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富士通「IR Day 2026」レポート:5人の副社長が示す成長戦略 Uvance 1.7兆円目標とAI・バリュープライシングによる収益構造変革

 富士通株式会社は16日、投資家およびアナリストを対象とした「IR Day 2026」を開催。同社の5人の副社長が登壇し、それぞれが担当する事業領域での取り組みについて説明。2026年5月に発表した「中長期経営ビジョン2035」の実現に向けた成長戦略を示して見せた。そのなかで、Uvanceの売上高を2030年度に1兆7000億円以上とする計画を明らかにした。

 「中長期経営ビジョン2035」は、「Technology-drivenの価値創造」を掲げ、テクノロジーをコアに、成長のスピードと規模を高めることを基本戦略としている。

 財務指標として、売上収益は2035年度までの年平均成長率で6~9%増を計画するとともに、調整後営業利益率では25~30%を計画。コアCFCは4~5倍、調整後ROEで20%超を目指している。

 富士通の磯部武司副社長 CFOは、「中長期経営ビジョン2035は、過去の中期経営計画での取り組みや変革を土台とし、社会の大きな転換期となる今後10年間を、テクノロジードリブンで価値を創造する期間と定めた。中長期の方向性を示した上で、ゴールに向けて年度ごとに歩みを進めることになる。信頼できるテクノロジーの提供と、AI-drivenの実践により、持続的な成長を目指す」とした。

富士通 代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏

 また、富士通では、信頼と省エネルギーを実現する安心安全な計算基盤である「Sovereign Platform」、人とロボットが協調し、自律的に進化する「Physical AI」、大規模データをデジタルツインで分析し、施策の高度化を図る「Intelligent Society」という3つのソリューションにフォーカスし、テクノロジーを起点に社会課題を解決していく姿勢を強調。

 さらに、「テクノロジーの革新による新たな事業の創出と、サービスソリューション事業のさらなる拡大と進化が、富士通の戦略になる。この2つの戦略を支えるのが顧客基盤、業種ドメイン知見、テクノロジー基盤という富士通が持つ強みになる。ソブリンプラットフォーム、AIプラットフォーム、アプリケーション、プロフェッショナルサービスの4階層にわたる垂直統合モデルに、業種および業務知見、自社や他社IPを加えたオーケストレーションにより、お客さまに信頼できる最適なAI価値を実装することになる」と述べた。

Technology-drivenの価値創造

成長ドライバー「Uvance」の進化と事業構造変革

 成長ドライバーと位置づけるUvanceの取り組みについては、富士通の高橋美波副社長 COO(ソリューションサービス担当)が説明。Uvanceの売上高に関して、2030年度までの年平均成長率を20%超とし、1兆7000億円以上を目指す計画を明らかにした。また、質的転換を図り、Uvanceのリカーリング率を70%超にするほか、リカーリング領域での粗利率を55%超に引き上げるという計画も発表した。

 高橋副社長 COOは、「目指しているのは、単なる売り上げ拡大ではなく、事業構造を変えることである。さらに、成長の質を追求していく。FDEを恒久的にお客さまに張り付かせ、AXを実装していく高度なプロフェッショナルサービスへの転換と、ソブリン、セキュリティなどのソリューションを提供することで、リカーリング率、粗利率を高めていく」と述べた。

富士通 執行役員副社長 COO(ソリューションサービス担当)の高橋美波氏

 今回のIR Dayでは、Uvanceを新たなフェーズへと進化させる考えも示した。

 新たに「Uvance for Industry」を打ち出し、顧客の競争力の源泉である現場の暗黙知や判断基準をAIが理解し、活用できるようにコンテキスト化して、成果をスケール。また、業種コンテキストを起点としたAX提供体制を強化するという。

 高橋副社長 COOは、「富士通には、長年にわたる業務システムの開発および運用を通じて、業種や業務の知見を蓄積してきた。これを、AIが活用できる業種ごとのコンテキストとして体系化する。その結果、AI Transformation(AX)に向けたサービス提供を速めることができるだけでなく、より高い品質での提供も可能になる。これまでのUvanceでは、社会課題を起点としたFit to Standardによるオファリングを軸にしてきたが、今後は、業種のコンテキストを起点に、いかにAXを実現するかといった事業モデルへと進化させる。さらに各業種で得られた知見を組み合わせることで、業種横断の社会課題解決と、新たな市場形成に取り組む」と述べた。

 業界ごとの業務プロセス、判断基準、専門知識、現場の暗黙知を、業種コンテキストとして体系化し、AIが活用可能な知識資産へと変換。社会課題軸のオファリング提供から、業種コンテキストを起点としたAX提供体制へとシフトすることで、顧客ごとの経営課題や業務課題に即したAXを実現するとともに、各業種で創出した成果や知見を横断的に活用し、クロスインダストリーでの新たな価値創出や社会課題の解決へとつなげるという。

 ここでは、小売業界における例を示した。

 「2030年に向けて、消費活動の主役は、店舗やECサイトではなく、パーソナルAIエージェントに移行するとの予測がある。購買履歴や生活スタイル、健康状態、家族構成などを理解して、最適な商品やサービスを選択できる。この仕組みは、お客さまにあった商品開発にもつながり、生産、販売、購入、配送までを最適化することになる。小売、メーカー、物流、金融などの多様なAIエージェントがリアルタイムに連携することで、生活者にとって最適な購買体験を実現する。Agentic Commerceの世界において、富士通が持つ業種の知識を活用し、小売市場におけるAXを進化させる」とした。

 現在、Uvanceはサービスソリューションの売上高の約30%を占め、成長事業としての基盤を確立。高橋副社長COOは、「今後の成長に向けた仕込みも進んでいる。Palantirとのパートナーシップで培ったFDEの取り組み、ブレインパッドの買収によるデータワークロードの強化のほか、最先端AI企業とのパートナーシップにより、顧客や業務に応じたフロンティアAIの活用を推進。新たな付加価値を提供できる体制を整えている」とする。

 その上で、「AXの実現においては、バリューギャップ、トラストギャップ、テクノロジーギャップという3つの課題がある。3つの課題を一体で解決することが不可欠である。富士通では、FDE+Consulting、Application/Agent、Platformの3層で、AXに必要なサービスを提供できる。企業固有の知見をコンテキスト化し具体的な成果につなげていくのが、富士通のFDEになる」などとした。

顧客のAXを実現するUvanceの提供モデル

 富士通は、6年間にわたるPalantirとのパートナーシップを通じて、FDEの行動様式を学び、それをベースに富士通流に進化させた。FDEとコンサルティングが一緒になり、そこで得た成果をテクノロジー側にIPとして還元。これを顧客に再提供する仕組みを構築しているという。「FDEはバズワードになっているが、富士通は、質の高い高度人材をしっかりと育て、お客さまへの提供価値を最大化することを重視している」と語った。

富士通FDEによる、AXを通じた顧客価値最大化

 富士通では、FDEを起点としたビジネス創出で、2030年度に約1500億円を想定。Retail(小売)事業では2030年度に約3000億円を目標に掲げている。

 また、Uvanceにおける新たなクロスインダストリー事業の取り組みとして、ヘルスケアデータを起点とした事例を紹介した。SMBCグループとソフトバンクとの協業により、医療、購買、金融、行動データをAIでつなぎ、生活者コンテキストを起点とした新たなサービスを創出。国産ヘルスケア基盤の構築を第1弾として、食品や小売、金融、自治体、企業へ展開していくという。

 「特定の業種で生まれたデータや顧客接点を、別の企業へとつなぎ、新たな経済圏を生み出すのがUvanceで目指すクロスインダストリー事業である。業種を超えたデータが安全につながることで、これまでに存在しなかったサービスや市場が生まれ、社会全体の価値創出につながる」とした。

生活者を起点に、業種横断の新たな経済圏を創出

 ソブリニティにも積極的に取り組む。

 富士通のクラウドおよびAI技術を活用することで、データ、運用、法的、セキュリティ、技術の5つの領域で主権を確保。Fujitsu MONAKA Serverを中核に、国産AI技術を垂直統合することで、顧客の要件に応じて最適なアーキテクチャーを一気通貫で提供できるという。ソブリン垂直統合モデルの提案によって、2030年度には国内売上高5000億円を目指す。

AXのTrustを実現するソブリニティ

 また、サイバーセキュリティへの取り組みでは、Fujitsu Model-driven Defense Servicesとして、防御能力を実装する「Fujitsu Inherent Defense Architecture」、フロンティアAIなどの活用により、防御を進化させる「Fujitsu Adaptive Defense Intelligence」を提供。さらに、経営と現場を循環させ、防御全体を再設計し続ける仕組みとし、継続的な収益が確保できるように支援する。

 「これまでは個別の製品やサービスの提供であったが、今後は、リスク管理、防御の実装、運用、管理を一体化した『経営サイバー防衛ガバナンス』を提供する。経営起点でお客さまのサイバーセキュリティを再設計し、高度な防御サービスを提供し、企業の事業継続を守る」とした。

 国内セキュリティサービス事業として、2030年度には売上高2000億円を見込む。

経営を起点に進化する、新たなサイバー防衛へ

成長を支えるテクノロジー戦略と次世代基盤技術

 富士通の競争力の源泉であり、すべての成長戦略を支える領域と位置づけるテクノロジー戦略については、ヴィヴェック・マハジャン副社長 CTOが説明した。

富士通 執行役員副社長 CTOのヴィヴェック・マハジャン氏

 マハジャン副社長 CTOは、「2035年に新規事業領域において売上高3兆円の達成を目指しており、それを支える技術群は、AI Platformの『Fujitsu Kozuchi』と、『Computing for AI』、『Network for AI』の3点である。ソフトウェア、コンピューティング、ネットワークの3つの技術にしっかり取り組んでいる企業は珍しい。富士通は、高い価値を提供できる」と切り出した。

富士通のテクノロジー戦略

 「Fujitsu Kozuchi」については、「エンタープライズ向けに業務の中核を任せられるAI Platformである」と定義。5つの技術から強みをアピールした。

 ひとつめは、業務データから自動生成でき、自己進化する高信頼性AIエージェント「Multi AI Agent Framework」である。「自動的にAIエージェントを生成し、環境変化に対応できる点が特徴となる。AIエージェントの回答正解率は85%となっており、フロンティアAIに比べても高い精度を実現している」とした。

 2つめは、業務特化LLMを自動生成し、軽量かつ高精度に運用可能にするエンタープライズ生成AI「Takane」である。100億~300億パラメータの自社開発モデルを用意しているほか、Cohereとの連携による2000億パラメータのソブリンモデル、Nemotronによる5000億パラメータの大規模LLMを用意し、さまざまな顧客への対応を実現している。1bit量子化技術の採用により、89%の精度を維持しながら、94%の軽量化を実現することにも成功している。

 3つめは、数枚の画像から、専門家が不要で、ビジョンワークフローの生成が可能なソブリン対応画像認識AI「Amalgamation AI for Vision」だ。品質管理、設備点検、検品などの領域で利用されており、検査要件の変更に伴う検証およびチューニングが2分以内に行えるという特徴を持つ。ここにきて、ソブリン性が求められる防衛、医療、製造でのニーズが高まっているという。

 4つめは、Fujitsu Kozuchi Physical AIである。オープンな協調制御とタスクを実行する基盤であり、Physical OSを通じて、業務アプリとロボット、ドローンの連携を支えるという。環境変化に追随できる長期および短期の記憶と、現場適用技術を提供。ロボット同士の連携にも貢献するという。この分野では、ファナック、安川電機、川崎重工業との協業を発表している。

 すでに、石川県かほく市の富士通笠島工場においてカスタマゼロの取り組みとして導入。Kozuchiが持つデジタルツイン技術やFujitsu Kozuchi Physical OS、協業ベンダーの技術を用いて、製造計画の自律生成、ロボット前提の製造ライフサイクル設計、高精度組立作業の自動化、最適自律搬送に取り組んでいるという。

 5つめが、Security for AIである。フロンティアモデルの脆弱性を発見する高精度スキャナーである「AIスキャナー」、高い攻撃耐性を実現する「AIガードレール」で構成。「情報窃取に強く、特に日本語環境での攻撃耐性が高い。フィジカルAIのためのセキュリティである」と位置づけた。

 Fujitsu Kozuchiでは、2030年度には売上高5000億円、2035年度には売上高1兆5000億円を目指しており、Fujitsu Kozuchi Physical AIでは、2030年度に1500億円、2035年度に7500億円を計画している。Fujitsu Kozuchiは、新たなビジネス創出を中心に事業拡大を目指す考えで、製造、金融、行政、ヘルスケア、防衛などをターゲットにする。

AI Platform「Fujitsu Kozuchi」

 Computing for AIでは、FUJITSU-MONAKAへの取り組みを挙げた。

 高性能と省電力性を両立し、AI向けに機能を追求したMade in JapanのCPUで、世界初の2nmプロセスで生産。2026年11月から販売を開始することを発表したところだ。

 「Agentic AI時代への移行とともに、計算基盤ニーズが変化し、GPUだけでなく、高性能で、高い汎用性を持ったCPUの需要が拡大することが見込まれている。また、エッジ環境における推論のニーズの拡大、ソブリン環境でAgentic AI計算基盤を実現したいというニーズもある。FUJITSU-MONAKAは、いいタイミングで販売を開始できる」と述べた。

 FUJITSU-MONAKAは、CPU単体をグローバルに販売。米国および欧州では、他社がサーバーに搭載してビジネスを行う。日本および欧州では、富士通自らがFujitsu MONAKA Serverを販売。AIおよびHPC需要に応えるため、水冷および空冷を含めて3タイプのサーバーを投入する。生産は笠島工場で行う。

 FUJITSU-MONAKAは、2027年度には売上高350億円を計画。2027年度から2030年度までの累計売上高で2500億円、2035年度には売上高5000億円を目指す。また、Fujitsu MONAKA Serverは、2027年度から2030年度までの累計で6万台の出荷を目指す。

 マハジャン副社長 CTOは、「個人的にはコンサバティブな数字だと思っている。特に、日本やドイツの企業などからの関心が高く、10月までに60台のFujitsu MONAKA Serverを先行出荷する」とした。なお、x86サーバーであるPRIMERGYシリーズは、年間8万台の販売実績があることも示した。

FUJITSU-MONAKA ビジネス

 次世代スパコンである富岳NEXTへの搭載が決定しているFUJITSU-MONAKA-Xについても言及。2029年下期にCPU単独モデルを出荷し、2030年下期にはCPU+NPUモデルを出荷する。

 「Made-in-Japanによる最先端CPUと、AI推論機能を強化したNPUにより、高電力効率のソブリンAI基盤を提供することになる。AI時代における最高のチップであり、大きなポテンシャルを感じている」と語った。

FUJITSU-MONAKA-X

 量子コンピュータでは、2026年12月に、世界初となる1024量子ビットの超伝導型量子コンピュータを稼働させること、ダイヤモンドスピン型量子コンピュータや、中性原子型量子コンピュータに取り組んでいることに加えて、量子アプリ開発ソフトウェアのOSS化を進めていること、誤り耐性量子計算技術であるSTAR アーキテクチャー ver. 3を発表したこと、古典コンピューティングと量子を融合可能なハイブリッド実行基盤を構築していることなどを強調。2030年度の売上高で500億円、2035年度には売上高3000億円を目指す計画を示した。

 2030年までに1万量子ビット/250論理ビットの量子コンピュータを開発し、2035年には1000量子ビットの量子コンピュータを開発することにもあらためて触れた。

富士通の量子コンピュータ

 Network for AIの取り組みでは、「今まではキャリアを中心としたネットワークビジネスであったが、今後は、データセンターを対象にしたネットワークビジネスを推進することになる」と語り、拡大するAI推論需要を支える分散データセンターに必須となる独自技術を開発する姿勢を見せた。

 具体的には、Photonic System Network Interface Cardである「1FINITY-NIC」を2026年10月末にリリースする予定であり、RDMA方式でのデータセンター間通信(スケールアクロス)を実現し、10kmを超える光伝送距離でも高スループット維持できるという。PoCでは、20km離れたデータセンター間の推論データの転送時間を20分の1以下に短縮した。

 また、モバイルシステム「1FINITY AI-native RAN」では、AIとRANの融合技術でAIインフラ実装を実現するという。1FINITY-NICと1FINITY AI-native RANをあわせて、2030年度には売上高1200億円を計画。2035年度には売上高3000億円を目指す。

Network for AI

 さらに、富士通が安全保障を支えるテクノロジーに取り組んでいることにも触れ、世界トップレベルの高感度/高精細センサーを国産で実現する「次世代赤外線センサー」、量子コンピュータ時代の防衛機密通信を守る鍵配送システムに活用できる「耐量子計算機暗号鍵配送技術」、複雑な状況下における指揮官の迅速な意思決定をAIで支援する「意思決定支援マルチAIエージェント」、認知戦対処に向けて、偽情報分析サービスに活用できる「偽情報分析技術」を挙げた。

安全保障を支えるテクノロジー

モダナイゼーションの拡大とAIドリブンデリバリー変革

 富士通の島津めぐみ副社長 COO(サービスデリバリー担当)は、モダナイゼーションの取り組みについて説明。富士通製メインフレームで約250社、UNIXサーバーで約500社が、今後のモダナイゼーションの対象になることを示した。

富士通 執行役員副社長 COO(サービスデリバリー担当)の島津めぐみ氏

 モダナイゼーションの2025年度の売上高は3921億円、粗利率は40%を達成しており、2026年度は売上高4700億円、粗利率42%を見込んでいる。

 「ITモダナイゼーション市場は、年平均成長率が10.2%となっており、大企業および中堅企業の80%が依然としてレガシーシステムを保有している。富士通は、モダナイゼーション市場において2025年度は2位のシェアだったが、2026年度は1位を目指す」とした。

モダナイゼーションの今

 同社では、モダナイゼーションの取り組みは、2028年度がピークになると見ているが、自社のレガシーモダナイゼーションで培ったナレッジやノウハウを活用して、他社製メインフレームやUNIXサーバーなどにも対象を拡大。2030年度には7000億円超の事業規模に拡大させる考えを示した。

 「市場シェアは30%超を狙っていく。また2035年度に向けては、AIを活用するための基盤へとシフトするためのモダナイゼーションが増加するだろう。モダナイゼーションの形を進化させていく」と語った。

モダナイゼーション 今後の展望

 また、デリバリー変革についても触れた。

 「富士通は、年間2000億円に相当する2%の粗利率向上を毎年続けており、これを今後も継続していくことを目標にしている。それを実現するためにAIドリブンデリバリーを推進する」と述べた。

 これまでに16社のSE会社を統合したほか、従来の2倍となる10万人月分のオフショア活用、標準化や自動化を徹底することで粗利率を引き上げてきたが、今後は、AIドリブンデリバリーの推進と、新たなバリュープライシングによる収益構造の変革を進めることになるという。

 AIドリブンデリバリーは、AIを活用することで、デリバリーの工期短縮と品質向上を実現し、顧客のビジネス機会創出に寄与することを目指している。

 レベル1では生成AIプロンプト対話型開発を推進。レベル2ではAIエージェントを活用した開発を進め、各工程に特化したAIエージェントが自動実行し、工程間は人が確認、判断することになる。そして、レベル3では、マルチAIエージェントにより、複数工程を自動実行することになる。レベル3では、開発生産性を100倍に高めることができるという。

AIドリブンデリバリーへの変革

 「富士通は、業種知見やマネジメント知見を加えたデリバリー用AIエージェントを開発できる強みがある。また、社内にはAIの有識者が多く、プロジェクトの実践にも配置できる。さらに、自社LLMであるTakaneを保有しており、現場のリクエストを反映しやすく、フロンティアAIも活用できる。トークン利用量とモデル選択を最適化する制御技術を自社開発している点も強みである。レベル1からレベル3までの違いはあるものの、すべてのお客さまでAIドリブンデリバリーを導入している。裾野拡大は完了しており、今後は深化を目指すことになる」などとした。2030年度には、レベル2で50%、レベル3で30%の利用を想定している。

業種別デマンドの拡大とバリュープライシング戦略への転換

 富士通の大西俊介副社長 CROは、マーケットデマンドの動向と、プライシング戦略について説明した。

富士通 執行役員副社長 CROの大西俊介氏

 「富士通は、製造、流通、金融、公共、防衛の主要5業種で、国内IT市場を上回る成長を遂げている。特に、金融と公共では大きく勝ち越しており、市場優位性を確固たるものにしている。また2025年度は、Uvance Wayfindersを通じたコンサルリードによって後続商談受注が伸長するとともに、大型デリバリーの受注にも波及し、全社の受注拡大を牽引している。経営課題にミートした収益性の高い案件を獲得している」とし、2025年度には300億円だったコンサルリードによる受注額は、2026年度には600億円に倍増。2030年度には6500億円にまで大きく拡大すると想定している。

コンサルティング事業の触媒効果

 すでに、金融分野向けの「Uvance for Finance」や、小売分野向けの「Uvance for Retail」が2倍規模で成長。さらに業種を問わずにSovereign Platformに対する需要が増加しており、「Fujitsu Cloud Service powered by Oracle Alloy」は5倍の成長を遂げているという。

 商談パイプラインについても公開。公共分野におけるデジタルツインでは前年比351%、製造分野のフィジカルAIでは同304%、流通分野のモダナイゼーションでは同221%など、高い伸びを見せている。

 「公共では、災害対策やインフラ老朽化、高齢化といった課題に対してデジタルツインでシミュレーションし、オペレーションを変えていく取り組みが見られている。製造分野では、次世代工場のロードマップのなかに、フィジカルAIを組み込むといった商談が増えている。中期事業計画に掲げた成長領域においても、先行商談や新たなユースケース創出が進展している」と述べた。

業種別デマンドの変化が生み出すパイプライン拡大

 また、AI領域においては、中央省庁で30年以上続いた他社製大型ミッションクリティカルシステム商談をリプレースしたり、金融分野では、一度、他社にリプレースとなった顧客接点基盤を、プロジェクト難航をきっかけに生成AIによる開発効率化と業務高度化の提案により再獲得に成功したり、といった事例を紹介した。

 「AIをコアとしたテクノロジードリブンビジネスが、商談獲得につながっている。Sovereign AIを実現するエンドトゥエンドの提供能力が富士通の強みになっている」と自己評価した。

AI市場で選ばれた商談事例

 さらに、AIビジネスの継続的な拡大に向けて、Wayfindersが顧客課題と成長機会を発見し、FDEが迅速な実装と価値検証を担い、その知見を製品へ還元する成長サイクルを構築しており、「最も重要なのは、デプロイメント・ストラテジストが顧客の経営課題をしっかりととらえる力である。そこから前線配置エンジニアであるFDEと連携し、KozuchiやTakaneなどのプロダクト開発チームに還流する仕組みを作り上げることで、富士通の強みを発揮できる」と述べた。

 プライシング戦略については、これまでは、多くのITサービスが、開発費や工数をもとに価格を決定してきたが、この仕組みでは、AI時代に求められる提供価値や事業成果の経済価値を十分に価格へ反映できず、コスト積算型プライシングには限界があることを指摘。

 「バリュープライシングは、スピード、事業貢献、持続可能性の価値を反映することで実現できる。プロフェッショナルサービスは、提供するサービスが生み出す成果に対して課金するアウトカムベースで、SaaSによるアプリケーションやAIプラットフォーム、ソブリンプラットフォームは、提供するサービスの利用量に応じて課金するユーセージベースを適用することを考えている」とした。

AIが創出する価値を成長につなげるプライシング変革

 アウトカムベースの課金では、システムやAIが生み出す価値を分配する「プロフィットシェア」、AI適用による納期短縮による効果を提供価値とする「エクスプレスサービス」、固定部分と成果KPIに連動する料金を組み合わせた「ハイブリッド課金」、事前定義されたユースケースと期間を基準にした「ユースケース課金(Pod型)」に分類。AIやシステムが創出する顧客成果を経済価値としてとらえ、導入効果やKPI達成、期間短縮などに連動した価格モデルへと転換するとした。

アウトカムベース 成果を収益化する

 また、ユーセージベースでは、ソフトウェア資産コード数に応じた「ソースコード課金」、AIエージェントが扱った業務データ量に応じた「データ量課金」、契約成立数に応じた「レベニューシェア」、LLM動作に必要なコンピューティングリソース量に応じた「段階別従量課金」、コンピューティングリソース削減量に応じた「削減量課金」があり、これによって、顧客の利用量増加に応じて収益が拡大するモデルへ転換し、AIプラットフォームの普及とともに継続的な成長を実現する考えを示した。

ユーセージベース 利用拡大を収益化する

 富士通では、新たなプライシングモデルを推進するための組織として、2026年7月にAI Pricing CoEを立ち上げたことを紹介。業種Enablement Teamと連携しながら、顧客対話と実践を重ねるとともに、継続的なフィードバックを通じて、新たな価格モデルへの変革を推進するという。

エクスプレスサービス実現に向けたチャレンジ

 富士通全体では、2025年度には20%だったバリュープライシング比率を、2030年度には60%に高め、粗利率の押し上げ効果として3%以上を想定。2035年度には80%に高め、粗利率の押し上げ効果で5%以上を見込んでいる。

 大西副社長 CROは、「従来型SI、モダナイゼーション、Uvanceのそれぞれの提供価値に応じたバリュープライシングを適用し、売上成長と収益性向上を両立する収益モデルへの転換を推進する」と述べ、従来型SIでは、バリュープライシング比率を2030年に30%とし、2035年には40%に拡大。モダナイゼーションでは、2030年には50%として、2035年には60%に拡大する。また、Uvanceに関しては、2030年には70%にまで高め、さらに2035年には90%にまで引き上げる。

バリュープライシングによる成長加速と収益構造変革

 「バリュープライシングは、利益率改善型とスケール拡大型がある。利益率改善による収益拡大と、売上成長による収益拡大の両面から企業価値向上に貢献する。積算型というITベンダーの視点ではなく、顧客と納得性を醸成しながらバリュープライシング化を図る」と述べた。