「iPhone」いよいよ発表? Appleの携帯電話参入をめぐるウワサ
「iPhone」をめぐる話が飛び交っている。米Apple Computerが開発中とされる携帯電話で、正式な名称ではないが、iMac、iPodに続く大型製品というわけだ。Apple自身は沈黙を守っているが、高い関心を呼んでおり、Macユーザーの間に限らず、うわさや憶測が盛んに飛び出している。2007年1月の「Macworld Conference&Expo」で披露されるとの見方が強い。
Appleが携帯電話市場に参入するという見方は以前からAppleウォッチャーの間にはあった。そして、いよいよ発表が迫っていると皆が考えるようになったのは読者参加型ニュースサイトのDiggの記事がきっかけだ。Diggの設立者、Kevin Rose氏が11月30日付のポッドキャスト「Diggnation」で、“信頼できる筋”からの情報としてiPhone情報を伝えたのである。
それによると、iPhoneは、GSM/W-CDMA方式を採用し、タッチスクリーン画面とスライド式キーボードを持つ携帯電話という。容量は4GBと8GBの2種類があり、電話と音楽再生それぞれにバッテリを持つため、どちらかがなくなってももう一方の機能は使えるのが特徴。発表は2007年1月で、価格は249ドル/449ドルという。
アナリストたちもiPhoneの盛り上げに一役買っている。まず今年9月、米eWeekが「iPhone発売はほぼ確実」としたPiper Jaffrayのリサーチノートを伝えた。それによるとAppleは2007年1月にiPhoneを発表する予定で、4~6カ月以内にiPhoneの製造プロセスを開始し、約1200万台を製造する計画だという。eWeekは11月には、今度はAmerican Technology Research(ART)のリサーチノートを取り上げ、2機種目のiPhoneがすでに開発中で、AppleのIM「iChat」を統合したものになると伝えている。
12月6日には、Apple情報専門サイトのApple Insiderが、Prudentialのリサーチノートを引用、iPhoneは小さな画面とクリックホイールというiPodに似た外観のストレートタイプのフォームファクタで、音楽機能を重視した携帯電話になると報じた。また、同日付の米Red Herring誌は、ほぼ同じ内容の予測をするBernstein Researchのリサーチノートをレポートしている。
ブログ界では、これらの情報を基に作成したiPhoneの予想画像も出回っている。既存の製品をもとに、「きっとこうなる」というデザインを作るのだが、なかなかそれらしいものが多いのに驚かされる。
これらの情報を裏付けるように見えるのが、11月30日に米特許商標庁が公開したAppleによる特許出願書だ。携帯型コンピュータデバイスに関するもので、無線通信機能付き、アンテナ内蔵、ディスプレイ内蔵、タッチパッドユーザーインターフェイスなどの言葉が並んでいる。
2001年に発表されて世界的な大ヒットとなった音楽プレーヤー「iPod」以来、AppleはiPodの各バージョン、Intelチップを採用したMacの発表などで話題を集めてきた。熱狂的なファンを持つ上、新製品情報を一切口外しないという巧みなマーケティングも、同社への関心を高める一因だろう。
Appleは今回も、iPhoneについて一切コメントしていない。だが、Reutersによると、AppleのCFO、Peter Oppenheimer氏は今年7月のアナリスト向け電話会議で次のようにコメントしたという。「現在の携帯電話が音楽プレーヤーとして最高のものだとはいえない。iPodは最高の音楽プレーヤーだが、時間が経つにつれて状況は変わるだろう。われわれとしても、何もせずに見守っていくわけではない」。
iPhoneが実現すれば、同社は携帯電話メーカーと競合することになる。携帯電話メーカー各社はiPod人気にあやかろうと、“音楽ケータイ”ラインを強化してきたところだ。
中でも、米国でトップ、世界でも第2位の携帯電話メーカー、米Motorolaの心境は複雑だろう。同社は2005年、Appleと組んでiTunes携帯電話「ROKR」を投入した経緯がある。ROKRは、評判は先行したものの実際の評価はいまいちのようで、販売台数でも大ヒットとはいいがたい。Appleは、ROKRで学んだ経験をiPhoneで生かすことになるだろう。
Appleは世界で6700万台のiPodを売った。デジタル音楽プレーヤーで圧倒的なシェアと評価を確立しているが、こうした人気が永遠に続くものではないことはApple自身が一番よく分かっているはずだ。
iPhoneは次なるヒット製品候補であるだけでなく、リビングを制覇するという戦略を持つAppleにとって重要な布石となる。Appleが予想通りiPhoneを提供するのであれば、自社のコアであるMacとどのように連携する仕組みを持たせるのかが気になるところだ。
まず新年の「Macworld Conference&Expo」に注目だ。