Androidケータイの評判-対iPhone第1ラウンド



 うわさと期待が先行気味だったGoogleの携帯電話プラットフォーム「Android」を採用した実機がついに登場した。メディアでは、Android携帯第1号となるT-Mobile USAの「G1」の発表とファーストインプレッションの記事があふれている。AppleのiPhone 3Gのあとを追うかたちで、機能面でも似た部分が多い。いきおい、iPhoneと比較されることになるのだが、どうやらG1の方がちょっと分が悪そうだ。


 G1は、Windows Mobileスマートフォンで実績のある台湾のHTCが製造し、米国では10月22日に発売される。検索などGoogleのサービスを使いやすく組み込んであるほか、Wi-Fi通信に対応し、Amazon.comのMP3ストアと連携して音楽の購入もできる。iPhoneを意識したと思われる機能を搭載しており、先行するiPhoneをどれだけ追い上げるかに興味が集まっている。

 ハード面では、タッチ式液晶と、その下にミニサイズのQWERTYキーボードを搭載しているのが大きな特徴だが、その分、厚みが増している。ファーストインプレッション記事では、デザイン面でiPhoneのようなスマートさに欠けるという評価が多い。InformationWeekのGoogleブログでは、G1が、「大半のBlackBerryや、多くのWindows Mobile端末よりも大きい」「多くの機能を1台にまとめたのでなければ、ちょっと持ち歩こうという気になれない」としている。

 また「トップ10ケータイの失敗」というタイトルで、人気携帯電話10モデルをバッサリと切ったTG Dailyは「一見、すばらしいデバイスだが、よくみると、妥協と奇妙な選択が見え始める」としている。「プラスチック的外観と、その美的センス」と、ヘッドホンジャックが付いていないことが難点で、特にヘッドホンジャックの欠落は「クールな新型iPodにヘッドホンジャックを付けず、小さなモノラルスピーカーを付けるようなもの」と酷評している。ちなみにこの記事が挙げているiPhoneの「失敗」は、ユーザーの手でバッテリを交換できない点である。

 G1のよい点では、iPhoneを含む従来のスマートフォンにはなかった機能「コピー&ペースト」ができることを高く評価する声がある。Webページから検索することなどに配慮した機能と考えられるが、その意味は意外に大きく、BusinessWeekは「アプリケーションを分断していた壁を、開発者が打ち破る」ことになるとしている。

 料金面では、Wiredが、2年契約(両者とも条件)の総額で、iPhoneの2360ドルに対し、G1が1980ドルで380ドル安くなると計算。G1に軍配を上げている。


 全体として、「洗練されたiPhone」に比べて、「あか抜けないG1」という構図で、少々G1の分が悪い。だが、G1を含むAndroidプラットフォームの今後最大の推進力になるのがアプリケーションであるという点では、ほぼ皆、一致している。Current Analysisのモバイル・携帯電話アナリスト、Avi Greengart氏はBetaNewsに対し、オープンソースにフォーカスしているAndroidは、アプリケーション開発の将来性が期待できると述べている。

 そのアプリケーションだが、iPhoneとAndroidは、よく似た配布の仕組みを採用している。ともに開発者がアプリケーションを登録して、ユーザーの端末にダウンロードさせるというものだが、両者の運営は対照的なものになりそうだ。

 AppStoreでは、アプリケーションの登録には事前承認が必須だ。有料・無料は選べるが、有料アプリの場合、売り上げの30%をAppleに納めることになっている。これに対してAndroid Marketは、基本的にアプリ配布に制限は設けず、事前承認は不要。有料の場合の売り上げは全部開発者のものになるという。

 実はAppStoreでは最近、アプリケーション開発者との間の不協和音が伝えられている。Macworld.comによると、Podcastをダウンロード視聴する「Podcaster」や、複数のアカウントからGmailを表示する「MailWrangler」というアプリが事前承認を受けられず、それぞれの開発者が、取り扱いを不当に拒否されたと主張しているのだ。彼らはiTunesやiPhone内蔵メーラーと機能が競合するとの理由で閉め出されたとAppleを非難している。

 Appleは、悪意あるソフトウェアからユーザーを守るとの観点からアプリ登録を拒否するケースがあるとしていたが、今回の件では、公式のコメントは出していない。Macworld.comは、どういうアプリが拒否されるのかの基準を明確にすることが求められると指摘。さもなければ、iPhone開発者の離反を招く恐れもあるとしている。もしそうなると、ダメージは大きい。

 一方、Android Marketは一切管理なしという方向を目指すようだ。管理型のAppStoreと自由奔放型のAndroid Marketという形で、まさに「ストア」と「マーケット」の違いだ。だが、Android Marketが、売買されるアプリの管理にまったく手を出さないとすると、クオリティを確保できるのか、危険なアプリケーションを排除できるのか、といった懸念もつきまとう。

 この勝負、単にスマートフォン製品の人気争いというだけではなく、これからのアプリケーション開発のあり方を探る戦いになるかもしれない。

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(行宮翔太=Infostand)
2008/9/29 08:45