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「Stable Diffusion」の“破壊力” AI画像生成の隆盛

クリエーターの反発

 一方で、怒濤のようなAI生成画像は、人間のクリエーターに激しい反応を起こしている。AI画像生成は訓練データによって成り立っている。訓練データの多くはWebスクレイピングで集められたもので、人間が描いたアート作品も多く含まれるのだ。

 テクノロジーブロガーのAndy Baio氏は、Stable Diffusionのトレーニングに使われた1200万以上の画像のデータ(LAION-Aesthetics v2 6+)を分析した。1200万は多いように見えるが、使用された23億枚の画像の0.5%にすぎないという。

 その結果、元サイトはブログやSNSが多いが、販売サイトのドメインを持つものもかなりあったという。例えばアートプリントやポスターを販売するFine Art Americaから69万8000画像(5.8%)が入っていた。商品の画像が含まれていることは否定できない。また、ストックフォト由来の画像もかなりあり、ブログから収集された場合は、元のキャプションが落ちているケースも相当ありそうだという。

 Baio氏はさらに、ポップカルチャーに登場する600の架空のキャラクターのリストを使って、画像データセットを検索した。結果は、マーベルキャラクターが上位を占め、ミッキーマウスも520枚あったという。なお、Baio氏は分析に使ったツールをGitHubで公開している。

 法的な側面はどうだろう。先に述べたように、Stable Diffusionの訓練データの収集・利用は、著作権法上の問題はクリアしている。しかし、収集先のサイトの利用規約は別問題だ。インターネット上で、画像を公開しているサイトが利用規約違反で訴訟を起こす可能性は小さくないと考えられる。

 このほか、成果物の扱いも論議を呼んでいる。Baio氏は、アートコミュニティが生成画像を締め出そうとする動きも紹介している。例えば、「furry art」(擬人化した動物キャラクターのアート)で有名なコミュニティサイトFur Affinityは、「AIでつくられたコンテンツの禁止」を宣言した。

 安価に大量に生まれるAI生成画像に、アートを生業としている人たちの多くが、生活を脅かされると感じている。こうした動きは、これから本格化しそうだ。

 Forbesは AI画像生成で「次に起こるだろうこと」を予想している。以下の4つだ。

 「今後1年間で、多くのベンチャーキャピタルがこのカテゴリーに流入」「キラーアプリケーション探し(趣味の域に影響するだけの変化ではない)」「さらなる進化(すぐに動画に発展する)」。

 そして、もう一つは「著作権、法務、倫理の問題で蜂の巣をつついたような騒ぎが起こる」。もう始まっているようだ。