「ソーシャルネットワークの普及にあわせて事業をスタート、salesforce.comに欠けた部分をカバーできる」~Radian 6 レブルンCEO
「Dreamforce 2011」にもRadian 6の看板が掲げられていた |
米salesforce.comが、2011年5月に買収を完了したソーシャルメディア解析ツールのRadian6は、salesforce.comが掲げる「ソーシャルエンタープライズ」の実現において不可欠な役割を果たすことになる。salesforce.comが提案するソーシャルエンタープライズでは、ソーシャルネットワークを利用することで、企業はより的確に顧客の声を聞くことができ、さらに効率的な顧客へのアプローチを可能にする次世代のエンタープライズシステムだとする。
米salesforce.comのマーク・ベニオフ会長兼CEOは、ソーシャルエンタープライズの実現には、「顧客プロファイルを対象としたソーシャルデータベースの構築」、「社員のソーシャルネットワークの構築」、「カスタマソーシャルネットワークとプロダクトソーシャルネットワークの構築」という3つのステップを踏む必要があるとし、3つめのステップとして、Radian 6の役割は極めて重要なツールになるとする。FacebookやTwitterなどのソーシャルネットワークでの数億件のやりとりを追跡できる特長を生かして、ソーシャルエンタープライズを支えることになる。
Radian 6のCEOであるマーセル・レブルン氏に話を聞いた。
■買収されて変わったことは?
――Radian 6がsalesforce.comに買収されたことで、なにが変わりましたか。
Radian 6 CEO兼salesforce.com 上級副社長のマーセル・レブルン氏 |
レブルン氏:Radian 6は、FacebookやTwitterというソーシャルネットワークの普及にあわせて、事業をスタートした会社であり、当社から、ソーシャルネットワークを、コマーシャルサービスとして利用するための使い方を追求してきました。
その点では、かつてのブログやRSSのロギングをする技術を持ち、それをコンシューマ領域で利用するといった企業とは生い立ちが大きく異なります。ソーシャルネットワークを軸にした、エンタープライズのための解析ツールを提案する企業です。
そして、ユニークなのは、Radian 6は、salesforce.comに買収されたあとも、ビジネスユニットとしてそのまま独立した形で残っているという点です。つまり、買収後も、変化をできるだけ最小限に抑えることができる体制が取られています。
Radian 6は、2008年に設立した若い会社ですが、独立した組織として展開していた時点から、前年比2倍、3倍という売り上げ成長があり、強い成長力を持っていました。その勢いをそのまま維持し、プラスにつなげることができる体制が確保されています。
一方で、統合後の変化といえるのは、salesforce.comとの相乗効果を発揮できること、そして、salesforce.comが掲げるソーシャルエンタープライズのビジョンにのっとって展開していくことができる、という点です。
――ソーシャルエンタープライズの考え方は、先ごろ、米サンフランシスコで開催したプライベートイベント「Dreamforce 2011」のベニオフ会長兼CEOの基調講演でも触れられましたし、そのなかでRadian 6を活用してどんなことができるのか、といった役割も紹介していましたね。
レブルン氏:ソーシャルエンタープライズによって、ソーシャルクラウド、サービスクラウド、セールスクラウドのすべてカスタマサービスとつながり、いくつものビジネスプロセスに対して、インパクトを与えることができる。Dreamforce 2011で紹介したRadian 6の活用事例としては、ディズニーが最適な例だといえるでしょう。
ディズニーでは、ディズニーランドのどんなアトラクションに人気が集まっているのか、その理由はなにかといったことをソーシャルネットワークから導き出し、カスタマサービスの向上に結びつけています。これも、Radian 6の解析技術によって実現されるものだといえます。
Dreamforce 2011の基調講演でデモが行われた、Radion 6を使用したディズニーでの利用例。ソーシャルネットワークからユーザーの反応を分析し、改善に生かしている |
■salesforce.comに欠けていた部分をカバーできる
――salesforce.comのビジネスに対するインパクトはどうなりますか。
レブルン氏:ソーシャルエンタープライズを実現すると、顧客とのつながり方が大きく変化してきます。その変化において、Radian 6は重要な役割を果たすことになります。Radian 6によって提供される技術は、顧客の話をよく聞き、それをもとに解析を行うというものです。
顧客との関係がソーシャルネットワークを通じて双方型となるのが、ソーシャルエンタープライズ。salesforce.comは、その実現のために、Radian 6およびHeroku、そして、Force.comの組み合わせにより、カスタマソーシャルネットワークとプロダクトソーシャルネットワークの構築のためのプラットフォームを提供し、そこでセールスやサービスのすべてをとりまとめ、カスタマとのコミュニケーションを円滑にしていくことになります。これまで、salesforce.comが提供していたサービスにおいて、欠如していた部分をカバーできる技術だといえます。
――5月にsalesforce.comに統合して以降、どんな成果があがっていますか。
レブルン氏:統合の成果には、すばらしいものがあります。統合前のRadian 6はリソースに限界がありましから、どうしても北米だけに限定したビジネスとなっていた。それがsalesforce.comのリソースを活用することで、8カ国以上に展開できるようになった。Radian 6の技術とはどんなものか、なにができるのかということについて聞きたいという人が増えています。そして、salesforce.comが築き上げている世界中の顧客のエグゼクティブレベルとの関係を活用するといった恩恵を統合のひとつの成果でしょう。
Radian 6の成長率は、これまで以上に加速していますし、顧客のエグゼクティブレベルとの会話も増加している。現在、フォーチュン100の半分以上の企業には、Radian 6の技術が提供されていますし、全世界で3000社の顧客が利用しています。
■日本での展開はもう少し先に
――気になるのは日本での展開がいつになるかですね(笑)。
レブルン氏:日本での展開は、まだ開始していませんし、具体的なアナウンスもしていません。しかし、ベニオフは日本が大好きですから(笑)、当然、日本での展開も視野に入れています。すでに、日本のユーザーからの引き合いも出ています。
製品ということでいえば、すでに日本語をサポートできるレベルにまで到達していますが、本格的に展開するには、もう少し準備が必要ですね。日本語をトラッキングする機能はありますが、ユーザーインターフェースの日本語化が必要になってきます。
また、課金方法についても、多くのユーザーからフィードバックを得ており、それにあわせて課金の仕組みをもっとシンプルなものに変えていく必要があると考えています。現在は、検索クエリー数に対して課金するという仕組みであるため、「利用している環境の変化に伴って、価格がバラつくのは困る」、「ある程度確定的な料金体系にしてほしい」という声が全世界のユーザーから出ています。ユーザーの満足度を得るためには、価格体系は大変重要だと思っていますから、ユーザーの声を反映した形で修正する方向で検討しています。
また、ユーザーの間からは、表示したグラフをカスタマイズしたいという声もありましたから、これに関しても、データ表示をカスタマイズできるツールを、アダプタ化して提供を開始しており、Excelなどを使った見せ方もできるようにしました。感情に近い言葉をどう判断するかといった改良も、今後はさらに進めていきます。こうした部分を含めながら、日本での展開を開始していきたいと考えています。
――日本での展開は、具体的にはいつになりますか?
レブルン氏:今年中には、日本において、社員の採用を開始する予定です。ただ、具体的な製品ロードマップの話をしたり、リリースはいつになるかというと、これは来年からになりますね。もう少し待っていてください。