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メタバースに突き進むMeta 厳しい状況と転換の混乱

「これまでの目標は忘れろ」

 決算発表の前週、このところのMeta社内の混乱ぶりをNew York Timesが伝えている。役員を含む社員の証言を元にしたものだ。

 例えば、3年間Instagramの仕事を担当してきたエンジニアは、年末休暇の直前に、上司からAR/VRの研究職に応募するよう指示された。「これまでの目標は忘れろ」とも言われ、実質的に新しい仕事を探さねばならないことに愕然としたという。

 メタバースに向かって突き進む社内では、新しい挑戦に興奮する者、新製品開発一辺倒な方針に疑問を持つ者など、さまざま受け止め方があるという。ある従業員は、ミッションの変更を承服できない者は退職していったと証言している。

 New York Timesは、この転換はMetaが2012年にモバイル移行したとき以来の大きなものと評する。だが、巨大になった同社が「方向性を変えるのは、2012年のころより、はるかに難しい」とも言う。

 幹部レベルでは、もっと前から動きがあった。CNBCは、2021年にMetaを去った(あるいは去ることを明らかにした)主な幹部14人を挙げて振り返っている。「暗号資産部門からFacebookのWorkplaceビジネスソフトウェア部門まで、会社全体に及んだ」という。

 退職した幹部には、グローバルビジネスグループ・バイスプレジデントで同社の“広告の顔”を務めたCarolyn Everson氏(退職発表は6月)。アプリの責任者だったFidji Simo氏(同7月)ら、長く勤めた著名な女性幹部もいる。また、Facebookマーケットプレース責任者のDeborah Liu氏、最高収益責任者のDavid Fischer氏らは、2021年早々に退社を発表している。

 注力しているはずのメタバース部門からも人材が去った。VR担当バイスプレジデントのHugo Barra氏(発表は5月)、AR/VRコンテンツ担当バイスプレジデントとしてVRヘッドセット用コンテンツを担当していたMike Verdu氏(同7月)などだ。

 New York Timesも、「メタバースをつくるのにMetaが最適だとは思えないから、競合他社での仕事を探している」と明かした従業員の話を紹介している。