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揺れるGoogle AI倫理研究者の退社問題

論文はなぜ止められたのか

 Jeff Dean氏は社内向けメールとその補足メモで、問題となった「社内基準」について説明している。

 一つは、「レビューに2週間かかるが、論文は締め切りの前日に提出されたため審査できなかった」というもの。これに対し、同僚たちは、他の論文では実際に審査に2週間もかかっていないと反論。今回、ポリシーが「不均等かつ差別的に適用された」と主張している。

 もうひとつは「指摘された問題にはGoogleの多くのチームが積極的に取り組んでおり、これらを無視してリスクを強調することは、解決につながらない」というものだ。ただ、もともと「現状把握」を目的とする論文を差し止める理由としては、いかにも苦しく見える。支援者たちの怒りは収まっていない。

 そして、ついに12月9日、CEOのSundar Pichai氏が、社内向けメールで直接、遺憾の意を表明した。Axiosが入手した社内メモで、同氏は「従業員に疑念を植え付け、社内に居場所がないのかと思わせてしまった」ことを残念に思うと述べ、Gebru氏が退職に至った経緯を調べると約束した。

 ただし、Gebru氏の退職について謝罪にあたる言葉はなかった。

 Gebru氏は、Google社内で黒人従業員が少ないことや、不公平な扱いに声を上げてきたという。会社にとっては、“煙たい存在”だったのかもしれない。一方で、研究者の間では信頼を得ており、さらに多くの研究者が支援を表明している。同氏の一貫した真摯な、2018年のMIT Technology Reviewのインタビューでも垣間見える。

 「AIで本当に多様性が重要な理由は、物事がどうなっているかという社会的感覚を持つデータや研究者が必要だからだ」「今は、機械学習を使うべきではないものがいくつかあり、それらが何であるかの明確なガイドラインがない」