「Google TV」登場へ Web企業からTVへの新たな挑戦


 「Google Phone」の次は「Google TV」――。Googleがハードを含むTVプラットフォームの提供に向けて大きく動き出したようだ。「ネットとテレビの融合」が叫ばれて久しいが、これまでのところあまり成功したとはいない。Googleはテレビを攻略できるのだろうか?

 今度の「Google TV」を最初に報じたのは3月17日付のNew York Times紙で、消息筋の情報として、Google、Intel、ソニーが共同でTVとSTB(セットトップボックス)の開発を進めていると伝えた。Googleの「Android」、Intelの「Atom」、ソニーのハードウェア設計を組み合わせるもので、Logitech Internationalがキーボード付きリモコンなど周辺機器を開発しているという。Google TVでは、Webブラウザの「Chrome」とTV向けインターフェイス技術を利用して、検索などのインターネットサービス、You TubeなどのWeb動画サービスも利用可能で、近く開発ツールがリリースされるとしている。

 これに先立つ3月8日には、Wall Street Journalが、Googleが衛星放送のDish Networkと最新のTV番組検索サービスのテストを行っていると伝えている。Googleのソフトウェアを搭載したSTBを利用して、衛星TVとWeb動画コンテンツの両方からキーボードを使って検索やパーソナライズが可能で、2009年から社内テストが行われているという。なお、GoogleとDish Networkは、Googleが2007年に参入したTV広告で既に提携関係にある。

 これらの情報から、GoogleがTV向けのメディアプラットフォーム構築を進めてきたことが浮かび上がってくる。さらに4月に入ると、関連すると見えられるいくつかの公式情報も発表となった。GoogleがTV分野制覇に向けた布石を打っていると考えていいだろう。

 1つは、Googleによる動画プラットフォームのEpisodicの買収(4月2日発表)だ。買収後の具体的な計画は公表していないが、コンテンツプロバイダーはEpisodic技術を利用してWeb、モバイル、IPTVなどさまざまな端末にコンテンツを配信でき、配信形態はオンデマンドとストリーミングの両方が可能という。You Tubeを補完するだけでなく、「IPTV対応」がGoogle TVプロジェクトとの関連を思わせる。

 もう1つは、People of Lavaというスウェーデン企業のAndroid搭載TV(4月5日発表)だ。You Tube、Google Mapsなどのアプリケーションを事前インストールして、「Lava App Store」からFacebookやTwitterなどのアプリケーションをダウンロードできるという。Google TVと直接関係があるのかどうかは定かでないのだが、AndroidのTV進出という意味で重要な意味を持つ。

 Googleが目標に掲げているのは「世界中の情報を整理して誰でもアクセス可能にする」ことだ。それには、あらゆる情報機器をネット対応にする必要がある。Androidはそのための戦略製品で、モバイル向けをうたってはいるが、当初から、ネットブックやタブレット、STBなどのネット家電にも搭載されると言及していた。

 だが、TVは、新しいカテゴリだったモバイルと比較すると確立された分野であり、ハードウェア側の対応から使い勝手までさまざまな障害にぶち当たった。コンピュータ業界のTV分野への挑戦は失敗の歴史だったといってもいい。

 GartnerのアナリストVan Baker氏はブログでGoogle TVに否定的な見解を述べている。New York Timesの報道を受けたコメントで、消費者はPCというWebサーフィンに最適な端末に満足していると指摘。「TVで、PCスタイルでWebにアクセスできるようにしても、消費者は魅力に感じない」「消費者は何度もこのアプローチを拒否してきた」という。

 だが、Androidのオープン性は、今後のGoogleの戦略において大きな差別化となりうる。People of LavaのようにTVメーカー側がAndroidを採用してWebを取り入れるアプローチも可能だ。Googleには検索、電子メール、地図などの人気サービスがあり、Android SDKではこれらアプリケーションと連携できるAPI機能が提供されている。

 また、スマートフォンのケースを考えれば、サードパーティの開発者がさまざまなアプリケーションを開発して、その中からテレビの使い方を一変させるキラーアプリケーションが登場する可能性もある。キラーとはいかなくても、Webサービスをうまく使いこなすためのアプリケーションが豊富に用意されれば、十分インパクトはあるだろう。Googleはここに賭けるのではないだろうか。

 一方、プラットフォームという意味ではAppleも同じ位置にある。iPhoneプラットフォームとAndroidプラットフォームが、モバイルでの戦いを、そのままテレビの戦いに拡大するという構図も見えてくる。さらに、そこには両社の広告プラットフォームが控えている。AppleとGoogleの戦いはWebをめぐるあらゆる場面に広がることになりそうだ。


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(岡田陽子=Infostand)
2010/4/12 09:00