Infostand海外ITトピックス

GoogleのNASA基地リース ネット企業のフロンティア「宇宙」

 Googleが米航空宇宙局(NASA)のモフェット連邦飛行場(カリフォルニア)を長期に借り入れる契約を結んだ。同社の先端プロジェクトの拠点として衛星インターネットの開発などを進める。期間は60年間で、Googleはリース料として11億6000万ドルを支払う。同時に管理運営も全面的にGoogleが行う。一方、時を同じくして電気自動車メーカーTesla Motorsの会長兼CEO、Elon Musk氏も衛星インターネット事業を進めていることが明らかになった。

NASAの施設が「Project X」の基地に

 モフェット飛行場は広さ約4平方キロメートルで、敷地内には3万2300平方メートルの巨大な格納庫「ハンガーワン(1)」がある。ハンガーワンは1930年代に米海軍が建造した飛行船「メイコン」などが利用した歴史的な格納庫だ。Googleは2億ドルを費やして、ハンガーワンなど3つある格納庫の修繕を行うほか、教育目的の施設や博物館の設立も予定しているという。GoogleとNASAの11月10日の発表によると、実際の契約はGoogleの子会社のPlanetary Venturesが締結した。

 立地はGoogleのマウンテンビュー本社から近くで、すでに幹部のプライベートジェットの基地として利用されている。Googleの発表では「宇宙探索、航空、ロボティクスやその他の新規分野の研究開発、アセンブリ、テストを行う」という。

 Googleは、研究開発部門である「Google X」の下で、ロボットや航空・宇宙関連の取り組みを進めている。このうち宇宙関連では、2013年に気球を使ったインターネットプロジェクト「Project Loon」を発表。また、月に探索車を送って月面で動かすことができた民間プロジェクトに賞金を払う「Lunar X Prize」を運用しているほか、今年4月には太陽光で飛行を続ける無人航空機を開発するTitan Aerospaceを買収した。ABC Newsは、Googleが買収時に大気圏衛星を利用してたくさんの人にインターネット接続を提供できる、と述べていたことを挙げ、この契約の目的ではないかと伝えている。

 一方で、この契約には、批判的な声も出ている。カリフォルニア州の消費者団体Consumer WatchdogのJohn Simpson氏は「国の施設を自分たちの拠点として利用することで、Googleは施設に対して大きなパワーを得ることになる」との声明を出した。NASAは年間630万ドルの費用削減になると試算しており、手つかずだったハンガーワンの修復が始まることにも期待を寄せる。だが、一方で、Googleが部分的にも国家級の力を持つことにもなることへの懸念もある。

(岡田陽子=Infostand)