。そして、もうひとつは8月に設置した東日本支社である。
どちらも営業拠点としての役割だけでなく、製品展示やデモンストレーションを行うための拠点として、また、接続性の検証などを行うラボとしての役割を担う。
「西日本支社については、この半年で、多くの顧客に対して、デルが提供するソリューションをお見せすることができただろう。デルの製品だけでなく、EMCやVMware、マイクロソフト、インテル、オラクルといったパートナー企業と連動したソリューション提案も行っている。また、顧客に対するトレーニングセンターとしての役割でも、成果もあがっている」とする。
買収したイコールロジックのソリューション提案も、これらのセールスセンターを通じて、より積極的に訴求できるようになっているという。
デルでは、日本におけるエリア別の伸張率という指標を評価基準にはしていないが、日本国内において、第2四半期実績で、サーバーが前年同期比12%増、ストレージは同25%増という成果があがっていることを示しながら、「西日本支社の開設がプラス要素に働いていることのあかし」と、メリット社長は自己評価している。
8月に開設したばかりの東日本支社の成果を求めるには、あまりにも時期尚早だが、この効果も下期において、エンタープライズ事業の成果として発揮されることになるだろう。
最軽量時で997gを実現したLatitude E4200 |
9月2日に発表された、12.1型液晶ディスプレイを搭載したモバイルノート「Latitude E4200」は、4セルのバッテリーを搭載した最軽量時の重量は997gと、日本人が求めるモバイルノートPCの要件を満たしたものとなっている。
デルのクライアント・マーケティング本部ディレクターの常松正樹氏は、「日本では1kgを切ることの重要性が認知されているが、米国本社では2.2ポンドを切るという感覚が伝わらない。日本のユーザーの声を、直接、本社の開発スタッフに伝え、1kg(2.2ポンド)を切る重要性を訴えた。その点でも、Latitude E4200は、日本からの要求がかなり反映された製品といえる。デルが、日本で注目を集めるB5ノート市場に、本格的に参入することができる製品」と自信を見せる。
メリット社長も、「日本で、十分に成功を収めると期待できる製品。1kgを切る軽量化、長時間のバッテリー駆動、高いセキュリティの実現、耐久性を持った構造など、日本のニーズに合致したモバイルノートPCを投入できた。過去18カ月でも、デルのノートPCはマーケットの成長を数倍上回る大きな成長を遂げることができたが、それをさらに加速することができる製品」と強気の姿勢だ。
では、なぜ、こうした製品をデルが投入できたのか。
その理由として、「この18カ月で、デル自身が大きく変化した結果」とメリット社長は語る。
18カ月前というのは、創業者であるマイケル・デル氏が、CEOに復帰したタイミングでもある。
かつては、ひとつの製品で、全世界をカバーするというのがデルの基本戦略だった。つまり、それぞれの地域特性を考えない、「世界標準」の製品投入がベースとなっていた。
だが、いまのデルでは、地域ごとの市場特性をとらえ、先進国向け、新興国向けといったように、地域や市場性を反映した製品づくりが行われている。
今回のLatitude E4200も、日本の市場特性を反映して製品化したものだといえる。
「デル自身の変革がなければ、この製品の投入はなかっただろう」と、メリット社長は改めて強調する。
Latitude E4200を手にするメリット社長 |
デルの変革が、最も如実に表れているポイントとして、メリット社長は「製品」をあげる。
「デルは、顧客へのフォーカス、製品へのフォーカスを強く打ち出している。なかでも製品へのフォーカスという点では、ノートPCの投入、コンシューマ向け製品ラインの強化、中小企業向けの新ブランド製品の投入、イコールロジックの買収という実績を見ても、実感していただけるはず。さらに、これに連動した形で提供するサービスプラットフォームの強化を進めてきた。デルの社内が、われわれはどんな製品を扱っていくのか、ということを認識することができた18カ月間だったともいえる」とする。
そして、製品へのフォーカスは、いわば顧客へのフォーカスへと直結するというのがメリット社長の見解だ。顧客の意見に耳を傾け、その声を反映した結果が、顧客に満足が得られる製品として市場に投入されることになるからだ。
そして、さらにこうも語る。
「顧客フォーカス、製品フォーカスの結果が、生産性(プロダクティビティ)のフォーカスにつながる。顧客は、効率性が高く、合理的な製品およびサービスを利用できる。これが当社が目指す『シンプルなIT』の実現になる」
日本の顧客にフォーカスして誕生したLatitude E4200は、結果として、ユーザーの効率性や利便性の向上につながるというわけだ。
すでに海外では、デルがミニノートを投入するのではないかといった憶測が流れているが、メリット社長は、「マーケットの変化や、顧客のニーズをとらえて、柔軟に製品ラインアップを強化していくことが必要」として、顧客の声を反映した製品投入を継続的に図っていく姿勢を示した。
メリット社長は今年8月の東日本支社の開設によって、「日本の市場をカバーする体制は整ったと考えている」として、下期には新たな拠点開設に対する投資は行わないことを明らかにした。
その体制のなかで、「バランスの取れた収益性のある事業の追求」が、日本法人における下期の基本方針となる。さらに、「顧客に高いバリューを提供し、顧客の成功をお手伝いする企業としてのポジションを、より強固にしたい」とも語る。
「過去18カ月間にわたって、デルは、日本市場において、順調に成長を遂げてきた。顧客満足度も高まっており、その成果も現れている。今後の課題は、ソリューション提案の加速。新たなサーバーブレードの提案や、イコールロジックおよびEMCによるストレージ提案の強みも発揮したい。東日本支社、西日本支社の存在が、これを後押しすることになるだろう」と語る。
日本市場に適した製品が出そろいはじめるとともに、日本市場におけるファシリティが整ったとするメリット社長は、いよいよ事業拡大策を、次のギアへとシフトチェンジしていく考えのようだ。