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中国を制するネット3強 熾烈な戦いが金融分野へ (エスカレートする金融サービス合戦)

エスカレートする金融サービス合戦

 一方、Tencentは2011年に開始したオンライン決済サービス「Tenpay」を発展させており、今春から中国内でTenpayをWeChatから使えるようにした。WeChatのユーザーベースを考えると、Alibabaにとっても侮れない相手だ。

 このAlibaba対Tencentの戦いでは、ちょっとした“場外乱闘”が伝えられている。South China Morning Postによると、今月中旬に開かれたAlipay用アプリの新バージョン 「Alipay wallet version 7.6」の発表会で、Alibabaの幹部がTencentのサービスを、こきおろしたという。

 Alibabaのスモール・マイクロ・フィナンシャルサービス部門のFan Zhiming氏がインスタントメッセージを使ったトランザクションは安全を保証できない危なっかしいものだと決めつけ、「Wechatグループは、うさんくさい商品の販売場所になった」と揶揄した。

 これに対し、Tencent側も反応。「あなたが、敢然として(Tenpayで)支払うなら、私は、敢然として、これを補償すると答える」と、WechatやQQのサイトに掲示して、ユーザーに安心して使えることをアピールした。

 Baiduの新しい金融プラットフォームも、こうした騒ぎの中でローンチする。だが同社が掲げる「年利回り8%」には懐疑的な業界関係者も多い。Chinanews.comは「年間8%の利回りは、ほとんど不可能だ」との業界関係者のコメントを伝えている。戦いが過熱し、無茶なサービスを打ち出したように見える。

 こうした金融サービスラッシュの背景には、中国政府の政策がある。中国では経済成長が鈍化する中、既存資金を活性化することで経済成長を促す方針をとっている。李克強首相は、金利自由化や金融業界の開放を進めてゆくと明言しており、ネット企業も、この方針を受けて金融サービス事業に邁進しているのだ。だが、こうした急激な動きに、次のようにWall Street Journalは警告している。

 官営の銀行に支配され、保守的な規制に守られてきた部門にAlibabaやBaiduなどの民間企業が急拡大してゆくと、こうした部門でがっちり防護された権益からの逆襲を受けることもあるかもしれない――このように憂慮する者もいる。

行宮 翔太=Infostand