「もはやロードバランサーの会社ではない」~F5ネットワークス アリイ・ヒロシ社長


 クラウド・コンピューティングの進展、仮想化の動きが広がるなかで、ネットワークの重要性はますます高まっている。その一方で、急速な勢いで拡大するトラフィック量や、新たな脅威への柔軟な対応、マルチデバイス化を背景にしたセキュリティ対策の変化、災害対策をはじめとするBCP(事業継続計画)への関心の高まりなど、企業を取り巻くネットワーク環境は大きく変わりつつある。

 F5ネットワークスの主力製品のひとつである「BIG-IP」も、ロードバランサーから、アプリケーション・デリバリ・コントローラ(ADC)へと進化。クラウド・コンピューティングの世界を支える重要な役割を担い、多くのユーザー、パートナーから注目を集めている。

 F5ネットワークスジャパンのアリイ・ヒロシ社長に、同社のネットワーク製品戦略について、また、それに伴って同社が提案する新たなセキュリティ強化への取り組みについて聞いた。

 

2011年度の売上高は前年比31%増、日本でも同水準を達成

――F5 Networksの業績が好調ですね。

F5ネットワークスジャパン株式会社 代表取締役社長 アリイ・ヒロシ氏

アリイ社長:F5 Networks本社は、2011年度実績(2010年10月~2011年9月)で、前年比31%増の11億5000万ドルの売上高を達成しました。また、2012年度第1四半期も、前年同期比19.9%増となる3億2240万ドルの売上高を達成しています。

 F5 Networksは、ADCにおいてはリーダーであり、フォーチュン500社の多くの企業に当社製品が導入されています。2011年に達成した11億ドルを超える売上高は、10億ドルを突破し、将来の20億ドルに対するしてどう向かうか、ということを前向きに考える大きなマイルストーンだったといえます。

 また、日本においても、当社の製品に対する関心が集まっており、グローバルと同じ水準の高い成長を遂げています。2011年は、東日本大震災以降、ネットワークおよびITシステムに対するデマンドが大きく変化しました。データベースの統合や見直し、ディザスタリカバリやBCPへの関心の高まり、スマートフォンなどの新たなデバイスの活用が注目されるなか、F5ネットワークスの製品の特性が理解され、それが結果として、お客さまをお手伝いすることにつながった。F5ネットワークスとしても、そのあたりの優位性をメッセージとして強く訴求する形へと変化しています。

 

ロードバランサーの会社からADC市場を作る会社へ

――この1年をみても、F5ネットワークスは、アプリケーション・デリバリ・ネットワークの強化、セキュリティへの取り組みなど大きな変化があります。いまF5ネットワークスはどういった方向に向かおうとしているのでしょうか。

基幹製品であるBIG-IP(写真はBIG-IP 11050)

アリイ社長:確かに、2010年まではBIG-IPによるロードバランサーを提供する会社だと見られていたと思います。

 しかし、2011年に入ってレイヤー4-7の領域である、アプリケーション・デリバリ・コントロール(ADC)の市場を、パートナーとともに作りだし、そこに特化した製品を提供できる会社であるということをより強力に打ち出してきました。

 パートナーやエンドユーザーへのメッセージもそこが中心になっていますし、この分野では、44%以上のマーケットシェアを獲得しており、実績も出ています。ITアナリストからも、「F5ネットワークスは、ADC市場においてもナンバーワンである」という評価をいただいています。

 そして、BIG-IP v11の投入により、その地位をより強固なものにできたと考えています。F5ネットワークスは、アプリケーション・デリバリ・ネットワーク分野において、グローバルリーダーとして、Webビジネスに携わるあらゆる企業とユーザーに対し、最もパワフルな製品とサービスを提供し、セキュアで、かつ柔軟、そして低コストに最適化されたIT環境、アクセス環境を構築するために不可欠なソリューションを提供することで、ユーザーの課題を解決してきました。

 

セキュリティビジネスへ本格的に参入

 先ごろ、BIG-IPが、セキュリティ製品の試験・認証を行うICSA Labsから、ネットワークファイアウォールとしての認証を取得しました。これにより、F5ネットワークスジャパンは、BIG-IPによるネットワークファイアウォールのビジネスに本格的に参入することになります。

 従来のセキュリティソリューションでは、ネットワークファイアウォールや、DDoS対策アプライアンス、DNSセキュリティアプライアンス、Webアプリケーションファイアウォール(WAF)、アプリケーション・デリバリ・コントローラというように、それぞれのポイントごとにセキュリティ製品を配置していましたが、これでは、管理が複雑になり、しかも、ネットワークの遅延や特定ポイントにおける脆弱性が発生する原因にもなります。

 また、分散化したセキュリティ対策であるため、多様なサイバー攻撃に対応できないという課題もある。セキュリティを、ひとつのソリューションで管理できるメリットは極めて大きいといえます。個別だった保守体制も改善でき、パートナーにおいても、さまざまなソリューションを提案するのではなく、ひとつのソリューションで提案することの強みが発揮できるようになる。

 一方で、エンドユーザーのこれまでのセキュリティ投資を分析すると、約90%がネットワーク層への投資であり、75%を占めているアプリケーション層への攻撃に対して、有効な防御にはなりえていないという問題が表面化しています。つまり、これまでのネットワークファイアウォールやIDS/IPSは、Webアプリケーションのセキュリティホールを突いた攻撃にはまったく無力であり、企業は誤った投資を行っていたともいえます。

 F5ネットワークスが提供するセキュリティソリューションは、アプリケーション視点のユニファイド・セキュリティ・コントロールといえるものであり、セキュリティにおける抜本的な課題を解決できるものとなります。

 これまでは、BIG-IPやSSL-VPN、セキュリティなどに製品が個別に分かれていましたが、これらがひとつに統合化し、プラットフォーム化を進めることに、われわれのソリューションの強みがある。そうしなければリーダーシップがとれないと考えています。

 そして、われわれは、マーケットシェアのリーダーシップだけでなく、製品のR&Dによるスケーラビリティを高めながら、機能を強化していく。特にセキュリティはこの1~2年のなかでは積極的に投資をして、セキュリティソリューションとして品ぞろえをしていくことになります。

――BIG-IPについても、「ロードバランサーではない」というメッセージを、昨年から強力に打ち出していますね。

アリイ社長:BIG-IPでは、30種類以上のDDoS攻撃に対応していますが、これは他社にはないものです。今後、この分野の強化にはますます力を入れていく考えで、今後、サービスプロバイダーや通信事業者、モバイル業界向けの機能強化も図る計画も明らかにしています。

 社内では、もはやF5ネットワークスは、ハードウェアの会社ではないという言い方をしているんです。もちろん提供形態はアプライアンスというハードウェアであり、お客さまにも、それを導入していただいていますが、アプライアンスを構成する重要な役割を担っているのは、セキュリティソリューションや、ソフトウェアモジュールであり、これが差別化になっている。データのトラフィックをどう管理するか、どうセキュリティを高めるか、という提案は、すべてソフトウェアモジュールによるものです。

 F5ネットワークスは、決算上の売り上げではハードウェアの会社ですが、実態は、ソフトウェアの会社だと言い切ることができます。

 

F5ネットワークスに求められるのはセキュリティ

――いま、F5ネットワークスに求められているものはなんでしょうか。

アリイ社長:やはりセキュリティだと思います。いままでは、ひとつひとつのソリューションをサイロ型で当てはめたポイントソリューションでしたが、これではもはや限界が生じている。アプリケーション・デリバリ・ネットワークというひとつのプラットフォームで、セキュリティソリューションを提案することが求められているのです。

 とはいえ、まだ、このことに気が付いていないお客さまも少なくありません。お客さまのなかには、われわれのメッセージに触れて、初めて「なるほど、こういうアプローチの仕方があるんですね」と高い関心を寄せていただくケースもあります。これによって、セキュリティにおけるトランスフォーメーションが可能になるのです。

 われわれは、F5ネットワークスのセキュリティソリューションを活用することで、どれだけのコスト削減が可能なのか、どれだけ迅速に対応できるのか、そしてなにが変わるのかといったことをより明確なメッセージとして出していく必要があります。まだまだ、F5ネットワークスは、ロードバランサーの会社だと思われている部分がありますから、新たなメッセージを伝えなくてはならないですね。

 F5ネットワークスの強みのひとつに、DevCentralの存在があります。これは、F5ネットワークスのオンラインコミュニティであり、全世界9万人以上のアプリケーション開発者、ネットワーク技術者、企業の情報システム部門のITプロフェッショナルなどが参加しています。

 オープン環境のなかで、実用性の高いソリューションが日々投稿されており、さまざまな立場のBIG-IPユーザーに対して、多くの技術情報も公開しています。オラクルやSAPに対応した20個以上のフレームワークツールも自由に利用することができます。

 ここから提供されるイノベーションを、お客さま自身が知り、学習していただき、さらにその成果を再びインプットしていただくことで、よりよい循環が生まれることになります。DevCentralの有効性についても、もっと情報を出していきたいですね。

 

「クラウドの流れのど真ん中」にいる強み

――クラウド・コンピューティングの世界が広がるなかで、F5ネットワークスの強みはどこにあると考えていますか。

アリイ社長:われわれはクラウドの流れのど真ん中にいます。データとアプリケーションを扱う専門家であり、クラウドに必要とされる製品とソリューションを提供しているのが、F5ネットワークスです。

 いまや、あらゆる人が端末を持ち歩き、ソーシャルメディアなどを通じて、写真、動画などをアップロードし、これまで想像していないようなユーザー層にまでクラウドの活用が広がっている。これをどう管理するのか、どうセキュリティをかけるのか、どのデータを優先するのか、どのデータで収益をとるのか、どのデータでコストを下げるか、といった課題に多くの企業が直面しています。こうしたレイヤー4-7の領域に対して、特化したソリューションを提供している企業はありません。われわれが一番ノウハウを持っている。まさにわれわれのスイートスポットだといえる部分です。それを活用して、フォーチュン500社のお客さまが競争力を高めている。

 日本のお客さまにも、ぜひF5ネットワークスのソリューションを活用していただき、コストメリットやパフォーマンスを高め、そして、お客さまのお客さまに対するサービスレベルを高めていただきたい。企業の競争力を高めるツールとしてお役に立ちたいと考えています。

――シャーシ型アプリケーション・デリバリ・コントローラであるVIPRIONは今後どんな進化を遂げますか。

シャーシ型アプリケーション・デリバリ・コントローラのVIPRION

アリイ社長:クラウド・コンピューティングの広がりのなかで、スケーラビリティはますます重視されることになるでしょう。VIPRIONは、スケーラビリティを維持しながら、投資を加速する姿勢はこれからも変わりません。すでに、ボリュームに対応できる製品投入がロードマップのなかに入っており、これを次世代機として投入していく計画があります。パフォーマンスの強化、ハイエンド領域への展開が進むことになります。

――ファイルストレージ仮想化製品のARXの動きが、最近見えにくくなっていますが(笑)

アリイ社長:いえいえ、終わっている商品ではありませんよ(笑)。ストレージ部分の重要性が高くなるのは当然ですし、それにあわせて、グローバルネームスペースの導入による統合、管理に対する注目も高まっています。

 ここでは新たなバージョンが今年出てくることになります。ストレージベンダーや仮想化ベンダーとのジョイントセミナーの開催などといった取り組みも行っていますし、その成果が出てきています。

 

大変ユニークで勢いのある会社

――アリイ社長は2011年7月に、F5ネットワークスの社長に就任し、半年以上を経過しました。これまでいくつかの企業の経営に携わった経験から、F5ネットワークスのどんな点を特徴に感じていますか。

アリイ社長:大変ユニークな会社ですよ(笑)。例えば、私の上司はドイツ人であり、グローバル営業部門のトップがカナダ人。サポート部門のトップはイギリス人、エンジニアリング部門のヘッドがフランス人。そして、CEOがスコティッシュアメリカン。これだけでもユニークな会社であることがわかるでしょう。

 1996年に設立した会社であり、成長が著しく、勢いがある。2011年度も前年比31%という成長率を達成しましたが、いつもお客さまの方向を向き、常に改善するということに取り組んでいる。2600人の会社ですが、社内には、ベンチャーとしてのスピリットがあり、それでいながら研究開発投資には極めて積極的で、キャッシュも2000億円程度を有し、特許も80件程度を保有している。市場に提供する製品はしっかりとした技術に裏付けされたものとなっており、顧客満足度も高い水準にあります。どうやってお客さまのお役に立つかというDNAがある点も強く感じます。

 何にも増して、社員に対するトレーニングがしっかりしている点は特筆できます。私自身も、入社以来、マネジメントトレーニング、セールストレーニングなどいくつものトレーニングを受けています。営業部門のすべての社員が、約3時間のeラーニングによるセールストレーニングを受け、13時間にわたる技術的なトレーニングを受け、テストにパスしなくてはなりません。いま、この仕組みを日本語化して、パートナーにも展開しようとしています。

 そして、企業の成長においては、IT産業のプレイヤーだけを参考にはしていません。さまざまな業界をみながら、最高のセールスとはどんな人たちなのかということを研究し、それを取り入れようとしている。そのあたりは、ITの会社のなかでも異質だといえるのではないでしょうか。

 まぁ、ひとことでいえば、大変まじめで、そして楽しい会社ですよ(笑)。

――ウイークポイントに感じる部分はありますか。

アリイ社長:これだけのスピードで成長していると、どうしても、管理しきれていない部分が一部に出てきます。社員が急速なスピードで増加していますし、かなり速いスピードで突っ走っている。ですから、時には、「かわいいミス」も出てくることになります(笑)。しかし、ますますスピードは重視されるでしょう。環境の変化にあわせて、これまで以上に柔軟に変化していくつもりです。

――日本法人トップとして重視してきたことはどんな点ですか。

アリイ社長:チームワークですね。東日本大震災のあとに、スマートフォンに対する注目が集まったこと、ディザスタリカバリに対する関心が高まったことで、われわれの製品に対する注目度が急速に高まってきました。そうしたビジネスチャンスに対して、チームのコラボレーションによって、一緒にゴールを目指してきました。

 現在、組織を、通信、金融、エンタープライズ、政府・官公庁、パートナーというように切り分けています。これらの業界別組織が、パートナーと一緒になり、われわれのメッセージやソリューションを、エンドユーザーに対して、どう伝えていくかが重要な取り組みだといえます。また、中小企業市場に対しての取り組みや、地域営業体制の強化にも取り組み、西日本地域にも新たにマネージャーを採用し、地方展開できる地盤を作りました。チームワークを重視する一方で、組織の役割を明確にすることに、この半年間は取り組んできました。

 

重視するのは“顧客満足度”と“プロダクト”

――アリイ社長が重視している経営指標はなんですか。

アリイ社長:ひとつは、顧客満足度です。お客さまの評価をいかに高めるかを重視してきました。これは、グローバルでも重視している指標です。顧客満足度については、毎週のようにスコアを管理し、課題に対しては具体的にいつまでにそれを解決するのかといったことを明示し、それに対する評価も行っています。

 10点評価で9に近いレベルに近づくことを目標にし、現時点でも高い評価をいただいていますが、グローバルのなかで日本のお客さまは特に厳しいですから(笑)、さらに満足度を高める努力を、パートナーとともに展開していくつもりです。

 そして、2番目はプロダクト。お客さまが使えるプロダクトを、いかにソリューションとして提供できるかどうか。それに伴い、社内のトレーニングをどうするか、マーケティングメッセージをどうするか、パートナーに対するトレーニングや連携をどうするかといったことについて力を注いできました。

 BIG-IP v11についても早い段階から、パートナーに対するトレーニングを行いましたが、わずか3カ月ですべてのパートナーに対するトレーニングが終わりました。この背景には、パートナーの意欲が強く、参加率が高かったことがあげられます。多くのパートナーが、いちどきに集まっていただき、集中的にトレーニングを実施することができました。まさに、「前のめり」で、トレーニングに参加していただいています。その点ではパートナーとの関係が強固なものになっていることを感じることができます。

――パートナー戦略も重要なテーマですね。

アリイ社長:ご指摘のように、パートナー戦略は、F5ネットワークスの重要テーマのひとつです。これは今後も密にやらないといけない。

 インプリメンテーションや、ソリューションを提供するという点で、パートナーとの関係は不可欠です。全体のソリューションのなかで、パートナーがどうサポートするか。これは重要なカギになります。パートナーとのジョイント戦略も加速したい。

 また、日本におけるソリューションパートナーに加えて、グローバルパートナーとの連携も重要になります。ISVとのパートナーシップとしては、VMwareとのパートナーシップがあげられますが、ここでは、vSphereとの連携によって仮想化環境を最適化し、高いROIの実現と、アプリケーションとして最大限のパフォーマンスを達成できるという点などにおいて、大きな成果をあげています。

 VMwareとF5の連携により、オンデマンド・データセンターを実現するほか、VMwareのTechnology Alliance Partnerとして、仮想マシンの稼働率に基づいた動的なプロビジョニングなどの共同検証を日本国内で実施しています。

 また、オラクルとのグローバルパートナーシップも重要な取り組みになります。F5ネットワークスは、Oracle Certified Partnerであり、Oracle Partner Network(OPN)のメンバーとして、Oracle E-Business Suite、Oracle Application Server、Oracle Collaboration Suite、Oracle Enterprise Manager、Siebel、PeopleSoftとF5製品との相互運用性に関する資料を共同で作成。Oracle Database およびRAC におけるBIG-IPの導入によって、ミッションクリティカルなアプリケーションに対して、エンタープライズクラスのデータベース接続サービスを提供できます。

 さらに、マイクロソフトとの協業では、アプライアンスベンダーで、唯一、マイクロソフトのGlobal ISV Partner Programメンバーに参加し、製品リリース前から、製品の相互運用性検証などを共同で実施しています。マイクロソフトの製品環境でのF5製品の運用自動化を実現し、SharePoint Server、Outlook Web Access、Internet Information Service向けの専用テンプレートをBIG-IP WebAcceleratorに標準搭載し、開発コストを抑えて高速化することができます。マイクロソフトにとっても、パフォーマンスを最大に発揮するためにもBIG-IPが必要とされています。

 マイクロソフト、オラクル、VMwareとのパートナーシップについては、今年は力を入れていくことになります。

 また、こうしたグローバルパートナーとの協業強化は、これらの製品に強いパートナーとの連携強化にもつながります。オラクルに強いパートナー、マイクロソフトに強いパートナー、VMwareに強いパートナーと、F5ネットワークスのパートナーがどう組んでいくかということも新たな動きになると考えています。これに向けたワークショップや説明会も随時行っています。

 今年は、F5ネットワークスのパートナー戦略は、数を増やすよりも質を高めることを重視したい。パートナーの強みとF5ネットワークスの製品の強みをあわせ、マーケットに提案することを重視していきます。

 

2012年は大きなチャンスの1年

――2012年は、どんな1年になりますか。

アリイ社長:F5ネットワークスにとって、大きなチャンスの1年となります。クラウド・コンピューティングの導入が本格化し、お客さまも本格的にクラウド戦略を立てる段階にある。そのなかで、F5ネットワークスがお手伝いできる場面は大きく広がることになります。ぜひ、F5ネットワークスのリーチの幅を広げたい。

 また、パートナーとの連携で、地方や中小企業に対する提案、エンドユーザーに対するメッセージングの強化、VMware、オラクル、マイクロソフトの3社との連携強化に取り組んでいきます。多くの企業が、これだけ急速な勢いでのデータがスケーラブルになるとは予想はしていなかったと思います。

 そのため、この状況にどう対応したらいいのか、どうセキュリティ対策をすればいいのかといった課題に直面しています。ディザスタリカバリや、バックアップ体制の構築、リモートアクセスに対する要求も高まっています。ここに最適なソリューションを提供していきたい。

 2011年は、「レボリューション」という言葉を使いました。BIG-IP v11はまさにレボリューションを象徴する製品ですし、そして、セキュリティの面でも、いままでにはない、新たなアプローチを開始することができました。企業の競争力をどう高めるか、急速な勢いで拡大するデータ量にどう対応するか、データセンターのクラウド化、仮想化に対して、どんな提案ができるか。お客さま自身も変わらなくてはいけないと強く感じていますし、そうしたことがF5ネットワークスには求められている。

 2012年は、F5ネットワークスのレボリューションに加えて、お客さまのレボリューションも重要になってくるのではないでしょうか。

 社長就任時には75人体制でしたが、現在、100人体制にまで拡大しています。関西にも拠点を開設し、地方展開もさらに強化してきたいと考えています。今後の成長を考えますと、100人体制ではまだまだ足りません。日本における事業目標は、2012年は前年比40%以上の勢いでやっていくつもりですから、それにあわせて、営業、エンジニア、サポートといったすべての部門で人員の増加が必要です。

 そして、いままで以上にマーケティングメッセージ、パートナーに向けてのメッセージも出さなくてはならないですし、パートナー向けのトレーニングも強化し、パートナーのなかにもF5ネットワークスの製品、サービスを熟知したエンジニアを増やしていきたい。2011年11月から、日本語によるパートナー向けトレーニングを開始していますから、2012年度中には、900人以上のエンジニアをパートナー会社のなかで育成したいですね。

 これによって、パートナーのビジネスを加速することができる地盤が整うともいえます。F5ネットワークスはパートナーに対する投資もさらに加速していく考えです。それがエンドユーザーにとっても、安心してF5ネットワークスの製品を導入していただけることにつながると考えています。

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