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メタバースの新しい標準化団体設立 Meta、Microsoftらが参加もAppleは不在

「Web登場前のインターネット」

 メタバースは現在、確立にはほど遠い段階だ。The Vergeは「メタバースとは何かについて合意すらできない」と現在地を解説。新団体が「一貫性ある用語」の必要性を感じていることを紹介した。そこには、プレーヤーが思い思いにメタバースを作ってしまうことへの危惧がある。

 IEEE(米国電気電子学会)が発行するIEEE Spectrumは昨年8月の記事で、Epic Gamesの幹部で標準推進担当のMarc Petit氏のインタビューを掲載している。

 Petit氏は「仮想世界はインターネットのように相互接続される必要がある」とした上で、まず、「オブジェクトの交換の問題を解決しなければならない」と説明した。

 それによると、メタバースで利用される3Dグラフィックファイルフォーマットとして、gITFとUSDという2種類があるという。だが、これさえも「マテリアルの表現で合意ができていない」と問題の一端を述べてしている。

 メタバースが“次のインターネット”になるために標準化は重要だ。NVIDIAのオムニバースエンジニアリング&シミュレーション技術担当バイスプレジデントのRev Lebaredian氏は、ZDNetへのコメントで、インターネットの歴史を引き合いに出しながら今後のメタバースの展開を予想している。

 「インターネットは当初、テキストだけのシンプルなインターフェイスだったが、Webが登場して多くの人が使うようになった」という。Lebaredian氏は、そこでHTMLなどの標準が果たした役割は大きく、だからこそ新しい標準化団体に意味があるとする。「できるだけ早くスタートしなければならない」(Lebaredian氏)との主張だ。

 メタバース標準の問題はテクノロジー業界だけでなく、経済界からも関心を集めている。今年5月の「ダボス会議」(世界経済フォーラム年次総会)でも、メタバースのルール作りが取り上げられた。

 Cryptoによると、メタバースをテーマとしたパネルの中で、政府機関が取引とコンテンツの管理ルールを策定すべきという意見もあがった。ユーザーが支払いの対価として確実にデジタル資産を受け取るため、政府による監視が必要という。テクノロジー業界は政治的な圧力にも直面するかもしれない。

 メタバースの潜在性は大きい。Gartnerは「2026年までに25%の人が、仕事、ショッピング、教育、ソーシャル・メディア、エンターテインメントなどのために、1日1時間以上をメタバースで過ごすようになる」と予想している。