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生誕25周年、World Wide Webが直面する危機

3つの問題

 Berners-Lee氏の「オンライン版マグナ・カルタ」は、Guardianを通じて明らかにした。同氏はWWWの「グローバルな憲法――権利憲章が必要だ」と述べ、現在のWWWの3つの問題を挙げている。すなわち、(1)政府の監視問題、(2)Webのバルカン化、(3)米国がガバナンスに与える影響だ。

 (1)の政府の監視問題は、2013年6月に内部告発で明らかになった米国家安全保障局(NSA)の「PRISM」プログラムや英国の政府通信本部(GCHQ)などの監視行為を指す。権利憲章ではプライバシー、言論の自由、責任のある匿名性についての原則を定めたいと考えているようだ。「われわれの権利は、すべての面においてどんどん侵害されており、それに慣れてしまっている。これは危険な状態だ。25周年という節目の年に、Webをわれわれの手に取り戻し、今後25年に向けて『WebWeWant』(われわれが目指すWeb)を定義することを呼びかけたい」とBerners-Lee氏は語る。

 (2)の「バルカン化」とは、インターネットが国や組織単位で分裂することで、やはりNSAの監視行為が明るみに出た後に浮上した問題だ。中国のように独自のルールを徹底したいために、政府がインターネットの囲い込みを行う国があるが、NSAのPRISM問題の後、米国からの保護を目的とした囲い込みに向けた動きがあちこちでみられるという。

 (3)のガバナンスに与える影響については、IPアドレス、ドメイン名などの標準化や管理を行う組織Internet Assigned Numbers Authority(IANA)との米国の契約を指摘する。インターネットのガバナンスに対する米国政府の関与はこれまでも問題視されてきたが、「米商務省との明示的な結びつきを取り除く作業がなかなか進まない。米国は、国単位ではないインターネットのようなものに対してグローバルな地位を持てないはずだ」とBerners-Lee氏は再提起する。

 RedditのAMAでBerners-Lee氏は、PRISMを内部告発したEdward Snowden氏を擁護し、「Snowdenは保護されるべきだ」と述べている。「完璧な政府システムは構築不可能で、このような政府が失敗をしたときに内部告発者が社会を救う可能性がある」。またCNNには、さらに噛み砕いて、「システムが崩壊するとき、内部告発者はほかの誰も知らないことを指摘して、われわれを救ってくれる。将来、このような内部告発者を国際条約と国際社会が尊重するようになればよいと考えている」と述べている。

(岡田陽子=Infostand)