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35ドル端末がネットTVを変える? Googleの「Chromecast」 (Google=Chrome、マルチ画面戦略を支えるChrome)

Google=Chrome、マルチ画面戦略を支えるChrome

 では、Google全体の戦略からみると、Chromecastは何を意味するのだろう? GoogleでChromeとAndroid部隊を率いるSundar Pichai氏はNew York Timesに対し、Chromecastの狙いを「TVとモバイル端末のギャップを埋める」と説明した。小さな画面でしかオンラインのメディアを楽しめない現状を変える、と意欲を示している。

 Computerworldは、Googleの水平戦略におけるChromeの重要性を分析した。Googleの戦略は「全ての画面に存在すること」であり、これを実現する車輪となるのがChrome、という元Microsoft幹部のBen Thompson氏の見解を紹介する。IDCのアナリストAl Hilwa氏は今春、Chromecast発表前に、Googleは「Chrome OSとChromeブラウザを“プラットフォームの上のプラットフォーム”にしようとしている」と述べていたという。Android、iOS、Mac OS X、Windows、そしてテレビ、とさまざまな端末にChromeが載り、自社の広告事業を中心としたエコシステムに接続するという大きな図が描ける。

 広告事業で重要なのはデータだ。これまでGoogleはPC、スマートフォン、タブレットでユーザーが何を閲覧しているのかといった情報を収集してきた。だがChromecastを使ってテレビにも収集活動を拡大できる。そう考えると、Chromecastの35ドルという価格は、Amazonが「Kindle Fire」を安価に提供する戦略と同じとみることもできそうだ。また、現時点では対応するサードパーティのサービスが少ないという“欠点”も、ユーザーがChromeブラウザを利用すればGoogleのプライバシーポリシーの下でデータを収集できるという“長所”に変わってくる、とComputerworldは見る。

 ローンチに成功したChromecastだが、長期的成功が約束されているわけではない。テレビとインターネットの融合は、動画ストリーミングの登場とともにクローズアップされてきたが、ベンダーの鼻息にもかかわらず、進展は遅い。Chromecastの登場が加速の契機になるのだろうか――。

岡田陽子=Infostand