PDA出荷が過去最高? 増えているのか、減っているのか



 一時代をつくったPDAも、かつての勢いを失っているように見える。ソニーのように一定以上のシェアを持ちながら製品から撤退するメーカーも出ている。米IDCが先ごろ発表した調査結果によると、世界の総出荷台数は6四半期連続のマイナスを記録したという。そこへ、「PDAが過去最高の出荷になる」という調査結果を米Gartnerが発表した。IT業界の2大調査会社が正反対の見方を示したのだ。いったいPDAは増えているのか、減っているのか?


 IDCが7月26日発表した、2005年第2四半期のPDA(IDCは“ハンドヘルド”と総称)市場調査結果によると、PDA出荷台数は前年同期比20.8%減の170万台で、6四半期連続のマイナス成長を記録したという。

 一方、Gartnerが8月2日に発表した同じ期間の調査結果によると、総出荷台数は前年同期比32%増の320万台となる。さらに同社が示した今後の市場見通しでは、今年通年のPDA出荷台数は、2001年に樹立した最高記録1320万台を上回って1500万台に達するという。

 両社の集計がかけ離れているのは、それぞれPDAの定義が異なるためだ。両社とも、汎用OSを搭載して、PCとの同期機能を持っているものをPDAの条件とすることでは一致しているのだが、通話機能の扱いが大きく違っている。

 IDCは、データにアクセスすることを主な目的とし、無線通信機能を持ちながら通話機能を持たない携帯端末をPDAとしている。一方、Gartnerの定義は、通話機能を備え、重さ1ポンド(約450g)以下で、両手で使うことを想定し、利用用途はデータがメインで通話が最大の用途ではない端末となっている。このため、Gartnerの場合、スマートフォンに近い米PalmOneの「Treo 650」、カナダResearch In Motion(RIM)の「BlackBerry 7100」は含まず、同じRIMの「BlackBerry 7290」が含まれる。

 各社の分類に基づいたベンダー別シェアは、IDCがPalmOne(36.5%)、米Hewlett-Packard(18.4%)、台湾Acer(11.4%)、米Dell(10.2%)、独Yakumo(3.3%)。GartnerはRIM(23.2%)、PalmOne(17.8%)、HP(12.5%)、フィンランドNokia(7.6%)、独T-Mobile(5.9%)となっている。

 こうした両社の調査結果の違いは、同時にPDAの定義があいまいになりつつあるということを示すものだ。そして、その背景には、主としてインターネットを中心に技術の融合が進んでいるということがある。これは、ゲーム機や家電などの他のいくつかのカテゴリでもいえることである。

 PDAの場合、スケジュールやアドレスなど個人情報管理(PIM)機能を格納し、外出先で情報にアクセスする端末として発展してきた。このPDAに、通話のための携帯電話に汎用OSを搭載してデータアクセス機能を充実させてきたスマートフォンの流れが交わりつつある。これは、Gartnerのシェア順位に、携帯電話メーカーとして知られるNokia、キャリアであるT-Mobileの名前があることからもわかる。

 実際、Gartnerは2003年の調査結果では、「PDAはスマートフォンの影響を受け、減少している」と述べていた。その後、PDA端末に無線通信機能を取り込むというトレンドが生まれ、電子メールが人気を読んだRIMの成功を受け、昨年7月に発表した2004年第2四半期の市場結果の際には、「PDAは成長路線に戻った」としている。


 だが、このカテゴリを分類することは難しい。たとえば、通話機能を含まないとするIDCでは、インターネットで実現するVoIPで通話可能な端末はどうなるのだろう? 両手で操作というフォームファクタ、通話は第2の目的とするGartnerの定義も、皆が同意する分類指標とはいえなくなりそうだ。

 いずれにせよ、各PDAベンダーの人気製品をみると、今後、無線通信機能(GPSを含む)がPDAに不可欠な機能となることは間違いない。この点では両社の見解は一致している。とりわけ電子メール機能は必須となりそうだ。

 なお、PDAとスマートフォンを併せて“スマートモバイル端末”として統計値を出している英国の調査会社Canalysによると、第2四半期の出荷台数は1218万台。シェアのトップはNokia(54.9%)で以下、PalmOne(8.7%)、RIM(7.4%)と続いている。

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(岡田陽子=Infostand)
2005/8/22 08:45