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「Appleの助けは不要に」 Apple vs FBIの新展開

FBIの成功は、Appleには最悪のニュース

 この騒ぎで多くのセキュリティ企業やハッカーがiPhoneのロック解除に挑戦している。電話会議に参加した検事補は「世界中からFBIへの協力の申し出がある」と述べ、同時に「さまざまな原因で次々に失敗している」とも説明している。iPhoneのセキュリティ破りがこれほど大勢の目標になるのは、Appleにとってゆゆしき事態だ。誰かが成功する可能性は高まり、Appleにフィードバックが来ない恐れがある。

 New York Timesは、ほかのソフトウェアベンダーのような、バウンティ(報奨金)プログラムを用意していないことがAppleの弱点と指摘している。

 Google、Microsoft、Facebookなど多くのソフトウェア企業は、バグや脆弱性を発見した外部のプログラマーに報償金を支払っている。しかし、Appleは長い間、比較的強固なセキュリティを確保してきており、コードの弱点をカネで解決するやり方には参加しようとしなかった。バグの報告者はWebサイトに掲載され“名誉”を与えられるだけだ。セキュリティ専門家は、バグ発見と修正のやり方が大きく変わった現在、Appleはもっと違うやり方をとるべきだと主張している。

 またBGRは、FBIが独自の方法に成功すれば、4つの理由で、これはAppleにとって悪いニュースになるとまとめている。

 まず、独立系セキュリティ会社とハッカーが、iPhoneやほかのデバイスの安全機構をバイパスする方法を知ってしまった。そして当のAppleは、これを知らないということ。また、FBIは多くのセキュリティ専門家の予想とは異なる方法をテストしていることだ。

 BGRは、FBIが勝手にiPhoneをクラッキングしたことは、暗号化の将来にとって、必ずしも良いニュースではないとも言う。さらに懸念されるのは、FBIは、どうやってiPhoneの情報にアクセスしたかをAppleに説明しなくても済むだろう――ということだ。

 結果としてAppleは脆弱性を修正できず、一方ですべてのiPhoneのセキュリティを解除できる“マスターキー”が生まれてしまうかもしれない。Appleにもユーザーにも事態はもっと悪くなる。

 犯罪者も、捜査当局も、諜報機関も、喉から手が出るほど、マスターキーを欲しがっているのだ。

行宮翔太=Infostand