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迷走するFoxconnの米国工場計画 ウィスコンシン州と平行線

 iPhoneの重要サプライヤーである台湾Foxconn Technology Groupの米ウィスコンシン州の工場計画が混沌としている。州側は補助金支払いを凍結し、契約を見直すと通告。Foxconn側は、補助金なくして計画の継続はないと反論する。プロジェクトはTrump政権下の“米国の製造業の復活の象徴”として宣伝されたが、空中分解しそうな様相だ。

雇用1万3000人、投資額100億ドル

 計画は、EMS(電子機器受託生産)世界最大手のFoxconnが、ウィスコンシン州南部のマウント・プレザントに大規模な製造拠点を展開するというものだ。製造業が空洞化した「ラストベルト」の中にあり、GMの工場閉鎖などで不況にあえぐ同州にとって、夢のような話だった。

 2017年に結んだ契約は、同州に最大100億ドルの設備投資を行い、2022年末までに約1万3000人の雇用を生む「第10.5世代」の液晶製造施設を建設するというものだ。第10.5世代液晶は65インチ以上の大型パネルで大型テレビなどに使われる。

 この投資に対して、州政府は15年間で計30億ドルの税控除を与え、補助金として支援すると約束した。優遇措置は町の補助などを合わせると総額40億ドルになる見込みで、この額は、外国企業に対するインセンティブとしては、米国史上最大になるという。

 契約はTrump氏の肝いりで実現したものだ。同氏は、Foxconn創業者で会長(当時)のTerry Gou氏は親しい友人であると公言している。2018年6月にはTrump氏も出席して現地で起工式が開催され、Foxconnの幹部も頻繁に訪れるようになった。

 しかし、この後、雲行きが怪しくなってくる。Foxconnが2019年1月、市場環境の変化を受けて、第10.5世代でなくタブレットなど小型の「第6世代」液晶工場に規模を縮小すると発表したのだ。

 さらに、幹部がReutersのインタビューで「われわれはウィスコンシンに工場は建設しない」と発言して大騒ぎになった。幹部は、ブルーカラーではなく、エンジニア、研究者の雇用が中心の施設になると説明した。

 このときは、Terry Gou氏とTrump大統領が電話会談して、工場を建設することを確認し、コメントを出したことでひとまず落ち着いた。

 そして、1年10カ月たった2020年10月12日、州当局はこのままでは補助金は出せないとFoxconnに通知し、契約の見直しを呼びかけた。