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コンテナ標準化プロジェクト発足 Dockerの転機

Dockerのビジネス生き残り戦略

 6月半ば、Dockerの身売りのうわさが流れた。名前が挙がった買い手は、またもMicrosoftだ。Fortuneは、MicrosoftがGoogleに対抗してAzureを強化するためにDockerを買収するのは考えられることで、Dockerの市場価値(少なくとも35億ドル超)で買い取るだけのキャッシュ(953億ドル)を持っていると指摘した。

 一方、Infoworldは、Azureを持つMicrosoftにとっては買収するほどのメリットはなく、買い手として可能性があるのはDockerプロジェクトにコントリビューターとして参加している企業のうち十分な現金を保有している社。例えば、GoogleやIBMだ、と主張した。

 この一連の報道は、Business Insiderが「Dockerは、いかなる金額であろうと、売却する意志は現在持っていない」と事情通の話として伝えて一応幕引きとなった。だが、こうした売却話がしばしば出て来るのには、オープンソース技術の企業が生き残っていくのが大変だという背景がある。

 Wall Street Journalは、DockerConを前に、Dockerとコンテナ技術を巡る動向を紹介し、同時にオープンソース企業のビジネスモデルの難しさを指摘した。「オープンソース・ソフトウェアのムーブメントは数十年になるが、基本的にオープンソースに基づく大型公開企業はRedHat1社しかない。ほかは皆、閉鎖したか、非オープンソース企業に飲み込まれてしまった」と述べている。

 今、Dockerが現在のポジションをどうビジネスに生かしていくかが注目される。

 Dockerは、DockerConで、SDN技術への対応や、新バージョンの1.7などを続けて発表したが、同社にとって最も重要なのは商用ソリューションの発売だろう。

 同社の最初の商用製品で、Docker Enginesや管理ツールに加え、Dockerコンテナイメージのデプロイのサポートなどを提供するサブスクリプションサービスだ。価格は月間150ドルからに抑え、直接販売だけでなく、AWS、IBM、Microsoftという超大型パートナーが再販を行う。

 The Registerによると、既に顧客の第1号として、米国政府機関のGSA(米国連邦政府一般調達局)が決まっているという。Dockerのプロダクトマネジメント・バイスプレジデントのScott Johnson氏が興奮気味に明かした。GSAは連邦政府の年間1兆ドル超の購買を担当しており、これらのすべての取引がDocker化した分散アプリケーションで処理されることになる、とJohnson氏は話している。ビジネスの海にこぎ出すDockerには、この上なく幸先のよい船出だろう。

行宮翔太=Infostand