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デル・テクノロジーズ、「Dell AI Data Platform」の機能強化を発表

 デル・テクノロジーズ株式会社は22日、「Dell AI Data Platform」の機能強化を発表した。これにより、分散してサイロ化されたデータを、より迅速に信頼性の高いAI成果に変えられるとしている。

 デル・テクノロジーズでは、AIの導入が急増し、データが増加するにつれて、組織は分散してサイロ化されたデータを実用的なインサイトに安全に変換できるプラットフォームを必要としていると説明。「Dell AI Factory」の重要なコンポーネントである「Dell AI Data Platform」は、散在するデータサイロから価値を創出するために、オープンなモジュール式基盤を提供し、データストレージを処理から切り離すことでボトルネックがなくなり、トレーニング、ファインチューニング、検索拡張生成(RAG)、推論などのAIワークロードに柔軟に対応できるとしている。

 また、NVIDIA AI Data Platformリファレンスデザインと統合されたDell AI Data Platformを支える4つの核となる構成要素として、スマートなデータ配置とシームレスなデータ移動を実現するストレージエンジン、データを実用的なインサイトに変えるデータエンジン、組み込み型のサイバーレジリエンシー、データの管理サービスを挙げ、これらを組み合わせることで、AIの可能性を最大限に引き出すためのスケーラブルで柔軟な基盤を構築できるとしている。

 Dell AI Data Platformのストレージエンジンである「Dell PowerScale」と「Dell ObjectScale」は、AIデータに不可欠なパフォーマンス、セキュリティ、マルチプロトコルアクセスを提供する。

 PowerScaleは、トレーニング、ファインチューニング、推論、RAGパイプラインなどのAIワークロードに、NASのシンプルさと並列パフォーマンスを提供する。PowerScaleは、新しいNVIDIA GB200とGB300 NVL72の統合と継続的なソフトウェアアップデートにより、信頼性の高いパフォーマンス、大規模環境でのシンプルな管理、アプリケーションやソリューションスタックとのシームレスな互換性を実現する。

 PowerScale F710は、高性能ストレージのNVIDIAクラウドパートナー(NCP)認定を取得しており、1万6000台以上のGPU規模環境において、競合製品と比較して最大5倍少ないラックスペース、88%少ないネットワークスイッチ、最大72%低い消費電力で運用できるとしている。

 オブジェクトプラットフォームのObjectScaleは、大規模なAIワークロード向けに、パフォーマンスが高くスケーラブルなS3ネイティブオブジェクトストレージを提供する。ObjectScaleはアプライアンスまたは「Dell PowerEdge」サーバーで利用可能な新しいソフトウェアデファインドオプションとして提供され、前世代のオールフラッシュオブジェクトストレージよりも最大8倍高速になる。今回の機能強化により、ObjectScaleの速度、拡張性、効率性が向上する。

 ObjectScaleのS3 over RDMAのサポートは、まもなくテクニカルプレビューに入る。従来のS3と比較して、スループットが最大230%向上、レイテンシーが80%低下、CPU使用率が98%低下する。

 また、機能強化により、大規模デプロイメントにおけるスモールオブジェクトのパフォーマンスと効率性が向上。10KBオブジェクトのスループットが最大19%向上し、レイテンシーが最大18%低下する。

 さらに、AWS S3とのより緊密な統合とバケットレベルの圧縮により、大量のデータを保存、移動、使用するためのより優れたツールを開発者やデータサイエンティストに提供する。

今回の機能強化では、「Dell AI Data Platform」にあるAIデータの整理、クエリ、活用のために特化されたツールであるデータエンジンも拡張している。

 Elasticと共同で開発された新しいデータ検索エンジンは、顧客が質問を投げかけるように自然な操作でデータにアクセスでき、迅速な意思決定を支援する。RAG、セマンティック検索、生成AIパイプラインなどのタスク向けに設計されており、MetaDataIQと呼ばれるデータディスカバリーソフトウェアと統合することで、PowerScaleやObjectScaleに保存された数十億件のファイルを詳細なメタデータをベースに検索できる。開発者は、LangChainなどのツールとこのエンジンを組み合わせることで、よりスマートなRAGアプリケーションを構築できる。また、更新されたファイルのみを取り込むことで、コンピューティング時間を節約し、ベクトルデータベースを最新の状態に保てる。

 Starburstと共同で開発したデータ分析エンジンにより、スプレッドシート、データベース、クラウドウェアハウス、レイクハウスにわたるシームレスなデータクエリが可能になる。新しく組み込まれた「Dell Data Analytics Engine Agentic Layer」は、大規模言語モデル(LLM)によるドキュメント自動化、インサイト抽出、AIのSQLワークフローへの組み込みを提供し、生データを数秒でビジネスレベルの製品に変換する。

 また、ベクトルストアへのアクセスも統合し、Iceberg、デル・テクノロジーズのData Search Engine、PostgreSQL+PGVectorなどにまたがるRAGや検索タスクにも対応する。エンタープライズグレードのAIモデルの監視とガバナンスは、AIの使用状況の追跡、監査、制御に役立つ。新しい「MCP Server for Dell Data Analytics Engine」により、マルチエージェントとAIアプリケーションの開発が可能になる。

 さらに、Dell AI Data PlatformとNVIDIA cuVSの統合は、エンタープライズ企業のAI環境におけるベクトル検索のパフォーマンスとターンキー型の導入において、大きな飛躍をもたらすとしている。この統合により、GPUアクセラレーションによるハイブリッド(キーワード+ベクトル)検索がデータ検索エンジンにもたらされ、オンプレミスでの完全な制御を維持しながら、より迅速かつ効率的なインサイトが得られる。NVIDIA cuVSとデル・テクノロジーズのセキュアなインフラストラクチャーを利用することで、ITチームは完全に統合されたターンキーソリューションを活用して、GPUを利用した検索をすぐに導入および拡張できるとしている。

 「Dell PowerScale NVIDIA GB200」「GB300 NVL72」の統合とNCP検証機能は、すでに提供を開始している。「Dell ObjectScale S3 over RDMA」は、2025年12月にテクニカルプレビューとして提供開始予定。「ObjectScale」ソフトウェアのアップデートは、2025年12月に提供開始予定。

 「Dell Data Analytics Engine Agentic Layer」の最初のリリースは、2026年2月に提供開始予定。「MCP Server for Dell Data Analytics Engine」は、2026年2月に発売予定。「Dell AI Data Platform」のデータ検索エンジンは、2026年上半期に提供開始予定。「Dell AI Data Platform」におけるNVIDIA cuVSの統合は、2026年上半期に提供開始予定。