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AI開発の転機? オープンソースには勝てない

 OpenAIとMicrosoft、Googleが生成AIの覇権を狙ってつばぜり合いを繰り広げている中、「どちらも勝者にはなれない」とする文書が話題となった。オープンソース開発が大手の開発を抜き去ると予言したものだ。莫大な費用を要するとされてきた大規模言語モデル(LLM)開発の転機が来ているかもしれない。

(行宮 翔太=Infostand)

OpenAIにもGoogleにも「堀がない」

 「We Have No Moat」(われわれには“堀”がない)と題した約2600語の文書は5月4日、コンサルティング会社SemiAnalysisによって公開された。Googleの匿名の研究者が個人として公開Discordサーバーで共有した文書だという。

 「われわれ(Google、そしてOpenAI)が小競り合いをしている間に、第三の派閥が静かに圧勝していたのだ」と文書は言う。

 「第三の派閥」とは個人などフリーな立場でAIに取り組む世界中のオープンソース開発者たちを指す。文書は2月末からわずか2カ月足らずの間に、オープンソースAIが急速に進んだと指摘する。そしてOpenAIやGoogleにとっては、自社が先行してオープンソース技術と差別化するための決定的な優位、つまり「堀」が存在しないと主張する。

 「われわれのモデルには、品質ではまだ若干の優位性があるが、オープンソース開発は驚くほど速く差を縮めている。ソリューションは速く、カスタマイズ可能で高性能だ」と文書は言う。

 翌5月5日付のBloombergが、文書の筆者はGoogleのシニアソフトウェアエンジニアのLuke Sernau氏と報じた。同氏はBloombergのコメント要請に応えていないという。LinkedInのプロフィールによると、Sernau氏はFacebookなどを経て、2019年3月からシニアソフトウェアエンジニアとして働いている。

 文書は4月上旬、Googleの内部システムで公開され、社内で数千回共有されたという。SemiAnalysisは、文書の内容はGoogle全体の見解ではなく、SemiAnalysisとしても同意していない。また意見を聴いた他の研究者も同意していないと断っている。

 しかし、AI業界では大きな評判になった。オープンソースのLLM開発が爆発的に進展したことも確かだからだ。