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CNAPPスタートアップを過去最大額230億ドルで GoogleのWiz買収報道

【記事更新 2024/07/23】
 Alphabetの230億ドルのWiz買収について7月22日、複数のメディアが交渉は決裂したと伝えた。Wall Street Journalによると、WizのCEO、Assaf Rappaport氏は同日、従業員に送った電子メールで「私たちはオファーを光栄に思うが、会社を成長させる道を選んだ」と述べ、IPOを目指す考えを明らかにした。


 Googleの親会社Alphabetが、230億ドルでセキュリティスタートアップのWizの買収交渉を進めている――。7月14日付のWall Street Journalが報じた。成立すれば同社にとって過去最大の巨額買収となる。Wizは、あまり耳慣れないが、急成長している「CNAPP(Cloud Native Application Protection Platform)」企業で、Googleのクラウド戦略に重要な意味を持つことになる。

創業4年でARRは3.5億ドル、評価額は120億ドル

 Wizは2020年、イスラエルで創業した。テルアビブとニューヨークに本社を置き、従業員は約900人(700人という報道もある)。クラウド向けのアプリケーションの開発、実装、実行、運用を包括的に支援する統合型のクラウド・セキュリティプラットフォーム「Wiz CNAPP」を展開している。

 驚くのは、その成長ぶりだ。2024年3月に10億ドルを調達した際の評価額は120億ドル。2020年のシリーズAラウンドから、Sequoia Capital、Index Ventures、Andreessen Horowitzなど、シリコンバレーの名門VCの支援を受けてきた。わずか4年で累計調達額は19億ドルに達している。

 そうした高い評価を裏付けるのが、同社のCNAPPの実績だ。この分野では、CrowdstrikeのFalcon、Orca Securityなどがあるが、WizはFortune 500の40%を顧客に持ち、クラウドでは、AWS、Google、Azure、Oracle、VMware、AliBaba Cloudとパートナー関係にある。ARR(年間経常収益)は提供開始から18カ月で1億ドル、2023年は3.5倍の3億5000万ドルという。

 創業した2020年といえば、新型コロナが世界で猛威を振るった年だ。リモート就労が一気に拡大して、クラウド化の波に乗れたのも幸運だったようだ。

 Googleにとって230億ドルは、2011年のMotorola Mobilityの買収額125億ドルの2倍近い史上最高額となる。

 Googleは、FTCから、検索エンジン市場を違法に独占しているとして反トラスト法訴訟を提起されており、9月から審理が始まる。欧州でもオンライン広告で調査を受けているところだ。

 Wizの買収にあたっても審査を受けることになるが、GoogleはクラウドではAWS、Microsoftに大きく後れを取っているため、比較的障害になりにくいというのが大方の見方のようだ。